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科学するTAMAGAWA 農学部環境農学科 石川晃士准教授(後編)

2020.10.13

世界30か国以上で「農学国際協力」のプロジェクトに関わってきた
農学部環境農学科・石川晃士准教授に聞く(後編)

フィリピンのババナ園にて。
左5番目 石川准教授、右4番目 渡辺教授

バナナ園の病害発生場所での伐採処理
カカオの病害

2020年6月、科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)による「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の令和2年度の新規採択研究課題の選考結果が発表され、玉川大学が研究代表機関として提案した「難防除病害管理技術の創出によるバナナ・カカオの持続的生産体制の確立」が条件付きで採択されました。

これは途上国で深刻化しているバナナ・カカオの重要病害への対策にあたるフィリピンとの国際共同研究プロジェクト。石川准教授はプロジェクトリーダーである生産農学科の渡辺京子教授と、国内7つの研究機関とともに現地での活動に取り組みます。
「バナナは日本で年間消費量が最も多い重要な果物です。また、チョコレートの原料となるカカオは、多くの開発途上国ではバナナと共に主要な換金作物として農業に従事する人々の生活を支えています。ところが近年、防除法が確立されていない病害が世界的に広がっています。バナナの一大産地であるフィリピンのミンダナオ島でも昨年(2019年)、病害によって約3000haの耕作地が放棄されたとの報告がありました」

このようなバナナ・カカオの生産現場の危機を救うため、玉川大学を中心とするチームは約6年間かけて、フィリピンのセントラル・ルソン大学と農業省とともに農園のバナナ、カカオの健康診断や病害診断薬の開発、あらかじめ病害の発生を予測するAIの開発、さらに日本の技術での安価な土壌改良や栽培管理による病害防除対策を進め、将来を見据え安定した病害防除管理技術体系を現地で確立することを目指しています。

その中で石川准教授が主に担当する分野は、農学国際協力の分野での実務経験を活かした開発技術の経済性評価と技術普及。特にSATREPSで開発される難防除病害管理技術を農業省、民間企業との連携で生産農家の収益性などを考慮したうえで、どう現場の生産農家へ普及していくか、という社会実装とビジネスモデルの構築です。

また、このプロジェクトは国連のSDGs(持続可能な開発目標)のうち、「2.飢餓をゼロに」「12.つくる責任 つかう責任」「15.陸の豊かさを守ろう」などへの具体的な貢献が期待されています。
「現在は新型コロナウイルス感染拡大のため、フィリピンとの行き来ができていませんが、国を代表する科学技術外交の一環として、将来的には指導する学生にも積極的にこのプロジェクトに関わってもらえたらと考えています。国際協力の現場では、だれがどこの国の人間であるかは関係ありません。目的と志が同じであれば、信頼関係を築いてチームとして動く。若いうちにそのような経験をしてもらえばと思っています」
現代社会での世界的な問題には、国境がなく、地域を超えたグローバルな視野に立ってアプローチしていくことが大切。石川准教授は、「今やグローバルは当たり前。その前提でそれぞれの専門性を高める時代」だと話します。

「国際協力の分野においても途上国のひとつひとつの問題に取り組むには、地域特有のローカルな視点を持つことも欠かせません。グローバル(地球的、世界的)とローカル(地域的)を組み合わせた言葉である、『グローカル』がこれからの社会のキーワード。海外で活躍できるスキルや考え方を持ちつつも、その地域に貢献できる能力、異なる価値観を理解し、現地の課題解決を図れる能力は、まさに国際協力の現場で必要とされるもの。学生には、大学生活を通じてそれらの能力の修得機会を提供していきたいと思っています。そのためにはもちろん相応の専門知識と語学力が必要です。私自身の経験から言って、強いモチベーションがあれば必ず英語は身に付きます。語学ができるようになれば世界中に友人ができて、さらに英語力が磨かれるでしょう」

環境農学科では、学内外のいろいろな地域での体験をとおし、それらをまとめる力、比べる力、いろいろな問題に仲間たちと共同で取り組む力を育むためのグローカルな授業やプログラムを用意しています。学内での講義や実習、海外留学(3~4カ月)での英語による体験と学修、国内各地での学外施設でのフィールドワーク(約1週間)、領域(研究室)での専門的な実習や研究(3~4年次)を組み合わせて、グローバルな視点・経験を活かして地域の発展に貢献できる人材を育てていきます。

「農学国際協力」授業の様子

授業に関しては、1年次に開講されている「環境農学概論」で石川准教授の経験の一端を知ることができます。専門知識については、3年次の「農学国際協力」で、途上国などで豊富な経験をベースにしたリアルな国際協力を学ぶことができます。また、領域での地域的な視点を育むため、領域研修旅行なども経験します。

そして石川准教授の領域研究の授業では3年次に『ODA白書』、『環境白書』、『農業白書』など政府が発行する資料などを読み込み、持続的農学全体への視野と知識を広げながら、国際協力、環境問題、食料生産などそれぞれの関心がある分野を見定め、4年次に取り組む卒業研究テーマを決めていきます。「卒業研究で重視するのは『現場主義』。学生はそれぞれの研究テーマに沿って、自治体や企業、あるいは農家や消費者など、関係者へのインタビューやアンケート調査を通して課題解決への道筋を探っていきます」

領域研修旅行 JICA訪問
領域研修旅行 群馬県庁訪問

すでにゼミ出身者には石川准教授と志を同じに英国の大学院に進学した学生もおり、これからの国際社会での活躍が期待されています。
「私自身も農学国際協力や国内の地域活性化の現場でまだまだ頑張りたいと思っていますが、今後は若い人材を育て、国際協力の現場に送り出すことにもさらに力を注いでいくつもりです」 石川准教授の研究室の扉は、途上国の発展を願い世界への好奇心にあふれる若者に対していつでも開かれています。

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