玉川豆知識 No.57
金メダリストも泳いだ日本水泳連盟公認の日本一の学校屋内プール
玉川学園創立40周年記念事業として、屋内温水プールが完成。日本水泳連盟公認の50mプールで、水中監視窓、水中音波伝達装置、水中照明装置、移動式ブリッジなど最新の装置を備え、学校のプールとしては当時日本一と言われました。
1.金メダリストも訪れ、使用した日本一の学校屋内プール
1972(昭和47)年7月1日、玉川学園創立40周年記念事業として、屋内50mプールが完成。当時、日本に50mの屋内プールは、千駄ヶ谷の東京体育館と代々木のオリンピックプールがある程度でした。しかも玉川学園のプールは温水だったので、日本水泳界で大きな注目を集めました。


その上、玉川学園の屋内プールは、日本水泳連盟の公認プールとして認められたこともあり、また以下に示す最新の設備を備えていたこともあり、さまざまな学校・施設などから見学者が訪れました。さらに、ミュンヘンオリンピック(1972年)金メダリストのジョン・ヘンケン氏、田口信教氏(鹿屋体育大学教授)、ソウルオリンピック(1988年)金メダリストのジャネット・エバンス氏、鈴木大地氏(スポーツ庁長官、元日本水泳連盟会長)も視察や練習のために来園されました。また、水泳世界選手権の最終選考会場としても使用されました。現在でも東京都の公式大会で使われています。


今から45年も前に、何故これほどの設備を備えた屋内プールをつくったのでしょうか。その理由として、創立者の小原國芳が「世界に類がない一流のプールをつくりたい」と考えていたことが挙げられます。また、一説には日本水泳連盟公認のプールよりも大きいプールをと、長さ51mのプールを構想していたという話もあります。
2.最新の設備
玉川学園の屋内プールは温水プールですので、一年中使用することが可能です。そして、競技用ではなく授業用として、安全と衛生を第一に設計されています。全7コースあり、水深は120cmから160cm。その水深の変更が可能だったり、横方向のコースロープや指導用移動式ブリッジが設置されていたりなど他のプールにはないさまざまな工夫が施されているのが特徴です。その特徴を以下にまとめてみました。




- 水中監視窓と水中音波伝達装置
選手の泳ぎをチェックできる水中監視窓と水中音波伝達装置を使って、水中の動きを直接泳者に伝え、その場で指導を行うことができます。 - 水中照明装置
安全を保つために設置し、さらに授業でも活用しています。 - 指導用移動式ブリッジ
上から泳ぎのフォームを確認しながら指導することができます。また、ブリッジを自由に移動することが可能なため、受講者数によって利用面積を変えて指導を行うことができます。 - プールフロアー(水深の変更が可能)
幼稚園児や小学生、泳げない者のために、深水120cmを80cm、40cmに変更することができます。 - 横のコースロープ
縦のコースロープのほか、2m間隔で横方向にロープが張れるよう設計、より多人数での同時授業が可能となります。この横コースロープのおかげで、子供たちが横方向(15m)にも泳げます。また目的に合わせて自由に区切って使うことができます。 - 広いプールサイド
プールサイドは幅7mと広く、多角的に使用が可能です。 - プール管理のオートメーション化
安全と衛生を保つために、浄化、換気等はすべてオートメーションにより管理されています。 - 浄水機の設置
災害時に飲料水として利用できる1050t対応の浄水機を設置しています。 - 水深は120cmから160cm
日本の学校では、水深90cm~120cmくらいの浅く型にはまったプールが設置されました。実は諸外国ではもっと深いプールが設置されています。本学のプールも深くつくられています。これは、水難事故に遭った際にも対応が可能なよう安全教育としての水泳指導ができるようにと考えられてそのようになっています。
3.屋内プールの使用
屋内温水プールということもあり、幼稚部から大学までの授業で、フルシーズン使用しています。水泳の授業では、クロールや平泳ぎといった泳法を学ぶことも重要ですが、さまざまな水中運動を体験させることにより、自己保全能力を高めるといった安全教育としての水泳に関する教育に力を入れています。その中でも、特に重要視しているのが着衣泳です。水難事故は水泳中に起こるとは限りません。むしろ衣服を着たまま川や海に落ちるケースの方が事故に繋がりやすいのです。そのため着衣泳を経験しておくことは、自らの命を守るためにとても大切なことなのです。


また、授業とは別に、プール完成当初から水泳教室を開催しています。水泳教室では、足の着かないところや流れのあるところでも安全に泳げるようになることを目的に、泳力検定という玉川学園独自の判定基準を設けています。クロールや平泳ぎなどの能力だけではなく、立泳ぎ、横泳ぎ、潜水、飛び込みといった競泳種目以外の水泳能力も評価の対象にして、小学1年から高校3年まで各学年で目標とする級を定めています。


関連サイト
参考文献
小原國芳監修『全人教育』276号 玉川大学出版部 1972年
玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年