20年を越える交流。今年もベルリン・フィルのメンバーが来校し、「本物に触れる教育」を生徒や学生が体験しました。

2020.01.09

今年もベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員の皆さんが玉川学園を訪れてくださいました。本年度は11月18日(月)、東京公演中で唯一の休日にもかかわらず、第一ヴァイオリンのアマデウス・ホイトリング氏、第二ヴァイオリンのライマー・オルロフスキー氏、ヴィオラのマシュー・ハンター氏、そしてチェロのディートマール・シュヴァルク氏の4名が来園。玉川大学・玉川学園とベルリン・フィルの皆さんの交流は、1998年にホイトリング氏が来校したことから始まりました。以来、玉川学園の「音楽が日々の学校生活と共にある環境」と、創立者 小原國芳先生が大切にされてきた「本物に触れる教育」に共感してくださり、来日公演の度に来園し、教育交流を重ねてきました。2011年から玉川-ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員 教育プログラム としてさまざまな芸術と教育とのコラボレーションを展開しています。

本年度のテーマは「The Power of Singing ~歌の力~」です。第一部として玉川学園3・4年生や保護者の皆さんがUniversity Concert Hall 2016のMARBLEに集まり、教育プログラムが開催されました。子供たちの歌と大きな拍手に包まれてステージに上がる、カルテットの皆さん。司会を担当するのは安倍尚樹先生です。「今日いらしてくださったカルテットの皆さんは、オーケストラの最も大事な四つの音(パート)を担当しています。私たちが毎日歌っている曲の中にも、四つの音がある曲があるのを知っていますか? 校歌がそうですね。また、金曜日に歌う讃美歌も四つの音でできています」と安倍先生。そしてこの後、カルテットの皆さんによる演奏が行われました。この日演奏されたのはモーツァルトの「アイネクライネ ナハトムジーク」です。四種類の楽器だけで演奏されているとは思えない、豊かで重厚な音色が会場に響き渡ります。演奏終了後に安倍先生も「同じステージに立っているだけで、床が音で振動しているのを感じました」と語ってくれました。

そして素晴らしい演奏のお返しに、子供たちがシューベルトの「野ばら」を歌いました。ドイツから来たカルテットの皆さんのために、曲の一番はドイツ語で、そして二番は日本語です。安倍先生によるピアノ伴奏で歌った後、カルテットの皆さんの伴奏でもう一度歌うことになりました。子供たちにとっては、なかなか経験できることではありません。さらにベートーヴェンの「第九」の一節を歌うと、ホイトリング氏は「とても素晴らしいです。皆さんの心から音楽が流れてくるのを感じました。この第九のパートはとても有名で、ベルリンの壁が崩壊したときにもこの曲が歌われたんですよ」と、とても喜んでくださいました。

合唱の後は、子供たちがカルテットの皆さんに質問をしました。通訳は国際教育センターの大谷千恵先生。ヴァイオリンを習っている男子児童からの「一日何時間くらい練習していますか?」という質問には、オルロフスキー氏から「君と同じくらいの年齢の時には、30分くらい練習して、成長するにつれて徐々に時間を増やしていきました。子どもの時は遊ぶことも大切なので、遊ぶことも忘れずにね。」と答えてくれました。同様にヴァイオリンを習っている女子児童からの「練習で注意する点は何ですか?」という質問に対しては、ホイトリング氏が「いい質問ですね」と返しながら「私は早朝の、フレッシュな時間に練習するようにしています。大事なことは、自分がいい気持ちでいることです」と答えてくれました。またもう一人の女子児童の「疲れたときにはどうやってリラックスしますか?」という質問にはハンター氏のユーモアを交えた「Sleep!」という答えに、会場からも笑い声が。そして「でも、もうできないというくらい疲れたときには、実は音楽を聴きます。YouTubeで、自分が演奏している曲を他の演奏家がどのように演奏しているのか、聴いたりしています」と、意外なリラックス法を教えてくれました。
花束贈呈の後、歌の贈り物として日本の曲「もみじ」を子供たちが歌い、カルテットの皆さんは手を振りながら会場を後にしました。

