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2022年度秋学期・TAMAGOイベント:米・ウィルクス大学教授と玉川学生による交流授業

2022.12.08

玉川学園・玉川大学における国際教育・交流の機会であるTAMAGO(Tamagawa Global Opportunities)のイベントは、IaH (Internationalization at Home)として留学や研修のプログラムの奨励や留学生受け入れの土壌づくりとなっています。

今回は、その1つとして、コロナ禍ではオンラインで行われてきた海外大学との交流が、ついに2022年度は対面授業として実施されました。アメリカのペンシルバニア州にあるウィルクス大学より3人の先生方が来日され、日本文化体験や幼少中高の視察、大学での授業など、約1週間の滞在中、様々な交流活動が行われました。

アメリカと日本の教育の違いについて大学で授業

今回の訪問では、ウィルクス大学より副理事・副学長のジョナサン・フェレンセ先生、グローバル・エデュケーション・センター長のキャシー・リー・アルクイーノ先生、英語教育センター長のキンバリー・ニーズゴダ先生が、玉川学園に1週間ほど滞在し、玉川学園・玉川大学の教育活動視察や日本文化体験をされました。10月20日には、国際教育センター主催のTAMAGOイベントとして、ウィルクス大学の先生方による対面授業が行われました。
「アメリカの大学生活とペンシルバニア州の教育」をテーマに日米を教育比較しながら意見を交わしました。玉川大学からは教師を目指す学生たちが中心に参加しました。

最初に、玉川大学の学生から「日本の教育の強みと課題」というテーマで、それぞれ英語でプレゼンテーションが行われました。給食などの食育や掃除を通した公共意識の育成など、日本の学校教育について、データなども取り込んだ発表に、ウィルクス大学の先生方からも積極的に質問や意見が飛び交いました。

後半は、ウィルクス大学の先生方からのプレゼンテーションです。まずは、今回日本に来たことが、初めてアメリカから外の国へ出た経験だとお話しされたジョナサン先生。「この訪問は人生を変える経験になりました。玉川の美しい環境、人々にお会いできて本当に光栄で、感謝を述べます」という言葉から授業が始まりました。

薬学の教授であるジョナサン先生。学生たちのプレゼンテーションや小学部の授業見学などを参考に、玉川とウィルクス大学の価値観や教育理念についてお話しされました。

「玉川学園には全人教育の核となる6つの価値『真・善・美・聖・健・富』があり、ウィルクス大学には『Mentorship、Diversity、Scholarship、Innovation、Community』というValues(価値)があります。授業サイズは20人以下に抑え、先生たちとのメンターシップを大事にし、学生たちの学びの機会を重視しています。様々なバックグラウンドの学生がおり、イノベーション精神も大事にしているので、学生たちはそれぞれの興味や経験、学びを活かして可惜なビジネスを想像したり、研究や専門の道などへと広げたりしています。また、コミュニティを大事にし、地域の子供たち500人以上に、プログラミングレッスンや温かい食事も提供するような放課後のプログラムも提供しています」

そして、いかにそうした学校の価値が教師として教えていくこと、そして学校の役割としていかに大事かということを学生たちに伝えました。

日本の小学校教育とペンシルバニアの学校の違い

次にプレゼンテーションをされたキンバリー先生は、ウィルクス大学の教員養成プログラムやペンシルベニア州の公立学校について話しました。
「ウィルクス大学は学部生約2500人で、ニューヨークから約3時間のペンシルバニア州にあり、とても穏やかな地域の大学です。公立の小学校の子どもたちは、日本の子どもたちほど長時間は勉強しません。1日7〜7時間半学校で勉強し、専科の授業では教室を移動します」

特に力を入れているのは、今、アメリカの学校教育で重視されているSEL(Social Emotional Learning)とSTEAMの教科だそうです。SELは、「社会性と情動の教育」と呼ばれるものです。STEAM教育は、文理の枠を越えた教育をさします。

「SELでは、いかに互いを大事にし、助け合ったり、サポートし合うのかということについて考えたり話し合ったりする時間を設け、子どもたちが考える機会を増やしています。いじめの防止や多様性の理解にもなります。STEAMでは、アートやプログラミング、エンジニアリングなどを教えています」

