ベルリン・フィルのメンバーとつくる教育プログラム2023(小原國芳教育学術奨励基金助成事業):一貫校ならではの「本物にふれる教育」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の皆さんと、20年以上にわたり交流を続けている玉川学園。公演で来日するたびに、忙しいスケジュールの合間を縫って学園を訪れてくださいます。本年度も11月22日(水)に、第1ヴァイオリンのシモン・ロテュリエ氏、第2ヴァイオリンのライマー・オルロフスキー氏、ヴィオラのマシュー・ハンター氏、チェロのウラジミール・シンケヴィッチ氏で構成される弦楽四重奏の皆さんが来校。さまざまな行事が行われました。
最初のプログラムはUniversity Concert Hall 2016内のMarbleで行われた「教育プログラム2023 弦楽アンサンブル・レッスンとレクチャー」。本間奏羽さん(芸術学部音楽学科2年・第1ヴァイオリン)、島田塔子さん(教育学部教育学科4年・第2ヴァイオリン)、佐藤千夏さん(リベラルアーツ学部リベラルアーツ学科4年・ヴィオラ)、渡部馨さん(Secondary Division11年・チェロ)の4名でカルテットを組み、ベルリン・フィルのメンバーから公開レッスンを受けます。本間さん、島田さん、佐藤さんは玉川大学管弦楽団で、渡部さんは玉川学園オーケストラ部で活動中であり、四人はこの日のために8月から練習を重ねてきました。こうした高大連携での活動が行えるのも、玉川学園ならではといえます。
ステージにベルリン・フィルの四人が現れると会場から大きな拍手が送られ、ステージ上で待っていた学生たち四人も立ち上がり挨拶をします。そんな彼らにベルリン・フィルの四人も日本風のお辞儀で応えます。
この日の課題曲は「弦楽四重奏曲 第74番 ト短調 作品74-3」(J.ハイドン作曲)。ハイドンは多くの弦楽四重奏曲を残していますが、この第74番は第1主題の躍動感ある曲調が疾走する馬を連想させることから「騎士」の愛称で知られています。
早速ベルリン・フィルの四人の前で演奏を行う学生たち。そして演奏が終わると、さまざまなアドバイスがベルリン・フィルの四人からありました。「馬に乗った経験のある人は?」というハンター氏の問いにチェロの渡部さんが手を挙げると、「その時のリズムをイメージして、もっと弦を大きく使うといいでしょう」とアドバイス。またシンケヴィッチ氏からは「コントラストを意識しましょう。フォルテもただ強く弾くのではなく、馬に乗った騎士たちが一度歩みを止め、そこから強く踏み出すようなイメージで」など、作曲者が曲に込めた想いを読み取り、想像力をふくらませて演奏するための指導が数多くありました。そうしたアドバイスを聞き、熱心に楽譜に書き込む学生たち。最後に改めて演奏を行った際には、音にメリハリがあり、より強く聴き手に曲が響いてきました。また観客の皆さんもベルリン・フィルの四人によるアドバイスを参考に学生たちの演奏に聴き入ります。ベルリン・フィルによるレッスンはステージ上の学生たちはもちろん、この日会場にいた観客全員を「より良い聴き手」に成長させたのかもしれません。
約1時間のレッスンの後、今度はベルリン・フィルの四人が演奏を行いました。披露されたのは「弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品13」(F.メンデルスゾーン作曲)。演奏が始まると、四人で奏でているとは思えないほどの音が会場全体に響きわたります。先ほどのアドバイスを参考にしながら聞くと、その演奏の素晴らしさがより際立ちます。玉川学園では創立当初から「本物にふれる教育」を提唱していますが、この日の公開レッスンはまさにその道の第一人者から教わる貴重な機会となりました。
そして午後はMarbleにてPrimary Division 5年生たちとの交流が行われました。 まず玉川学園の卒業生で、コントラバス奏者として東京フィルハーモニー交響楽団に所属している遠藤柊一郎さんが登壇し、ベルリン・フィルの特徴や玉川学園での思い出について語りました。コントラバスとの出会いは玉川学園中等部での部活動だったという遠藤さん。「校歌を四部合唱で歌う学校は、なかなかありません」と語ってくれました。
その後、登壇したベルリン・フィルの四人に対して、5年生の児童2名が代表して英語で質問を行いました。「ご自分の楽器はオーケストラでどんな役割をしていますか?」、「いろいろな国の人と働いて、大変なことや楽しいことはありますか?」「ステージに上がる時の心境や、ルーティンはありますか?」といった質問に対して、皆さん丁寧に答えてくださいました。
そしてベルリン・フィルの四人が「G線上のアリア」(J.S.バッハ作曲)を演奏し、5年生児童が「And So We Sing」(マーク・ヘイズ作詞・作曲)を合唱。オルロフスキー氏から「Thank you So much!!」と感謝の言葉をいただきました。この日最後の演奏は、ベルリン・フィルの四人による「弦楽四重奏曲 第2番」(F.メンデルスゾーン作曲)。そして児童からベルリン・フィルの四人に花束の贈呈があり、四人は笑顔でステージを後にしました。
忙しい来日スケジュールの合間を縫って、さまざまな教育プログラムに参加してくださったベルリン・フィルの皆さん。この交流が、今後も続いていくことを願っています。
Topic 1
午前中の公開レッスン終了後、ベルリン・フィルの四人は小原記念館で昼食をし、松下村塾の紅葉の元で野点を楽しみました。また、ハンター氏が現役の楽団員として来園できるのは今年で最後とのことで、これまで長きにわたり玉川学園の教育プログラムに貢献してくださったことへの感謝を込めて、小原芳明学長より記念のクリスタルが贈呈されました。また野点は、玉川学園茶道部の指導を担当している卒業生の長島行介氏が担当し、皆さんに日本文化の一端に触れていただくことができました。
Topic 2
当日、5年生の児童から御礼のメッセージを込めた色紙を贈呈。ベルリン・フィルの四人から心のこもったメッセージを玉川の子ども達と学生達に向けてくださいました。また、例年お越しいただいているニコラス・レーミッシュ氏からもメッセージをいただきました。弦楽四重奏を演奏した生徒・学生たちからも御礼の色紙を後日お送りし、大変喜んでいただきました。
レーミッシュ氏の色紙の音符は、なんの曲だと思いますか?レーミッシュ氏から「歌ってみて」とのことです。わかりますか?.... そうです。「第九」です。レーミッシュ氏は、玉川が第九を大切にしていることを覚えていてくださり、12月の音楽祭で学生達が第九を歌うにあたり第九のメロディを書いてくださいました。レーミッシュ氏がくださったこれまでのメッセージはリンク集でご覧ください。
ベルリンフィルを2025年に引退されるマシュー・ハンター氏が、これまで玉川の子ども達や学生達にくださったメッセージは、ハンター氏のリンク集でご覧ください。