『全人』2023年6月号 No.883より
2023年6月号 No.883
創立期より労作の一環として養蜂が行われていた玉川学園。食料難の戦後を迎え、岡田一次教授の農学部着任後の1950年から玉川大学のミツバチ研究は始まりました。巻頭の「ミツバチを知る」では、玉川大学学術研究所 ミツバチ科学研究センターの紹介、ミツバチの生態やその仲間、教育への活用、農業や景観にもたらす恩恵などをテーマに、最新研究の成果報告とあわせて特集します。「研究エッセイ」は「歴史をテーマにフィールドワークで観察力と洞察力を鍛える」と題して、教育学部 濵田英毅教授がゼミや授業での実践を紹介。「研究室訪問」は、観光による地域活性化の研究に携わる観光学部 谷脇茂樹准教授が登場します。
表紙写真=岩崎美里

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学術研究所 ミツバチ科学研究センターは、日本初のミツバチの総合研究機関として1979年に発足。以来、幅広い研究を展開するだけでなく、養蜂家と学術研究を橋渡しするなどの社会貢献にも取り組む。学内には3カ所の蜂場がある
ミツバチ研究は、世界で持続的な食料生産、環境保全の重要性、SDGsが掲げられているいま、大きな意義を持っています。花粉媒介者としてのミツバチがいなければ、農作物の授粉は人手に頼るほかなく、廉価な生産物は入手できなくなるでしょう。さらに近年の気候変動により自然界の花粉を媒介する昆虫が減少した場合、植物も悪影響を受けかねません。しかし多様な植物種に訪花するミツバチがいることで、受粉が行われ豊かな自然を次代に残すことも可能になるのです。
有史以来ヒトは、はちみつ、そして広く食料生産の観点でミツバチを飼育し、家畜化してきました。玉川のミツバチ研究の始まりもそうした背景があります。さらに遺伝子や脳など、ミツバチのからだの仕組みを調べる研究はそれらの基礎となる点で重要です。ミツバチ科学研究センターはこうした分野をカバーし、研究員はフィールドとラボで多様な研究に取り組み、社会への還元を図っています。【ミツバチ科学研究センター】佐々木 謙教授 p6
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2023年度玉川大学入学式は4月2日、3日に4回に分けて行われた。2日午前は文学部と農学部、同日午後は工学部とリベラルアーツ学部、3日午前は経営学部と芸術学部、同日午後は教育学部と観光学部の式典があり、計1,062人の新入生を迎えた
教育学部と観光学部は関わりのない学部のようで、実は学校教育と観光は共にサービス産業(第三次産業)に分類されます。利潤追求と同時に利他の精神や人々のために貢献する気概を忘れてはなりません。今日はJ・F・ケネディの大統領就任の言葉を引用します。
“Ask not what your country can do for you, Ask what you can do for your country.” このcountryを「人々」と言い換えると、まさにそれがサービスの精神です。つまり、他者が何をしてくれるのかを期待するのではなく、人が何を求めているのか、応えるには自分に何ができ、何をすべきなのかを考えることがサービス産業の基本です。
あるいは聖書の、“Do unto others as you would have other do unto you.” 自分がしてもらいたいことを人にも施しなさいという教えです。インバウンドやアウトバウンドで求められるものを意識した観光活動を考えてください。保育園、幼稚園、そして学校教師となる夢を持っている皆さんは、教師にとって利他の行為とはどういう活動なのかを考えてください。令和5年度 玉川大学・玉川学園入学式訓辞
小原芳明 p14
目次
- [特集]ミツバチを知る
[からだ]ミツバチを知る
[しらべる]ミツバチ科学研究センター 佐々木 謙
[まなぶ]ミツバチと教育 市川直子
[研究Ⅰ]ミツバチの遺伝子 佐々木哲彦
[研究Ⅱ]ミツバチの燃料調節 原野健一
[あつめる]ミツバチと養蜂資源 中村 純
[そだてる]ミツバチと農業 浅田真一
[なかま]ハナバチとカリバチ 小野正人
[はちみつ]ミツバチの恵み 勝又美紀 - 令和5年度 玉川大学・玉川学園入学式訓辞…小原芳明
- TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- 玉川大学 名誉教授称号記授与報告
- EDUCATION REPORT 2023年度 新入生の集い
- 史料は語る 10 「探究」…白柳弘幸
- 教育探訪 27 ブランドは人にあり…中西 茂
- 研究エッセイ
歴史をテーマにフィールドワークで観察力と洞察力を鍛える…濵田英毅 - 研究室訪問 23 観光学部 谷脇茂樹
- 生涯学べ 79 穐田 剛 大田区立羽田中学校教諭
- キャリアナビゲーション’23
株式会社ドワンゴ 雨宮宗介さん+就活Q&A - Book Review 213 『本当に大事なことはほんの少し』…髙橋 愛
- 教育博物館館蔵資料紹介 365 「手稿譜『すみだ三章』」…栗林あかね
- 玉川の仲間たち 「キビタキ」…田淵俊人