学生時代の経験から、世界の農業支援に取り組む。卒業生・眞木凌さんによる、オンライン講演会「夢の実現に向けて」がTAMAGOイベントとして開催されました。
玉川大学が掲げる12の教育信条の一つでもある「国際教育」。大学部門での推進役を担っているのが、国際教育センターです。留学や海外研修といった国際教育プログラムの開発と同時に、留学前のサポートや留学後のフォローアップなどを積極的に展開。また、学生にグローバルな視野を持ってもらいたいという想いから定期的に行っている取り組みの一つに、TAMAGO(Tamagawa Global Opportunities)イベントがあります。12月17日(木)にはこのTAMAGOイベントとして、卒業生の眞木凌さんによるオンライン講演「夢の実現に向けて:農業における国際協力」が開催されました。
眞木さんは農学部生物環境システム学科(現・環境農学科)出身。在学中は留学だけでなく、海外でのボランティアやユースサミットなどにも積極的に参加。こうした活動を評価され、3年次にはTamagawa Global Leadership Fellowsで最優秀賞に選ばれ、4年次には厳しい審査を突破してアメリカ国務省主催のスカラシッププログラムの日本代表学生にも選出されました。2019年3月に玉川大学を卒業した後は、栃木県那須塩原市にあるアジア農村指導者養成専門学校(アジア学院)へ。14カ国24名で構成される学生の中に、唯一の日本人学生として参加しました。そして2020年度は同学院の研究科生として、さらに学びを深めてきました。
眞木さんのオンライン講演は、玉川大学卒業後に学んだアジア学院の説明から始まりました。「1973年に設立されたアジア学院は日本最古のNGOで、アジア、アフリカ、環太平洋の各国から農村指導者をめざす学生を集め、指導してきました。毎年20〜30名の学生が9カ月間にわたり持続的農業やリーダーシップについて学び、これまで1300名以上の卒業生を輩出しています。このアジア学院で、私は主に養豚について研究してきました」。
養豚だけでなく、日本各地での研修に参加し、農業の現状についても見聞を広めたそうです。また研究科生となってからはインドネシアやマレーシアなどへ行き、現地で活躍する卒業生からも話を聞いたり、落ち葉などの有機物を地表面に敷き作物を栽培するマルチングという農法を実践するといった活動を行ってきました。「そうした中で感じたのは、『その場所に適した農業を指導することの大切さ』です。現在、日本の農業指導者が各国で指導を行っていますが、日本から持っていった農業資材を提供するだけでは、現場で定着させ持続することは難しいんですね。それよりも、家畜の糞や籾殻など、現地にあるものを活用するほうがいい。そういう意味で、日本の農業をそのまま伝えるのではなく、その土地に即した農法や、現地で調達できるものの有効活用を大事にしています。アジア学院では自分たちで食料も生産していて自給率が95%に達しているのですが、これも持続可能な農業・畜産業の証明になっています」と、農業の国際協力において重要なことについて語ってくれました。続けて、「いきなり見ず知らずの日本人がやってきて、『この技術を使って』と言っても、現地の人は納得してもらえません。もし仮にその技術を使ってもらっても一時的なもので終わってしまう可能性もあります。そうならないためにも、現地の方々と語りあったり、部族の踊りを一緒に踊ったりと寝食を共にしながら、信頼関係を築くことも大切です」と、現地に寄り添った対応が必要であることも動画を交えて話してくれました。
講演の終盤では、夢や目標に対する考え方についても語ってくれた眞木さん。「夢を持つことで重要なのは、方向性だと思います。明確な夢もいいと思いますが、学んだことや人からの影響で夢の内容が変化しても構わないのではないでしょうか。私自身も大学入学当初は教員や農業などを将来の仕事にしたいと考えていましたが、2年次に国際協力を経験した先生の授業を受けたことで、農業での国際貢献にかかわりたいと思うようになりました。そして今は、日本に農業を学びに来た人たちを支援し、彼らが帰国後、できればこちらから訪問して一緒に働けたらいいなと思っています」という眞木さんの今後の目標で、この日の講演は終了しました。
講演終了後には、オンライン上で学生たちとの質疑応答がありました。「アジア学院で学んだ2年間で、大切だと思ったことは?」という問いに対しては、「つながり、でしょうか。学生たちは生まれた国へと帰国していくのですが、アジア学院で培った関係性が、国を隔てても役立つことが多いと感じました」と答えた眞木さん。また眞木さんが卒業した生物環境システム学科(現・環境農学科)の学生から「同じような仕事に就きたいと思っているのですが、国際協力に関して在学中に経験しておくべきことはありますか?」という問いに対して、「やはり行きたいところ、現地を訪れることが大事だと思います。農法については文献で知るだけでなく、実際に体験して分かることも多いですから」とアドバイスしました。
2021年4月からは、アジア学院の職員として活動を始める眞木さん。主に豚の飼育について担当するそうですが、家畜の糞を農業に活用するなど、農業と畜産業をセットにした循環型社会の重要性を強く感じているとのことでした。そんな眞木さんの熱意に触れて、在学生たちのやる気にも火が点いたに違いありません。玉川大学での学生時代にさまざまなことを経験し、自分なりの目標や、社会や世界への貢献の仕方を見つけた眞木さん。この日の講演会に参加した学生はもちろん、国際協力に関心を持つ在学生の中から、「第二の眞木凌さん」が出てくることを、玉川大学では願っています。