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トーテムポール

2021.09.24

日本最大級のトーテムポールが、屋内プール前広場の植え込みの中に茶褐色の太い柱の堂々とした姿で立っている。このトーテムポールは、マラスピナ大学(現在のバンクーバー・アイランド大学)より、玉川学園創立50周年のお祝いと、1979(昭和54)年に玉川学園が友好のしるしとして同大学構内に築園寄贈した日本庭園(玉川ガーデン)の返礼として贈呈されたものである。『トーテムポール世界紀行』(浅井晃著)にも世界の代表的なトーテムポールの一つとして紹介されている。

トーテムポールは、カナダを中心とした北アメリカ大陸の太平洋に面した北西沿岸部に暮らす先住民インディアンの多くが、家の前や墓地などに立ててきた柱状の木造彫刻で、家族の出自や出来事、家系に関わる紋章や伝説などを記録し伝承するものである。そこには魔除け、豊作、豊穣等の祈願の思いが込められている。

1.玉川学園キャンパスにあるトーテムポール

玉川学園キャンパスにある日本最大級のトーテムポールは、1981(昭和56)年1月19日、カナダのブリティッシュコロンビア州ナナイモ市にあるマラスピナ大学(現在のバンクーバー・アイランド大学)より、玉川学園創立50周年の記念と、1979(昭和54)年に玉川学園が友好のしるしとして同大学構内に築園寄贈した日本庭園(玉川ガーデン)の返礼として贈られたものである。1976(昭和51)年9月、玉川学園では、語学研修等のために、カナダのバンクーバー島第二の都市ナナイモに玉川学園ナナイモ校地をオープンした。それ以来、同地にあるマラスピナ大学とはさまざまな交流により親交を深めている。

マラスピナ大学構内にある玉川ガーデン
エリザベス女王が玉川ガーデンを見学(1983年3月10日)

高さ9メートル、最大径1.3メートル、重さは3トンのこのトーテムポールは、バンクーバー島産の樹齢300年を超えるウェスタン・レッド・シーダーを彫り上げたもので、玉川学園発展の願いをこめて、北米ファーストネーションのハイダ族のレック・デビットソンとロバート・デビットソンの兄弟によって、約6か月の歳月をかけて制作された。二人はカナダを代表する芸術家で、彼らの彫刻や版画、グラフィックアートは国際的にも評価が高く、カナダ国内の博物館にも数多く展示されている。このトーテムポールは、1980(昭和55)年12月6日に完成し、24日にバンクーバーから船に乗り、12日かけて1981(昭和56)年1月5日に東京港へ。さらに5日かけて1月10日に玉川学園キャンパスに到着。献納式のために来日したデビットソン兄弟の手により、1月18日・19日の両日を使って最終的な仕上げが行われた。そして、横にして運んで来たトーテムポールを立てるためにクレーンが使用された。

図柄は上より首長の帽子をつけた男、主紋章の一羽の鷲、唇飾りをつけた身分の高い女、鶏、蛙、ビーバー他の順に彫られている。首長の帽子をつけた男の帽子がリングハットではないので族長ではないのかもしれない。ビーバーの尾っぽのところに彫られている顔は作者の一人という可能性がある。鷲は氏族の紋章であるが、鶏と蛙はカエルの復讐のモチーフであると考えられる。これほど本格的なトーテムポールは世界でも数少なく、日本では初めて。そのため、玉川学園のトーテムポールは、『トーテムポール世界紀行』(浅井晃著)にも世界の代表的なトーテムポールの一つとして紹介されている。

『全人』第678号に次のような記述がある。

トーテムポールには先住民族の伝説、神秘、自然などに関する物語が彫刻される。その彫刻の表現によって、その村の由来などが読み取れるのだそうである。本学のトーテムポールはカナダ・ハイダ族のタカ族の文化を刻んでいるとのこと。

マラスピナ大学からの寄贈が決まったトーテムポール。その設置場所について、児童、生徒、学生、教職員に希望を調査。当時正門近くにあった幼稚部周辺をはじめ聖山、三角点(経塚山)、本部付近、玉川池の真ん中の島、新しくできる記念グラウンド周辺などが希望としてあがった。結果的には、現在の屋内プール前広場の植え込みの中に建てられることに決定。

2.トーテムポール献納式

トーテムポール献納式は、1981(昭和56)年1月19日午前11時から屋内プール前広場において行われた。献納式には、マラスピナ大学長シルベスター氏、同大学評議会議長ハモンド氏、カナダ大使代理ルイス氏、デビットソン兄弟、ナナイモ市長ネイ氏らが来日し参加。玉川側からは小原哲郎学長はじめ各部長、それに小学部生・中学部生・高等部生の代表約300名が参加した。

ファンファーレの演奏で開会。高等部ブラスバンドの演奏でカナダ国歌と日本国歌を斉唱。シルベスター学長と小原哲郎学長によるテープカットの後、シルベスター学長が贈呈の挨拶。それを受けて小原学長が感謝のことば。カナダ大使のメッセージを駐日カナダ大使館ルイス二等書記官が代読。学生歌を合唱した後、ナナイモ市長ネイ氏のユーモラスな祝辞。つづいてデビットソン兄弟による制作者の挨拶のことばと踊り。現地部族の古来からのしきたりに従い、鳥の羽根の冠をかむり、インディアンの民族服をまとった兄者がトーテムポールの前でタカの鳴き声をたて、丸い木枠に皮を張った太鼓をたたく弟のリズムに乗って、素朴なインディアンダンスを踊り、トーテムポールに魂が入れられる。建立式にはプレゼントをするしきたりがあるそうで、出席者にはハイダ版画シートが一枚ずつ配られる。トーテムポール同様、人間や動物、自然が巧みにデフォルメされ、赤と黒、あるいは青と黒で彩られた美しいハイダ版画シートであった。そして、小学部生、中学部生による感謝のことばと、小・中・高等部生からのシルベスター学長とデビットソン兄弟への花束贈呈。最後に全員で第九「歓喜の歌」を合唱して、閉会となった。

参考文献

  • 小原哲郎監修『全人教育』第391号 玉川大学出版部 1981年
  • 小原芳明監修『全人』第802号 玉川大学出版部 2016年
  • 白柳弘幸「故きを温ねて」(『全人』第678号 玉川大学出版部 2005年 に所収)
  • パンフレット「玉川イーグル クレスト トーテムポール」 1981年
  • 『玉川学園の教育活動』 玉川学園 2008年
  • 『玉川教育』 玉川大学出版部 1993年
  • 浅井晃著『トーテムポール世界紀行』 ミリオン書房 1996年

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