スタート2カ月、折り返し地点を迎えた「工・農・芸融合価値創出プロジェクト授業(PBL授業)」

2019.06.18

2019年度春学期よりスタートした「工・農・芸融合価値創出プロジェクト授業(PBL授業)」が早くも折り返し地点を迎えました。
今回は第3〜5回の講義内容の概要紹介と5月15日に行われた第6回の講義を紹介するとともに、これまで6回の受講を終えた学生に感想を聞きました。

4月17日(水)

第3回「アンデス・ガラパゴスに自生する野生種トマト──マヤ・アステカ人に学ぶ食文化」

農学部先端食農学科 田淵俊人教授

身近な野菜であるトマトが世界中で普及した理由や、日本に入ってきたエピソードなどを紹介。また品種改良がどのように行われてきたかについて興味深いレクチャーがなされました。アンデス・ガラパゴスの野生種は、現在のミニトマトより小さな実をつけるものが多く、講義後、田淵教授は貴重な原種トマトの実物を学生に見せながら、玉川大学が世界で最も野生種トマトの種子を保有し、栽培できるようにまでなったエピソードを語りました。また、田淵教授が自ら品種改良に取り組んだポリフェノール含有量が多い黒いトマトも紹介されました。グループワークの時間では、「どのようなトマトを創造するか?」をテーマに各自が議論を交わしました。青臭さがないトマト、完全栄養食のトマト、食堂に自由にとれるように栽培してはどうかなど意見が挙がっていました。

4月24日(水)

第4回「持続可能な社会とモビリティ」

工学部エンジニアリングデザイン学科 斉藤純准教授

「玉川ソーラーチャレンジプロジェクト(TSCP)」に関わり、世界初の「マグネシウム空気電池搭載ソーラーカー」を開発した斉藤准教授が、再生可能エネルギーと資源循環型エネルギーを組み合わせた次世代の車両開発についてレクチャーしました。EV(電気自動車)の環境性能について改めて考え、TSCPでの試行錯誤と挑戦、そして持続可能な社会のためにはさまざまなエネルギーキャリア(エネルギーを輸送・貯蔵するための化学物質)の可能性を考えていくことの重要性を語りました。授業の後半では、夜間でも走行できるハイブリッド・ソーラーカーの試乗会を実施し、学生も大興奮でした。

5月8日(水)

第5回「食と器の関係性を考える」

芸術学部芸術教育学科 椿敏幸教授

まず、縄文時代の土器から中世〜江戸時代までの日本の食と器の歴史を考察。わが国独自の茶道文化や中国・朝鮮半島から伝えられた陶磁器をからめて、日本人がどのように器というものを捉えてきたかを解説しました。さらに西洋と日本の器に対する考え方の違いを見ながら、世界遺産に選定された「和食」に見られる日本人の伝統的な食文化を考えました。陶磁器、漆器からガラス器、竹工、木工、そして現代の石油樹脂製品まで、素材・製法から見た器の種類を考察。グループワークでは、「ファストフード VS スローフード」など、現代人が抱える食の問題(便利害)についても論じました。

5月15日(水)

第6回「AI×ROBOTICS×COOKING〜人間とロボットが共生し協働する世界を目指して」

工学部情報通信工学科 岡田浩之教授

「赤ちゃん学」「脳科学」と「ロボティクス」を融合させた研究に取り組む岡田教授。まず自己紹介を兼ねて、赤ちゃんが言語や二足歩行を習得する発達・成長のメカニズムの研究を通して、自律したAIロボットの可能性を模索している自らの研究活動について紹介しました。

メディアなどで「AIロボットが人間の仕事を奪う」という、人とロボットの対立関係をあおる報道をよく目にしますが、岡田教授は「人とロボットがそれぞれ得意なことを行って幸福な世の中を創ること=Robotics for Happinessが私の人生の目標」とにこやかに話します。
そしてこの日のメインテーマである「AI×ROBOT×COOKING」。AI×ROBOTICSが生み出す料理の新しい可能性を体感するために、まず米国カーネーギメロン大学で製作された近未来の「ロボットキッチン」のビデオを鑑賞。その後、AI×ROBOTICSが刺激する「料理の新しい可能性」、人間の代わりにロボットが調理するのではない「人間とロボットの協調」、センシング技術と分析化学などを駆使して科学と感性を融合させた「五感の科学から医食同源のルーツを探る学び」について解説しました。

最後に岡田教授はAI=人工知能とは何か?という根源的な問いについてレクチャーします。辞書では「知能を持った機械」という定義がされますが、その「知能」とは何か?という定義が難しく、AIの定義は「追いかけると遠くに逃げてしまう蜃気楼」のようなものであるというのが正直なところだそうですが、「人間にしかできない『技』を再現する」「人間にはできないことを実現する」という二つの見方があることを、料理などのさまざまな例を挙げて紹介しました。グループワークでは、「AI×ROBOT×COOKING」に合致した提案をという課題に取り組んでいました。プロジェクションマッピングを活用して、学食の雰囲気を変えるとか、自動で食材の状況を管理し、食品ロスを減らすなどの提案が出てきました。

受講者の声

アウトプットすることと考えることの楽しさを実感
工学部ソフトウエアサイエンス学科2年 澤口光さん

学科でお世話になっている塩澤秀和教授も講師として登場すると聞いて、「面白そう」と受講を決めました。6回の講義を終えて、自分のアイデアをカタチにしてアウトプットしていくこの授業のスタイルが気に入っています。といっても頭に思いついたアイデアを言葉で他人に理解してもらうことの難しさも実感しています。毎回異なるジャンルの講義が聞ける上に、同じグループのふだん接点のない学部の人との会話の中で新しい発見があったり、ほんとうに刺激が多い授業で、考え続けることの楽しさに気づきはじめました。

多方面に視野を広げることで専門分野でのイノベーションを!
農学部環境農学科3年 都築健介さん

自分の専門分野以外について視野を広げることで、専門分野でのイノベーションを生み出す力を得られるのではないか?そんな期待からこの授業を受講しています。何しろこれまで体験したことのない授業スタイルで、最初は戸惑いもありましたがようやく慣れてきたところです。グループごとのディスカッションでは、もう少し積極的に発言しなければという反省も……。将来は農業の道に進み、この授業で身につけた多角的な視野を活かして日本の農業にイノベーションを起こしたいと思っています。

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