2021年1月20日、「複合領域210:工農芸融合価値創出プロジェクト」の最終プレゼンテーションをリモートで実施
2019年度春学期より始まった「複合領域研究210:工農芸融合価値創出プロジェクト」授業。2020年度は秋学期に3学部の学生を対象としたハイブリット授業として開講されました。授業のコンセプトは「STREAM Style」。STREAMとは科学(Science)、基礎技術(Technology)、ロボティクス(Robotics)、応用技術・工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の頭文字を並べた造語で、2020年春に利用開始となった異分野融合の拠点である「STREAM Hall 2019」のネーミングにも使われています。STREAM Hall 2019 では現在、STREAM Style の教育(分野融合的ものづくり教育)を展開し、21世紀の労作教育としての成果を出しています。
10月8日第1回目の授業は、STREAM Hall 2019内にある階段状ステージのエリア「アカデミック・スクエア」で実施。工学部・小酒井正和教授が授業の目的や実際にどのようにグループワークを進めていくかについて対面でのガイダンスを行いました。一通りのガイダンスの後に、課題のための現地調査としてSTREAM Hall 2019の見学ツアーを行い、ロボティックスラボやメーカーズフロアなどで開発・制作環境の説明を受けました。
今年度の課題は「新しい価値創造につながる製品・サービスの持続的な成長の方策を提案せよ」です。別々の学科のメンバーが属する1グループ4名×3グループによって、持続的に社会貢献できる価値の創出についてのアイデアを考え、その実現性を追求していきました。
2回目以降は新型コロナウイルス感染症拡大防止を踏まえて、工農芸各学部から6名の教員が交代で遠隔授業を担当し、受講生たちはそこで得た知識や考えをもとにリモートでグループワークを展開。最終回となる1月20日の授業では、3グループそれぞれが考案した価値創出のアイデアのプレゼンテーションが行われました。当初はガイダンス同様に全員が「アカデミック・スクエア」に集まって開催する予定でしたが、首都圏での緊急事態宣言発令もあり、無観客生配信ライブという形式で実施されました。当日の会場であるアカデミック・スクエアには司会進行の小酒井教授のほか担当教員1名のみで、リモートでのプレゼンテーションとなりました。
審査には授業を担当した教員のほか、ゲスト審査員として、昨年度に続き玉川大学芸術学部卒業の神成大樹氏が参加してくださいました。神成氏は、株式会社BRAIN MAGIC代表取締役としてクリエイティブ作業用デジタルデバイス開発を手がけるクリエーターです。学生が提案するアイデアにあたたかいアドバイスとご自身のビジネス経験に基づく的確な講評をいただきました。
以下、3チームのプレゼン概要を紹介します。
チーム 「サービス弁当」
「ベジデンくんプロジェクト」
農家が田畑などに設置している「農産物無人販売所」に、トマトを模したかわいいAIロボット「ベジデンくん」を据え付け、「農業×地域×IT」が融合したサービスを運営するというプロジェクトを提案。「ベジデンくん」は無人販売所では商品の案内や支払い、盗難監視などの役割を果たす一方で、5G通信の基地局として地域の5G普及の一翼を担います。また、スマホアプリと連携し、商品購入や食育レシピの提供、さらに農家や地域のイベント案内、求人、ボランティア募集などの窓口としても機能。とても便利で愛されるキャラの「ベジデンくん」が農家と地域の人々をつなぎ、農業への関心や農家のファンを作る役割を果たしていくという、公共的な役割も視野に入れた、価値も高いビジネスプランでした。
チーム「バイキング」
「SHOKU-NIN 2.0」
職人の高齢化や後継者不足により、伝統工芸の衰退が懸念されてる現在。「SHOKU-NIN (しょくにん)2.0」は、時代に合った職人育成の社会システムづくりを行って、価値ある伝統工芸の火を未来につなげていくという壮大なプロジェクトです。具体的には未経験の若者でもチャレンジしやすい職人の労働環境づくりや、職人採用を仲介するシステムを自治体との連携やネットワークを駆使して構築。若い人々にとって魅力的で、「なりたい!」と思わせる新しい「職人像」を社会に広くアピールしていきます。
さらに日本文化への関心が高い海外マーケットやSDGsなど環境マーケットなども意識し、「SHOKU-NIN 2.0」をコンテンツ化することでイベントや異業種コラボなど広範なビジネス展開を想定し、持続的な事業としての可能性を探ります。
チーム「春夏秋冬」
「MOTTAINAI」
食品削減アプリ「MOTTAINAI」によって、人々が美味しく「食品ロス削減」に貢献できるサービスを構築するというプロジェクト。日本では昭和の時代ぐらいまで、家庭で作りすぎてしまったおかずなどを近所でやりとりする「おすそ分け」という習慣が一般的でした。このプロジェクトでは各家庭で作る「家庭料理」をおすそ分け=シェアすることで、食品ロスをなくすだけではなく、料理のマンネリ化を防ぎ、地域コミュニティのつながりや情報交換の場として、コミュニケーションの活性化にもつながっていくという多様な価値を提供するビジネスプランを提案。アプリ提供企業と顧客の関係や具体的なアプリのインターフェイス・機能などもわかりやすく紹介されました。
全チームのプレゼン終了後、ゲスト審査員と来場者WEB投票が行われました。その結果、「サービス弁当」「バイキング」「春夏秋冬」の得票順となりましたが、それぞれに特色があり甲乙つけがたいプレゼン内容でした。
講評者の神成大樹氏は、得票数が一番少なかったチーム「春夏秋冬」の「MOTTAINAI」を「新しいアイデアでいちばん驚いた。実現可能性もある」と高く評価されていました。最後に小酒井教授が「みなさんのアイデアの実現を全力でサポートしていきたい。このSTREAM Hall 2019から新しいプロジェクトを社会に発信していきましょう」と学生たちのこれからの頑張りへのエールを送りました。