『全人』2021年2月号 No.857より
2021年2月号 No.857
2019年の「国際数学・理科教育動向調査」において、日本の中2数学は世界4位、小4算数は世界5位の成績を記録した一方で、「算数・数学の勉強は楽しいですか」への回答は小4が77%(平均84%)、中2が56%(同70%)と、国際平均を下回る結果となりました。今号では、児童・生徒の主体的な興味・関心を育み、理数教育に力を入れる伝統を礎にしたK-12算数・数学科の実践と、教員養成の取り組みを紹介します。「玉川の先輩を訪ねて」には応用昆虫学者として活躍する野村昌史さんが登場。昆虫学の基礎を培った農学部での学びを振り返ります。
表紙写真=岩崎美里
-
知識として正しい概念を把握することより、正しいと思い込んでいた概念の枠を、揺さぶられることこそ数学の醍醐味である。たとえば、「二乗してマイナスになる数」という虚数の定義には、どこか詩的な響きがある。それまで自分が知っていた「数」への思い込みが、根元から揺さぶられる驚きがある。
日常のなかには数学の芽がいくらでも潜んでいるのだ。僕たちはいつも、既成の概念を通して、世界を受け取っている。だからこそ世界は、これまでとは別の仕方で受け取られる可能性に、常に開かれている。そこに、新しい数学の芽がある。「日常に息づく『数学』」
独立研究者 森田真生 p4 -
自分の研究する虫なら、できる限り調べて語れるようになるべきだ――そんな雰囲気が玉川の農学部にはありました。だから私は学生に研究対象について一通り語れることを求めています。なかには、研究室の先輩が抽出した昆虫のDNAをそのまま使って解析の研究を進める学生もいます。でもそれだけでは足りなくて、その昆虫が生息する場所を含めて「全体」で理解することが大事なのです。
私は日頃から昆虫の写真を撮り歩いています。昆虫そのものはもちろん、彼らが風景の中にいる姿を見るうちに、植物や広い意味での環境との関わりまで見えてきたりするから面白いのです。玉川の先輩を訪ねて 89
応用昆虫学者 野村昌史【農学部1985年卒業】 p20
目次
- [特集]算数・数学に親しむ
[寄稿]日常に息づく「数学」 独立研究者 森田真生
玉川学園の実践
[1〜5年生]
学習をつみかさね、工夫して解く楽しさを 松田裕介
「算数が好き」を引き出せる授業に 伊藤真由美
がんばる生徒に聞きました
[6〜8年生]
統計の基礎を身につけて「学びの技」と、その先へ 土橋由布
数学は未来を予測できる学問「面白い」に導く工夫を 鈴木孝春
[9〜12年生]
知識の確実な習得で思考力を伸ばす 阿部恭平
常に論理性を意識して問題と向き合う 佐野真之
研究者、教員養成の視点から
[工学部]数学の根本は、自分の理性を信じること 成川康男
[教育学部]「算数・数学の生活化」をめざし 楽しく導ける教員に 瀬沼花子
[教育学部]プログラミング教育で算数の理解を深める 富永順一
故きを温ねて 86 「青年國芳、代数に苦戦する」…白柳弘幸 - TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- 玉川の先輩を訪ねて 89
応用昆虫学者 野村昌史【農学部1985年卒業】 - 生涯学べ 68 西田昌之 国際基督教大学アジア文化研究所
- K-12 海外交流校レポート 5
アメリカ プナホウ校 - 玉川玉手箱 30 楽しさのスイッチ…小林 等
- Teaching @ Tamagawa 17
Never Too Late To Learn…Brian Sakurai - 教育探訪 16 学園祭のオンライン開催…中西 茂
- キャリアナビゲーション ’20
株式会社SUBARU 山下大輔さん+就活Q&A - 学園日誌…小原芳明
- Book Review 187 『グッドラック』…佐々木友美
- 教育博物館館蔵資料紹介 339
「加爾均氏庶物指教」…宇野 慶 - 玉川の仲間たち 「ゴレンシ」…水野宗衛