第二部は会場をチャペルへと移し、玉川大学合唱団とのコラボレーションが行われました。司会を担当するのは合唱団団長の河手はるかさん(文学部 英語教育学科 3年)です。「まずはベルリン・フィルの皆さんを歓迎いたしまして、日本の民謡を演奏いたします」と、日本語と英語で説明した後、合唱団が熊本民謡の「おてもやん」と、沖縄民謡をアレンジした「南海にて」を合唱。指揮は玉川大学合唱団顧問の朝日公哉先生(教育学部)。定期演奏会やコスモス祭で披露してきた歌声を、カルテットの皆さんに届けました。これに対してカルテットの皆さんは、ベートーヴェンの「管弦四重奏曲第四番」を演奏。20分以上にわたる曲で、チャペル全体に美しいハーモニーを響かせました。

そして、ベルリン・フィルと玉川学園合唱団のジョイント演奏が行われました。曲目はノルウェー出身の作曲家オラ・イェイロの「ザ・グラウンド」です。「一緒に演奏したいという申し出に、快く応じてくださいました。二度とないこの機会だと思いますので、喜びをかみしめて歌いたいと思います」と河手さん。そして弦楽四重奏と合唱の、素晴らしいコラボレーションが実現しました。
本来の予定はここまでだったのですが、最後に会場の全員で玉川学園の校歌を歌い、カルテットの皆さんが伴奏をしてくださいました。この日集まった全員にとっても、忘れられない思い出となったことでしょう。演奏終了後、深々と頭を下げるカルテットの皆さん。会場からの拍手はいつまでも止むことはありませんでした。

合唱団の河手さんに話を聞いてみました。「本当に贅沢な時間になりました。お話をいただいたのは何か月も前で、今日に至るまで定期演奏会やコスモス祭もあったのですが、その先にこのプログラムがあると思うとモチベーションも上がりました。リハーサルなしで本番に臨みましたが、ベルリン・フィルの皆さんと一緒に音を届けているんだという実感があり、今は胸がいっぱいです。以前から団員同士で『弦楽と一緒にできたら素敵だね』という話はしていたのですが、まさかこんな素晴らしい方々で実現するとは思いませんでした」。

また、今回のプログラムのポスター制作を担当した渡辺ちひろさん(芸術学部 メディア・デザイン学科 2年)にも話を聞いてみました。「アートと同時に国際交流にも興味があり、TAMAGO(Tamagawa Global Opportunities)スタッフにも登録して活動していました。今回ポスター制作の依頼があり立候補したのですが、まだ2年生なのでポスターデザインはイメージできても、それを入稿データに仕上げる技術は身につけていませんでした。同学科の小北麻記子教授に教わりながら作業を進め、写真加工のノウハウなども学べたと思います。同時に、これまで自分の作りたいものを形にしていましたが、ビジュアルを通して受け手に伝えることも学べました。将来は、こうしたグラフィックデザインに携わりたいと思っています」。

こうして今年も音楽にあふれた玉川学園の日々に、ベルリン・フィルの皆さんによる「本物に触れる」一日が刻まれました。児童や学生にとって、とても貴重な経験となったことでしょう。

当日の様子
アマデウス・ホイトリング氏からのメッセージ

TOPIC 1

アマデウス・ホイトリング氏の20年を越えた長きにわたる功績を記念して、小原芳明学長・学園長よりクリスタルの文鎮が贈呈されました。長年の友情と教育への貢献に感謝するメッセージが彫られています。

プログラム終了後ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員の皆さんにメッセージをいただきました

アマデウス・ホイトリング氏
ライマー・オルロフスキー氏
マシュー・ハンター氏
ディートマール・シュヴァルク氏
ニコラウス・レーミッシュ氏
ヴィオラ・オルロフスキー氏

TOPIC 2

芸術学部メディア・デザイン学科の小北麻記子教授の授業では、渡邊ちひろさんが制作した今回のポスターを題材にして授業を展開。加工技術のレクチャーやクリエイティブ制作のエッセンスを同じ学科で学ぶ学生にも共有し、多くの学生の学びとしました。イベントで終わらせず、次の学びに繋げていくことが、教育プログラムの大切なところです。

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