『全人』2021年11月号 No.865より
2021年11月号 No.865
巻頭の「未来の人材」特集では、未来で求められる人材、力とは何かを考えます。渋滞学者で知られる西成活裕教授には「VUCAの時代とT字型人間」をテーマに、理想の人材像を語っていただきました。「学生たちの声」では8学部の学生にインタビュー。将来の夢やコロナ禍の学び、就職活動の実際などを聞きました。「玉川の先輩を訪ねて」は、スキンケアシリーズの華密恋や長野県池田町にある宿・八寿恵荘を運営する株式会社SouGo代表の北條裕子さん。玉川での思い出や仕事の目的などについてうかがいました。全人教育提唱100年記念シンポジウム(9月12日開催)の模様は「RESEARCH REPORT」で抄録しています。
表紙写真=岩崎美里

-
東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授。車やヒトなどに起こる多様な渋滞現象のメカニズムを研究する「渋滞学」を提唱。『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』(あさ出版)ほか、多数の著書がある
いまは、先行きの不透明なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字による造語)の時代だと言われています。ここで世界が取り組むべき課題のひとつに環境問題がありますが、「環境問題の専門家」を挙げようとすると、誰もいないことに気づきます。
なぜか? 環境問題は政治、医療、防災、食料といった数々の観点から捉えなければならず、ぜんぶをまたがって語れる人はいないからです。
でも人類の将来を左右する問題を総合的に考えられる人材の育成は可能です。私はその人材を「T字型人間」と表現しています。Tの縦棒は専門性を、横棒は分野横断の知を意味します。特定の分野を深く掘り下げた専門性と横に広がる知を兼ね備えた人材、それがT字型人間です。interview「VUCAの時代とT字型人間」 西成活裕 p4
-
経営工学、生産管理、品質管理などをもとに、企業の管理技術全般を研究する木内正光准教授。生産現場の現場に入り、課題改善のアドバイスを行う。板書は記号と英語で作成した工程分析図
私は研究の一環で、工場や小売りの現場に入り、モノや情報の流れ方をチェックし、併せて現場担当者や経営者への聞き取り調査を行っています。現場でモノや情報が滞っている状況を把握しつつ生の声を聞くと、自然と経営上の課題も明らかになり、改善のアドバイスもできます。
現場の分析に基づく改善の積み重ねは、日本企業が非常に得意とするところです。ただ、現在ある条件という「制約ありき」の発想に傾いてしまって、イノベーションが起こりにくくなる場合もあります。
これからの予測不可能な時代のビジネスにおいては、ゼロから考えることが求められています。そのため私は最近、生産管理の知見から、未来の事業や製品を構想することに強い関心を持っています。研究室訪問6 経営学部 木内正光准教授 p24
目次
- [特集]未来の人材
interview
VUCAの時代とT字型人間 西成活裕 渋滞学者
故きを温ねて 94 「少年國芳、英語と出会う」…白柳弘幸
学生たちの声 & 就活キーワード解説
卒業生採用担当者×キャリアセンター 誌上座談会
玉川の先輩を訪ねて 91
株式会社SouGo代表 北條裕子【女子短期大学1986年卒業】 - TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- RESEARCH REPORT
全人教育提唱100年記念シンポジウム - EDUCATION ANALYTICS
大学IRコンソーシアム学生調査 - 研究室訪問 6 経営学部 木内正光
- 生涯学べ 73 中川真梨子 群馬サファリパーク獣医師
- 脳科学相談室 5 個性とは、どのように育まれるのでしょうか…髙岸治人
- ものづくり図鑑 3 コスモス祭2021 本部実行委員
- キャリアナビゲーション’21
横浜ゴム株式会社 別所沙紀さん+就活Q&A - 学園日誌…小原芳明
- Book Review 195 『パウロ・フレイレ「被抑圧者の教育学」を読む』…島津 遼
- 教育博物館館蔵資料紹介 347
「ヨイコドモ掛圖 初等科第二學年後期用 第六圖 メイヂセツ」…菅野和郎 - 玉川の仲間たち 「イタヤカエデ」…金井秀明