事前のヒアリングを基に、自分たちで観光施策を考える。観光学部香取ゼミの学生によるプレゼンテーションが行われました。
観光学部の香取幸一教授のゼミナールでは、2018年10月11日(木)から三週にわたり、旅行や観光に携わる企業や行政の方をお招きして講演を行っていただきました。学生たちは3グループに分かれて講師の受入れや講演の事前準備などを担当することから始まり、担当した企業や行政の方の講演の際には課題が与えられました。その後、調整・研究に取り組み、1月24日(木)に、昨年講演を行った(株)ジャルパックの竹田和弘さん、山形市商工観光部観光戦略課の青木哲志さん、(株)ANA総合研究所の弓野克彦さんにもお越しいただき、学生たちがプレゼンテーションを行いました。
最初にプレゼンテーションを行ったのは、ジャルパックを担当したグループで、ジャルパックが取り組むワーケーション(テレワークの発展形で、家族旅行にテレワークを組み込むという考え方)に関する提案です。
「働きながら遊んじゃえ! ~和歌山でワーケーション~」と題されたこのプレゼンテーションでは、ジャルパックのワーケーションの旅行先にもなった和歌山県の白浜町を取り上げ、深掘りしていきました。ターゲットを小中学生の子供を持った家族と設定。その際にネックとなる「子供の長期休暇に合わせると繁忙期と被ってしまい、閑散期の集客につながらない」という課題に対して、タブレットを使った遠隔学習を提案。また旅行客の温泉ニーズが高い一方で、白浜ではホテルと比較して旅館の稼働率が高くないことにも着目。親子でのワーケーションと同時に旅館についてもネットなどを活用して情報発信し、年間を通じて白浜への来訪者獲得を目指すと行った内容を提案しました。
これに対しジャルパックの竹田さんからは「働く側からの視点だけでなく、家族や子供の視点でワーケーションを考えることも重要なんだと気づかされました。白浜に関しても、閑散期のことまで踏み込んだ点が良かったと思います」といった意見がありました。
次にプレゼンテーションを行ったのは、ANA総合研究所を担当したグループです。
前回「観光の力で地域活性化を」という講演を聞いた学生たちが考えたのは、緑茶の名産地であり大井川鐵道が走っている静岡県島田市における観光振興策でした。大井川鐵道同様に蒸気機関車で知られ、友好姉妹提携を結んでいる阿里山森林鉄路が走っている点や、烏龍茶を飲む習慣が根付いている点などから、ターゲットを台湾からの観光客に設定。学生たちは実際に島田市を訪れ、市役所の方にヒアリングも行った上で企画を進めたそうです。検討の結果、「LOCO - Cha Line」をキーフレーズに、蒸気機関車に乗って緑茶や緑茶を使った料理を楽しむプランを提案。さらに鉄道を軸にした島田市内の周遊プランも考えました。学生たちはさまざまなデータを収集し、日本と台湾の観光客の「一人あたりの旅行消費額」に8倍の差があることにも着目。
「台湾からの観光客が増えることで、約4億円の利益が生まれます」とプレゼンテーションをまとめ、ANA総合研究所の弓野さんからは「台湾に絞ったことで説得性のある面白い案になったと思います。現実的に考えるなら、この案で東アジア全体を狙うくらいのプランがいいかもしれないですね」といった提案がありました。
最後にプレゼンテーションを行ったのは、山形市商工観光部を担当したグループです。
このグループも山形市を訪れ、さらに学内でのアンケートも実施。その上で若い女性と食に着目し、美食山形のイメージ作りを行った上で観光につなげるというプランを提案しました。タイトルは「ごっつぉ飯とへなこ飯 ~若者たち、はらくっつい、あがってけらっしゃい!~」に。ごっつぉはごちそう、へなこは女性を意味し、「はらくっつい~」は「お腹いっぱい召し上がってください」を意味する山形の方言です。若い女性に市内の飲食店で郷土料理とスイーツを食べてもらうキャンペーンを展開することで、SNSでの拡散なども目指していきます。
プレゼンテーションを聞いた山形市商工観光部の青木さんからは「実は山形観光ではリピーターが多いのですが、そうした観点からも若い人に焦点を当てると、将来のリピーターが増えることになると思う」といった意見がありました。
企業や自治体へのアポイントメントから始まり、講演の運営、さらに企画の立案など、半年かけて行ってきた香取ゼミの学生たち。今回のプレゼンテーションを行ってみて、「一口にワーケーションと言っても、どの観点から問題を解決すべきかとても悩みました。今回は家族という視点でプレゼンテーションに一貫性を持たせたのですが、竹田さんにもポジティブな意見をいただけてホッとしました(ジャルパックを担当した学生)」、「発表の20分前までデータ収集を行っていたのですが、香取先生に情報の取捨選択が重要だと言われました。今回の経験は、社会に出て地域活性化を考える際、とても役に立つと思います(ANA総合研究所を担当した学生)」、「山形市について何も知らなかったので、実際に行ってみました。研究の過程でさまざまな課題が出てきたのですが、それに対して新たな案も生まれて、今回のプレゼンテーションをまとめることができました(山形市商工観光部を担当した学生)」といった感想が学生からは聞かれました。
最後に香取教授から「今回は3つの組織の皆さんにご協力いただいたことで、素晴らしい学びの機会を得ることができました。学生の皆さんにとっては、4年次に各自の興味あることを深めていくための、いいきっかけになったと思います。今回の経験を活かして4年間で成長することがご協力いただいた方に対するお礼にもなりますから、残りの1年間もぜひ頑張ってください」といった言葉が学生に送られました。