【Part1】包括連携協定締結10周年を記念し、南さつま市で式典を開催。さまざまな交流が行われ、実りある4日間となりました。

2023.10.16

玉川学園創立者・小原國芳の故郷である鹿児島県南さつま市。玉川学園は南さつま市と2012年に包括連携協定を締結。その連携協定締結10周年を記念して2022年に式典を計画していましたが、コロナ禍という状況を鑑み延期。今年8月に、ようやく開催する運びとなりました。
8月19日(土)の式典の前後にもさまざまな行事が開催されることとなり、玉川学園からは理事長・理事をはじめ、K-12の部長・教員、大学の部長、教育博物館の教授陣、またK-12からは玉川学園ハンドベルクワイア、大学からは玉川大学合唱団の生徒・学生が参加。支援スタッフも含めると80名を超える関係者が現地を訪れました。4日間の行程を2ページに分けてご紹介いたします。

DAY1:生徒や学生が南さつま市に到着。創立者のふるさとを見学

玉川学園ハンドベルクワイア、玉川大学合唱団の生徒・学生は、8月18日(金)に鹿児島空港に到着しました。南さつま市役所の皆さんからの歓迎を受け、同市まちづくり推進係スタッフの案内のもと、宿泊所へ。その後、まず万世特攻平和祈念館を見学しました。学芸員の方から特攻隊の当時の状況や祈念館周辺が特攻隊の飛行場跡地だということを聞き、驚く生徒たち。展示されている特攻隊員から両親へ宛てた手紙、遺品などを見学して回りました。

その後、車で場所を移動し、眺望の良い「亀ヶ丘」を見学。標高387mの山頂にある展望所で、リアス海岸の美しい景観を堪能しました。さらには「くじらの眠る丘」も見学。この施設は、2002(平成14)年に同市小湊干拓海岸に座礁した14頭のマッコウクジラのうちの1頭を、骨格標本として保存し、後世に残すために建設されました。展示には座礁した当時の様子やクジラの種類などもくわしく書かれており、またマッコウクジラの大きさを実感できることから、生徒や学生からは驚いた様子が見られました。

DAY2:南さつま市包括連携協定締結10周年記念式典と南さつま市視察

8月19日(土)の午前中、理事長をはじめK-12の教職員・教育博物館の教授陣は南さつま市の各所を視察しました。南さつま市立としては2校目の義務教育学校である金峰学園では、南さつま市長や教育長、金峰学園校長、教頭から南さつま市の教育現状と金峰学園が進める教育活動のレクチャーを受けました。金峰学園は本年度開校したばかりの小中一貫校。小学校・中学校の9年間を、4年制・3年制・2年制とK-12のように独自の区分けで教育を行っています。また学園内だけでなく、南さつま市全体での制服の着回しを行うことを目指すなど、SDGsやLGBTQにも配慮した先進的な活動にも取り組んでおり、玉川学園関係者からもさまざまな質問が寄せられました。

その後は、市内の企業である株式会社エルムへと移動。エルムは「宇宙から農業まで」をコンセプトにさまざまなものづくりに取り組むメーカーで、2016(平成28)年より玉川学園とともに産官学連携の「南さつま市コンテナ内LED育苗推進プロジェクト」に参画しています。この日は代表取締役社長の宮原隆和氏が、同社が展開する幅広い分野の商品の特長や開発経緯などを説明。「無いもの・無い技術があれば自分たちで作ろう」と果敢に挑戦し、夢を実現していく姿が非常に印象的でした。さらに一行は近隣にある竹屋神社(通称:焼酎神社)にも赴き、今回の記念行事が滞りなく進むこと、これから南さつま市との連携がさらに発展することを皆で祈念しました。

式典に先立ち鹿児島銀行から「かぎんSDGs推進私募債」の贈呈式が行われました。これは発行額の一定割合を原資として、私募債発行企業が指定する学校・団体に鹿児島銀行が寄付・寄贈を行うもの。今回は株式会社ダイフクより、南さつま市と玉川学園が寄付を賜りました。ダイフクは鹿児島市において衣料卸売業を営む企業。現社長の玉利佳久氏は高校・大学の7年間を玉川学園で過ごした玉川っ子でもあります。また「私の祖父は、鹿児島師範学校で國芳先生と一緒だったという縁もあります」と玉利氏。これを受けて小原芳明理事長は「学校での教育活動はエネルギーを消費することのほうが多いのですが、今後はSDGs推進に学校が貢献できることを考えていく必要があります。そのためにも今回のご寄付を大切に使わせていただきます」と寄付の有効活用に言及しました。

