『全人』2020年10月号 No.853より
2020年10月号 No.853
「Japanese Culture」特集として、ポップカルチャー、脳工学、舞踊、地域振興、老舗、教育の各分野における現状と、顕在化した諸問題などを大学教員にインタビュー。外国籍の教員が感じる日本の魅力や疑問についてもうかがいました。「玉川の先輩を訪ねて」は長唄・三味線演奏家の杵屋浅吉さんが登場。伝統を継ぐ表現者として挑戦する姿を紹介します。「研究エッセイ」は工学部 大森隆司教授と学術研究所 山田徹志助教による共同執筆で、玉川学園との連携で研究が進む「AIによる保育研究支援システム」を解説します。
表紙写真=岩崎美里

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学内には日本文化を伝える施設が随所にある。創立者がめざした塾教育の原点、吉田松陰による松下村塾もそのひとつ。1969年に学生有志が模築、2012年に再建された
一般的に「芸術」や「学問」の対象として扱われているのは、ポップカルチャーの対義語であるハイカルチャー。ポップカルチャーの価値とは、ターゲットを限定するハイカルチャーにはない表現の自由さです。
特定の対象をグラフィックにできない国や地域もあります。たとえば偶像崇拝を禁じるイスラム教などは、描けるものと描けないものがせめぎ合う宗教です。
日本の宗教観には偶像崇拝を禁じる考え方はなく、古代より絵画は文化の中心にありました。物語が絵画とともに展開していく技術が早くから確立され、平安時代の動物絵巻物にはじまり、封建時代の禅画、江戸時代の浮世絵が基礎となり、視覚的な表現の発展につながっていると考えられています。Japanese Culture
[ポップカルチャー]リベラルアーツ学部 田中素子 p4 -
「AIによる保育研究支援システム」の研究に取り組む大森教授(左)と山田助教(右)。脳科学研究所・宮田真宏研究員(中央)も研究チームのメンバー
書籍では、子どもの将来に向けての鍵となる能力として、社会情動スキル・非認知能力・コンピテンシーなどと呼ばれる能力を挙げています。それは、やりぬく力(GRIT)、好奇心、粘り強さ、誠実さ、自制心、楽観性、ストレスへの耐性など、私たちが学校で明示的には学ばない幅広い行動力を表しており、本稿ではそれらを合わせて「人間力」と呼びます。人間力は学力以上にその人物のパフォーマンスに影響すると言われますが、学力と異なり、測って数値化することは困難です。
人間力は、小学校に上がる以前に大きく育つと言われています。例えば、文部科学省のHPには、質の良い保育環境で育つと10歳頃で学力が、14歳頃で社会的能力が高くなるという報告もあります。
このような経緯で、幼児教育の質に注目が集まっているのです。研究エッセイ
子どもの未来と教育の可能性を広げるAI研究
大森隆司・山田徹志 p20
目次
- [特集]Japanese Culture
[ポップカルチャー]リベラルアーツ学部 田中素子
[脳工学]工学部 佐々木 寛
[舞踊]芸術学部 青山典靖
[地域振興]観光学部 家長千恵子
[老舗]経営学部 長谷川英伸
[教育]教育学部 湯藤定宗
私たちが感じる日本
玉川であじわう日本文化
故きを温ねて 82 「いはんや、お國のためなんだ」…白柳弘幸 - 玉川の先輩を訪ねて 86
長唄・三味線演奏家 杵屋浅吉 【高等部1997年卒業】 - TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- 研究エッセイ
子どもの未来と教育の可能性を広げるAI研究…大森隆司・山田徹志 - 生涯学べ 65 持田 誠 浦幌町立博物館
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