『全人』2025年11月号 No.909より


『全人』は玉川の教育をつたえる広報誌。毎号、「科学」「環境」「就活」「音楽」「家族」など、ひとつのテーマを特集して編集。特集には話題の研究者や作家のインタビューや寄稿を掲載し、教育現場の今と社会の接点を探ります。連載では、K-12、大学、通信教育の動向をお届けし、行事やニュースも報告。教員によるブックレビューや学生生徒のリアルな声なども載せ、読みごたえ十分です。
2025年11月号 No.909
11月号の巻頭特集は「変化をとらえる」。生物や自然、科学、語学、芸術など、あらゆる分野の変化と向き合う教員・研究者に話を聞きました。巻頭では「土の研究者」として世界各地をスコップ片手に飛び回り活躍している藤井一至さんに、土壌の奥深さを語っていただきました。今月から新連載「Scenes from Tamagawa」が始まります。行事などの舞台裏を写真で紹介する本連載の初回では、体育祭の練習風景をお伝えします。「玉川の先輩を訪ねて」は、奥能登で150年の歴史を持つ数馬酒造の5代目蔵元である数馬嘉一郎氏にインタビュー。2024年の能登半島地震で被災しながらも酒造りを止めなかった決断の連続を振り返ります。「玉川発見伝」では、25年夏に解体された農学部の牛舎をイラストレーターのモリナガ・ヨウさんに描いていただきました。今月も玉川教育の最新情報をお届けします。
表紙写真=岩崎美里

-
霊長類学を専門とし、世界でも数少ないオランウータン研究者である田島准教授。現在はオランウータンに人間に似た青年期があるとの学説を打ち立てるため、研究に励んでいる(イラスト=芦野公平)ボルネオ島(マレーシア・サバ州)でオランウータンを研究しています。オスは成熟すると顔が大きく変化します。フランジ(ひだ)が生じて顔自体のサイズも大きくなります。メスにアピールするための性的装飾です。
(中略)仮にフランジオスがいるのに別のオスがフランジを出したらどうなるか。それは命がけでメスを取りあう競争への参入を意味し、敗北は生命の終わりを意味します。アンフランジにとどまることで、過酷な競争社会への参入を控えるのは、子孫を残す可能性を高めるため、有利な状況を待つ繁殖戦術なのです。あえて「弱い」ままで繫殖機会の拡大を狙う
リベラルアーツ学部リベラルアーツ学科准教授 田島知之
P14 -
冬場に季節雇用の杜氏が朝から晩まで泊まり込む酒造りの通例を変えた数馬さん。被災後は社員の働き方を1日7時間労働、土日の完全週休2日制に切り替えるなど、変化と柔軟に向き合い続けている発災から3日後の1月4日に情報収集を始め、2月頭には酒造りの再開時期を4月に定めました。そこから逆算して余剰分の米を委託醸造したり、夏場に酒造りの仕込みを行うためにどのような設備が必要かを考えて投資の準備をしたりと、動き続けました。
(中略)災害を経験して、地域や自然への感謝がより強まりました。日本酒は米と水という自然の恩恵を受けて造られています。多くの方からエールをいただき、日本酒を飲んでいただくありがたみをあらためて実感しましたね。玉川の先輩を訪ねて 104
数馬酒造株式会社 代表取締役 数馬嘉一郎
P16
目次
- [特集]変化をとらえる
土は変化し続ける生きた存在 土壌学者 藤井一至
K-12
サンゴの生息域 今井 航、森 研堂
スポーツ科学 頼光一太郎
大学・研究所
語彙の量的構造 文学部 冨士池優美
ミツバチと気候変動 農学部 佐々木 謙
ノートテイキング 教育学部 魚崎祐子
芸術と法 芸術学部 ヲザキ浩実
オランウータンの顔 リベラルアーツ学部 田島知之
人間の脳 脳科学研究所 鮫島和行 - 玉川の先輩を訪ねて 104 数馬酒造株式会社 数馬嘉一郎
- TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- Scenes from Tamagawa 体育祭練習
- CAMPUS TOPICS 芸術学部パフォーミング・アーツ・プロジェクト2025
「シバイノタカラバコ」下田公演 - CAMPUS TOPICS 芸術学部×町田市立博物館 ミュージアムグッズ・プロジェクト
- 史料は語る 34 「馬鹿になれ 馬鹿になれ 大バカに!」 … 白柳弘幸
- 玉川発見伝 46 牛舎 モリナガ・ヨウ
- 耕す人 2 9-12年生 労作委員会
- 学生へ 7 教える人と学ぶ人と … 小原一仁
- 生涯学べ 91 横浜市立西寺尾第二小学校 雪竹あづさ
- 研究室訪問 48 リベラルアーツ学部 船戸はるな
- Book Review 239 『仕事ができる人になる 図解の技術 大全』 … 小酒井正和
- 教育博物館館蔵資料紹介 391 「生」 … 菅野和郎
- 玉川の仲間たち 「ツツハナバチ」 … 原野健一
