キャンパスで出会う世界最高峰の音−ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員との教育プログラム
世界最高峰のオーケストラのひとつ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。歴代の常任指揮者にはヘルベルト・フォン・カラヤンやヴィルヘルム・フルトヴェングラーらが名を連ね、団員一人ひとりが世界最高レベルのソリスト級の技量を誇ります。
この素晴らしいベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と玉川大学・玉川学園の間には、20年以上続く親密な教育の交流があり、11月18日には「玉川―ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員 教育プログラム2025」(小原國芳教育学術奨励基金助成事業)が実施されました。

錦秋の華やかさにキャンパスが包まれたこの日、University Concert Hall 2016のホール「Marble」のステージに現れたのは、レイチェル・シュミットさん(第1ヴァイオリン)、ライマー・オルロフスキーさん(第2ヴァイオリン)、ユリア・ガルテマンさん(ヴィオラ)、ウラジーミル・シンケヴィッチさん(チェロ)の4人です。客席を埋めた学生、教職員、保護者、卒業生らが大きな拍手で迎えました(Primary Division(小学校1年生~5年生)の部はインフルエンザによる学級閉鎖で中止になり、大学の部のみが実施されました)。
芸術学部音楽学科の中村岩城教授が、「ライマーさんは2013年から玉川学園に関わられていて、今回もメンバーを選んでいただき、日程も調整してくださいました」と紹介。女性団員が第1ヴァイオリンとして、またヴィオラも女性で来校されるのは初めてのことだそうです。





今年の大学の部のプログラムは、学生と団員による対話です。まずは対話の材料として、ヨハネス・ブラームス作曲「弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調 作品51-1」が披露されました。
力強い第1楽章が始まると、4人が奏でているとは思えない豊潤な響きがホールいっぱいに満ち渡り、見事に溶け合った音の美しさと素晴らしい一体感に包まれました。第4楽章が終わると、割れんばかりの拍手がしばし続いたのでした。
興奮冷めやらないなかで始まった対話は、音楽学科の森永美穂子講師がドイツ語の通訳を担当。玉川大学管弦楽団でコンサートマスターを務める藤原陽史さん(農学部生産農学科3年)が、「ホールの端まで音を届ける演奏法を教えてください」とお願いすると、第1ヴァイオリンのシュミットさんが笑顔で「構え方にポイントがあります」と言い、楽器の角度や弓を持つ手、弾き方を丁寧に教えてくれました。


高村柊子さん(リベラルアーツ学部リベラルアーツ学科3年)は、身体を使って演奏するうえで意識していることについて、第2ヴァイオリンのオルロフスキーさんに尋ねました。オルロフスキーさんは、「とても良い質問ですね。まずは両足がちゃんと地面に付き、体重が均等にかかっていることを確認します」と説明し、楽器の振動で体が自然に動いていくことを感じながら練習することを勧めました。


阿部真菜果さん(芸術学部音楽学科3年)の「高いポジションでも優しい音色を出すには?」という質問には、ヴィオラのガルテマンさんが、弓を押しすぎないことやビブラートをかけることなどをアドバイス。


そして、中村海智さん(芸術学部音楽学科3年)がチェロのシンケヴィッチさんに、ビブラートのかけ方やパート内での演奏の統一方法を聞くと、ビブラートを実演してからシンケヴィッチさんはこう言いました。 「オーケストラでは、各自の『こういう風に弾きたい』という意思が伝わると次第に揃っていきます。パート内で揃える必要はまったくなく、それぞれが持つ個性がミックスされて響くのが音楽です」


ラストにはアンコールのサプライズがありました。オルロフスキーさんを第1ヴァイオリンにして、ヘンデル作曲の歌劇「リナルド」からアリア「私を泣かせてください」を演奏。ゆったりとした厳粛な和声を通じて、4人が同じタイミングで呼吸をしていることがわかりました。
世界一流の奏者の息遣いまで感じることができるのは、本当に貴重な機会です。創立者の小原國芳が重視した教育実践「ホンモノに触れる教育」とは、知性のみならず、感性(五感)にも訴える教育です。ホンモノに触れることで、知識を頭で理解するだけでなく、自分自身の身体に刻み込むことができます。

今回のプログラムにご参加いただいたベルリン・フィルのメンバー4名から、温かいメッセージをいただきました。なお、写真で皆さんが手にしている色紙は、Primary Division(小学校1年生~5年生)の児童および教員から贈られたものです。
レイチェル・シュミット氏(第1ヴァイオリン)

この素晴らしい玉川大学のコンサートホールで演奏する機会に感謝します。学生のみなさんとお会いできたことは大きな喜びです。また、お会いしたいです。
みなさんの幸運を願って。
またね。
レイチェル・シュミット
ライマー・オルロフスキー氏(第2ヴァイオリン)

あなた達が最高の学生/児童生徒なので、毎回、玉川に帰ってくることは大きな喜びです。私たちは、このコンサートホールで演奏できることが大好きです。そして、みなさんからのとても深く、質の高い、素晴らしい問いを聴けることは光栄なことと感謝しています。また、近いうちにみなさんに会えますように。
幸運を。
ライマー・オルロフスキー
ユリア・ガルテマン氏(ヴィオラ)

素晴らしい観客であるみなさんに感謝します。私たちは、この素晴らしいコンサートホールでみなさんのために演奏できたことが嬉しいです。近いうちにまた会えますように。
ユリア・ガルテマン
ウラジーミル・シンケヴィッチ氏(チェロ)

私たちを玉川に迎えてくださってありがとうございます。学生や先生方に私達の音楽を聴いていただけて嬉しいです。この素晴らしい大学のみなさんの幸運を願っています。
ウラジーミル・シンケヴィッチ
今回は来園が叶いませんでしたが、本プログラムの実現にご尽力いただき、玉川学園のファンとしてこれまで何度も来園されているマシュー・ハンター氏(ヴィオラ)、ニコラウス・レーミッシュ氏(チェロ)からも、メッセージをお寄せいただきました。長年、メンバーとのコーディネートをしている教育学部の大谷千恵教授がお2人からのメッセージを預かりました。色々な部署の先生方が連携して「玉川―ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員 教育プログラム」は実現しています。
マシュー・ハンター氏(ヴィオラ)

音楽は命の木
マシュー・ハンター
ニコラウス・レーミッシュ氏(チェロ)

玉川の児童生徒・学生、教職員の皆さんへ
(イラストにある楽譜はベートーベン「運命」より)
幸運を。
ニコラウス・レーミッシュ
University Concert Hall 2016の廊下に展示されている、これまでに実施したプログラムの際にベルリン・フィルのメンバーから寄せられた歴代の色紙や写真をご覧になり、とても喜んでくださいました。

