玉川豆知識 No.123

進みつつある教師のみ人を教うる権利あり

「進みつつある教師のみ人を教うる権利あり」は、生涯学び続けることの大切さを語った言葉として、小原國芳が講話などの際に好んで引用していました。

「進みつつある教師のみ人を教うる権利あり」という言葉は、ドイツの教育学者ジステルエッヒが教師を諭した言葉として知られています。出典は教育学者でドイツの教員養成学校の初代校長であったアドルフ・ディースターヴェーク(1790年~1866年)著『ドイツの教師に寄せる教授指針』です。その中に、「教師は、自分自身を本当に教育し、陶冶すべくみずから努力している間だけ、他人を本当に教育したり陶冶することができる」と書かれた文章があります。

玉川学園創立者小原國芳は、「進みつつある教師のみ人を教うる権利あり」という言葉を、講話や講演時に好んで引用していました。この言葉に対する國芳の思いが、『全人』第790号の「故(ふる)きを温(たず)ねて(19)」に次のように記されています。

「『進みつつある教師のみ人を教うる権利あり』の言葉は、ドイツで最初に師範学校長になったジステルエッヒが教師を諭した言葉」(『全人』第84号)と創立者の小原國芳が述べたのは、1956(昭和31)年8月の通信教育部夏期スクーリング開校式でのことである。
日本全国から集まった通大生を前に奮った熱弁の一部だ。続けて「朝に晩に、自己の足らざるを知って、常に進みつつある教師からは、火花が出る。貴い匂いがニジミ出る。この精神的火花が教育するのである」と述べた。小原69歳のときであった。

教師教育リサーチセンターの入口にもこの言葉が掲げられている

さらに上述の「故(ふる)きを温(たず)ねて(19)」(『全人』第790号)に、小原國芳(オヤジ)の学び続ける姿勢について、筆者が次のように記述しています。

筆者が小学部(当時)在職時、職員会議で話をされることがしばしばあった。米寿のお祝いが終わった頃と記憶しているが、今も憶えている話がひとつある。「哲学を深めるには、英語よりはドイツ語だ。今、またドイツ語の勉強を始めたよ」と。職員たちは驚いて顔を見合わせた。
89歳のとき、「生涯、読書人たれ。研究の連続者たれ! オヤジも諸君に負けぬように、まだまだ勉強するよ」(『全人教育』第319号)と述べている。弟子たちに日々学ぶ姿勢を示し続けた生涯だった。

書斎にて、小原國芳
『贈る言葉』

小原國芳著『贈る言葉』の「教師道」(『教育の根本問題としての宗教』1919年に掲載)には、「進みつつある教師のみ人を教うる権利あり」という言葉が次のように記載されています。

今や教授法は遂に、教師自身の問題と変(へん)ぜねばならぬ。教育事業は、教師自身開拓の事業と変(へん)ぜねばならぬ。ディースターヴェークにならって、吾人(ごじん)は永久に「進みつつある人のみ人を教うる権利あり」と絶叫するのである。教師自身たえず探求生活を営まねばならぬ。完成した知識よりも、たえず完成に進みつつある生きた知識を要求するのである。ローゼンクランツのいったように「生徒の感奮(かんぷん)する所は、教師の弁舌または風采にあらずして、その神聖なる熱心」なのである。

参考文献

  • 小原國芳著『贈る言葉』 玉川大学出版部 1984年
  • 小原國芳編『金言名句集 真人の言葉』 玉川大学出版部 1974年
  • 白柳弘幸「故きを温ねて」(『全人』第790号 玉川大学出版部 2015年 に所収)
  • 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年
  • 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史(写真編)』 玉川学園 1980年