「STREAM Hall 2019」の「ロボティクスラボ」オープンでますます加速する玉川大学工学部のロボット研究工学部情報通信工学科・岡田浩之研究室を訪ねて

2021.02.03

2020年4月にオープンした「STREAM Hall 2019」は科学技術と芸術の融合をめざす玉川独自の「ESTEAM教育」を推進する新しい教育研究施設です。その2階エントランス付近にあるガラス張りのスペースが「ロボティクスラボ」。家庭のリビングルームとキッチンを模した室内に入ると、トヨタの生活支援ロボット「HSR」やソフトバンクの人型ロボット「Pepper」をはじめ、多種多様なロボットたちが出迎えてくれます。ここは工学部情報通信工学科のロボティクス研究の拠点であり、ロボット研究の成果を多くの人に見てもらうための“ショールーム”でもあります。

「ロボティクスラボでは、近未来、ロボットと人間が一緒に生活するシーンを想定して、料理、掃除、洗濯など家事を中心にした研究とデモンストレーションを行っています」
そう話すのは情報通信工学科の岡田浩之教授。岡田教授の「認知発達ロボティクス研究室」では、認知や学習、思考、判断、感情といった人間独自の機能をコンピュータプログラムで実現し、生活シーンの中でのロボットの可能性を追求しています。

「ロボットと一緒に生活するとなると、機能はもちろんデザインも重要になります。誰でもそばにいるロボットはかわいい方がいいですよね? 不快感や恐ろしさ、圧迫感などを人に感じさせないロボットのデザインについては、STREAM Hall 2019に“同居”する芸術学部とのコラボレーションで追求していく予定です」
ロボティクスラボのキッチン設備はすべて本物で、実際に料理をつくることができます。キッチン台に据えられている汎用型人型アームロボット「Sciurus17」は、例えば鍋を片方の腕で押さえ、もう一方の腕で中のカレーをかき混ぜたり、配膳を手伝ったりすることを想定して研究しています。ただし、工場の産業用ロボットと同じ据え付けタイプなので自分で移動することはできません。ロボティクスラボにあるトヨタ「HSR」は片腕ロボットですが自走できるのが特長なので、物を掴んで片づけるといった動作が得意です。いっそのことこの2つを組み合わせてしまえばいいのでは? という素朴な質問に岡田教授は「そのためにはかなり高度な技術が求められてきます」と説明します。
「人間は動きながらモノをつかむことは意識せず簡単にできますが、プログラミングで動くロボットにとってはとても難しいこと。手の動きの座標軸と移動の座標軸という別個なものを連動させる必要があり、つかむ手が2本となるとさらに複雑なプログラムと高度なメカニズムが求められてきます。実はいまそうした双腕移動ロボットが、ロボティクスのホットな研究開発課題となっています」

Sciurus17
HSR

岡田教授は「さらにロボットが活躍する環境下では、個人情報をはじめとしたセキュリティの問題が出てきます。ロボットの技術革新と合わせて、暗号通信など情報セキュリティ強化の技術発達も必須です。」とIoT技術の進化に伴う社会の変化にも言及しました。
情報通信工学科では、自動運転人工知能(AI)や知能ロボットの研究に活かされる脳科学等も含めたロボティクス研究を推進。ロボット(機械)に組み込まれるプログラミングとセンシング技術など、ハード&ソフトの両面から基礎から学べるカリキュラムを用意して、将来のロボット技術者を目指す学生の意欲に応えています。

岡田教授の研究室の学生たちは、世界的なロボット技術の競技会である『ロボカップ』に挑戦する「玉川ロボットチャレンジプロジェクト」の中核的役割を果たしています。このプロジェクトは2017年に準優勝するなど、これまで素晴らしい戦績を残しており、2020年のコロナ禍で大会が中心になった中でもリモート開催の国内大会に出場。新しくできたロボットラボを活用し、メキシコの大学とも協力して、出場する家庭用ロボットの機能強化した結果、見事部門優勝を果たしました。

「ロボカップ出場は、ロボティクスとプログラミング技術修得のとてもいい経験になります」と話すのはメンバーの一人、情報通信工学科4年生坂巻新さん。坂巻さんは玉川学園小学部時代から大学の研究室に出入りしていたという筋金入りのロボット好きです。2020年11月、岡田研究室に米国ボストン・ダイナミックス社の犬型4脚歩行ロボット「Spot」が約1カ月の期間限定で貸し出された際には、坂巻さんが中心となり、自動運転OS「Autoware」と組み合わせて起伏の多い玉川の丘を「Spot」に駆け巡らせる…という実証実験を行いました。最初は坂巻さんが操作するコントローラーによって「Spot」に決められたルートを走行させ、そのデータをもとに3D(3次元)地図を作成。その地図データを参照しながら「Spot」が目的地までの最短ルートを自ら探索して、走行できるようなプログラムを試行錯誤して作りあげました。「最先端のロボットに日々触って研究できることがとても楽しい。ロボティクスラボには、研究のチャンスやヒントがたくさん転がっています」と坂巻さん。2021年度は大学院に進学して、さらにロボティクスの研究を深めるとともに「ロボカップ」にも関わっていく予定だそうです。

岡田教授はロボティクス研究にあたって坂巻さんのような学生の発想力を大切にしているそうです。「与えられた課題だけではなく、ロボットに何をしてもらったら生活が便利に、楽しくなるのか?そうした課題から考えると研究はさらに面白くなります。これからは工学部の他の研究室や農学部、芸術学部の発想も取り入れながら、生活の中のロボティクスの可能性をさらに広げていくことができればと思っています」。

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