そして、今回の南さつま市訪問のメインイベントである南さつま市包括連携協定締結10周年記念セレモニーが、市内のふれあいかせだ いにしへホールで開催されました。会場に市民の皆さん約140名、玉川学園関係者と玉川大学・玉川学園学友会鹿児島支部の方々を含め総勢約230名が参集する、盛大なセレモニーとなりました。記念の式典は、南さつま市の市民歌で幕を開けました。そして登壇した本坊輝雄市長は「2009年に市長に当選して以来、玉川学園のさまざまな活動を地域振興に活かせないかと小原芳明理事長に相談し、2012年に教育連携を締結することができました」と、当時を振り返ります。以来、玉川大学の通信教育課程で学ぶ南さつま市の学生が修学旅行として玉川学園を訪れたり、玉川大学の運動部が南さつま市で合宿を行うなど、さまざまな交流が行われてきました。小原芳明理事長も「教育連携も10年が経ちました。ここ数年はパンデミックでなかなか交流もできませんでしたが、新たな教育を行う機会が再びやって来ました。ここ数年で培った遠隔教育のノウハウなども活かしていきたいと思います、今回の10周年が、そうした新しい教育活動のスタートとなることを願っています」と語り、多くの拍手が寄せられました。

第1部では、「小原國芳と久志」と題した教育学部長佐久間裕之教授による記念講演が行われました。小原國芳の功績や、生誕地久志でどのような出会いがあったのか、そして「夢見る人」小原國芳のメッセージといった内容で、小原國芳の人物像や全人教育の考え方、そしてそれを育んだ久志の環境や人々との交流などが語られました。最後に今の教育界にこそ、全人教育が必要であることを力説し、講演を締めくくりました。
第2部は玉川学園ハンドベルクワイアと玉川大学合唱団による演奏と合唱です。司会進行役はリベラルアーツ学科と教育学科の4年生。その一人は生粋の薩摩っ子で、地元の方言で挨拶を行うと会場からは驚きの声が挙がっていました。

ハンドベルクワイアは「ガウデアムス」、「花は咲く」を、合唱団は「わらべうたまつり」、「幸せなら手をたたこう」、「海」を披露。そして南さつま市からは小学生で構成された南さつま市少年少女合唱団がステージに上がり、「鉄腕アトム」を歌いました。この合唱団は昨年度の鹿児島市ヴォーカルアンサンブルコンサートで銀賞を受賞しており、会場からも大きな拍子が贈られました。そして南さつま市少年少女合唱団と玉川大学合唱団のコラボレーションにより「スタンド・アローン」を、さらにハンドベルクワイアも加わって「見上げてごらん夜の星を」を披露しました。

登壇した小原一仁常務理事は、「10年と口にすると一瞬で終わってしまうようなことに思われますが、締結までにも長い時間がかかりましたし、その後の道程も決して平坦ではありませんでした。だからこそ今日を無事に迎えられたことを嬉しく思います。そして今日を皮切りに、次の10年へとつながっていくことを祈念しております」と挨拶しました。

夕方からは、鹿児島市内のSHIROYAMA HOTEL kagoshimaにて、学友会鹿児島支部会交流会が開催されました。理事長をはじめとするK-12の部署長、大学学部長が参加しました。会場では理事長、学友会長、鹿児島支部の顧問や支部長などが挨拶。登壇した佐藤敏明学友会会長は「今回南さつま市を訪れて、玉川学園が地域に浸透していることを実感いたしました。記念セレモニーも非常に喜んでいただいて、國芳先生もさぞ嬉しいのではないかと思います」と挨拶を行いました。教育学部長佐久間裕之教授による講演や現在の玉川学園を動画で紹介。卒業生の皆さんに教育者小原國芳の想いと、それを脈々と受け継いでいる今の玉川を知っていただく機会となりました。

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