『全人』2023年10月号 No.886より
2023年10月号 No.886
特集のテーマは「伝統を継ぐ」。伝統とは“ある民族や社会・団体が長い歴史を通じて培い、伝えてきた信仰・風習・制度・思想・学問・芸術など。特にそれらの中心をなす精神的在り方”と定義されています(岩波書店『広辞苑』)。有形無形の教えを継ぎ、日本の文化や産業をにない、社会の第一線で活躍する6人の先輩に話をうかがいました。「実践レポート」ではPrimary Division5年生のサマープログラムを紹介。大学と連携し、ホンモノに触れる体験型のプログラムづくりに携わった河野峻平教諭が報告します。「生涯学べ」には、トヨタ産業技術記念館館長の大洞和彦さんが登場。「脳科学相談室」の回答者は鮫島和行教授。早期教育の効能などを考察します。
表紙写真=岩崎美里

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目にも鮮やかな「冨貴寄(ふきよせ)」は手土産としても人気。井田さんは五代目代表取締役社長を務める現在も店舗の奥にある工房に立ち、毎日生菓子づくりに励む
商売のかたちは、百年で大きく変わりました。関東大震災や戦後の食料難を経た三代目があづま通りに店を構え、四代目は高度経済成長も相まって、事業を拡げました。今はインターネットの力で全国展開ができる時代です。看板商品を生菓子から、日持ちして全国に配送できる「冨貴寄」にシフトチェンジしたことも、時代の流れにあったように思います。「冨貴寄」は素材にこだわった20種類以上の菓子をつくり、一つひとつ手で並べる面倒な作業。誰もやりたがりません。ひたすら手間がかかることを突き詰めていくと競争相手がいなくなるんですね。
こうして今があるのは、先代が築いた土台があってこそ。私の役目はもう一度原点に戻ることと考えています。その代にできることを一生懸命やる。これに尽きるように思うんです。時代にあった幸福を追い求めて
銀座菊廼舎 井田裕二
文学部英米文学科1998年卒業 p4 -
STREAM Hall 2019メーカーズフロアにて、工学部 平社和也講師の指導を受ける5年生。各自が考えたイラストやメッセージを、木製コースターとメダルにレーザーやメタルプリンタで刻印する
筆者が所属する5年学年会の教員は、ふだんはなかなか関わる機会のない玉川大学の先生方の存在や、学内にある素晴らしい施設などにかねてから魅力を感じていました。大学の研究機関にご協力いただくことで、充実した活動ができないか、と検討を始めたのです。そうして21年度にはLEDの植物工場Future Sci Tech Lab、MMRC(マルチメディアリソースセンター)、スターレックドーム(プラネタリウム)にご協力いただき、これまでの形式とは大きく変わりましたが、学びの多い充実したサマープログラムを実現することができました。
実践レポート
Primary Division サマープログラム 2023
河野峻平 p20
目次
- [特集]伝統を継ぐ
interview 時代にあった幸福を追い求めて銀座菊廼舎 井田裕二新しさを加えて次世代につなぐ
醉月陶苑 清水 潤
伝統ある日本の食文化を伝えていく
懐石留
育子
伝統を引き受けるという使命
能楽師 安福光雄
常に新しいことに挑む
相互発條株式会社 岸 敏久
弘法大師の誓願を伝える
高野山真言宗 総本山金剛峯寺 稲葉滋順 - TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- CAMPUS TOPICS 福島県・玉川村との教育連携の実践
- 実践レポート サマープログラム 2023…河野峻平
- 史料は語る 13 「天馬行空」…白柳弘幸
- 脳科学相談室 17 早期教育の効能について知りたいです。…鮫島和行
- 研究室訪問 25 芸術学部 松川 儒
- 生涯学べ 81 大洞和彦 トヨタ産業技術記念館
- キャリアナビゲーション’23 品川区役所 河原健一さん+就活Q&A
- 学園日誌…小原芳明
- Book Review 216 『具体と抽象』…露崎義矢
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