さらに、教育の中で大事にしているのは、失敗してもいい、先生は常に正しいわけではないということだと説明してくれました。
「生徒が『先生間違っているよ』と教えてくれることを先生たちは歓迎しているのです。アメリカでは、失敗してもいいと教えることを大事にしています。先生が間違えても良いのです」という話に対して、学生から「日本では、基本的に先生は正しいという意識があります」と比較して意見が出ました。
そこで、キンバリー先生はこう説明しました。
「アメリカでは先生がボスではなく、児童/生徒が自分のために考え、分析し、挑戦していける支援をしていくことが大切だと考えています。そしてそれは、大学生だけでなく幼稚園や小学生のうちから、自分たちで決めて運営していくというのを推奨しています。集団よりも個人の意見を推奨し、健全な競争意識を持つことも良いとされています」

ワイオミングエリアの先生たちに期待される以下の要素は、アメリカの先生の特徴をよく表しているそうです:

  • 生徒とその家族を中心に考える
  • 計画的に運営できる
  • 協力的である
  • 振り返りができる教育者である
  • 柔軟である
  • 新しいことに常に挑戦する

そしてアメリカの5年生の授業例の動画を提示し、クリエイティブで楽しく、生徒たちが集中して入り込めるような授業展開の具体例を示しました。他にもクラス内でのルールやクラブ活動の指導などについても触れ、日本との違いについて、学生たちとの意見交換で盛り上がりました。

失敗やチャレンジを恐れない子を育てる教育を目指して

その後の、学生からの質問にウィルクス大学の先生方が答えてくれました。

――課外活動はどのように行われていますか?

「アメリカでは基本的に外部のコーチなどが指導します。クラブを教えるのは先生たちの負担を増やしてしまうので、外部の専門家などが教えます」

――チャレンジすることを恐れないとおっしゃっていましたが、日本では集団生活を重視します。それにより震災などの災害時にパニックにならないなどの利点もあります。ただ、集団を乱さないということから自己主張を控えるという風潮もありますが、どう思われますか?

「確かに日本は集団を重視し、アメリカは個人を重視する傾向があります。ただ、グループでいても個人の意見は尊重されますよね。私は日本のシステムをアメリカ風にしたほうがいいとは思っていません。ただ、アメリカの子どもが日本のクラスに来たとしたら、あなたはどのようにその子が慣れるように手助けができるでしょうか?そういうことを考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。私は日本で4年間教えましたが、アメリカの教え方は通用しませんでした。日本の文化を理解した上で、少しずつアメリカのやり方を取り入れるようにしました」

最後にウィルクス大学国際センター長を務めるキャシー先生が、「私はウィルクス大学で国際理解や国際交流などの担当をしています。今後もこのようにアメリカの学生をもっと海外に触れられる機会を増やしたいと思っていますし、皆さんも興味があればぜひ来てください」とご挨拶をされました。

「教師になることに自信がついた」学生と教授たちの感想

参加した学生たちは、日米の教育指導の違いを学びとても刺激を受けたようです。

羽倉未波さん(教育学部3年)

「ウィルクス大学の価値は、日本の教育にも大事なことだと思いました。私は予期せぬ出来事に動揺することが多いのですが、今日の素敵なプレゼンテーションを受けたことで失敗をすることへの不安などが解消され、教師になる自信がつきました。教師を目指してさらに頑張ろうと思いました」

小学校の英語の先生を目指している佐藤素花さん(教育学部2年)

「実際のアメリカの小学校の様子に触れる機会が貴重でした。パペットを授業に使うことや行事などに合わせてテーマや服装を変えることなども面白いアイデアだと思いました。先生が間違えてもいい、生徒が先生への指摘をしていいなど日本との違いも大きく、それがクリティカルシンキングにつながっているという発想も新鮮でとても勉強になりました。ぜひ生かしていきたいです」

今回の授業を終えて、ウィルクス大学の先生方も玉川の訪問から大きな成果を得たと話してくれました。

ジョナサン先生

「玉川の訪問で印象に残ったのは、全人教育とそれがいかに授業や教室のデザイン、学び方や先生方の姿勢などが全体に浸透された素晴らしさです。また、図書館は、過去に見た図書館の中で一番美しかったです。学生たちは礼儀正しく、賢く、プレゼンテーションもレベルが高く素晴らしかったです」

キンバリー先生

「学生たちの質問の内容もとても良く、きちんと内容に関して深く考察されたものでしたし、専門的な視点を持って考えていることが伝わってきました。また、COIL(Collaborative Online International Learning)を通して玉川の学生がアメリカの子どもたちとのやりとりをしているのを見てきましたが、子どもたちの関心を上手に集めたとてもいいやりとりでした。良い先生になっていってくれると信じています。そして、玉川の先生方のご協力やおもてなし精神や本当に素晴らしく、感謝しています」

互いの違いや良いところを学び合う機会となった今回の授業、学生も先生方も大きな刺激を得て次のステップに活かしていける機会をなりました。

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