『全人』2011年10月号 No.754より

• 京都大学理学部長の重責を担う現在も、アフリカへのフィールドワークを続ける山極寿一先生

  トンネルのような薮を通ってそっと顔を出すと、目の前にゴリラたちがいた。真ん中に大きなオスが腕を組んですわっていて、まわりに子どもたちがたくさんいる。みんないっせいに私を見て凍りついたように動かない。
  だめだ、と私は思った。このままでは飛びかかられる。頭が真っ白になった。ドラミングと大きな咆哮を私は覚悟した。でも、そうはならなかった。そのとき、オスが穏やかな低い声で、グフームとうなったのである。まるで呪いが解かれたように、ゴリラの子どもたちは声をあげて遊びはじめた。まるで私の姿など見なかったように、もう気にもしない。張りつめた空気が一瞬にして解けたのだ。私の能力が認められたわけではない。ゴリラのオスの判断が私の運命を決めたのだ。
  それから私はゴリラの群れの一員になるための修行を始めた。

  「ゴリラの国で学んだこと」 山極寿一 p4

• 通信教育部で小学校教員免許を取得、定年まで務めた後、2009年から3年連続サハラマラソンを完走した飯田徳子さん

  どうして走るのか。よく問われますが、自分の頑張っている姿を見せたいからなんだと思います。忙しくて幼かった娘たちには何も教えられませんでした。だから今、大人になった娘たちに「続ければ何でもできる」ことを伝えたい。かつての教え子たちにも、先生は今も「気合い」と「努力」を実行しているよ、と。
  昨年、つくばマラソンに出たとき、1年生で受け持った教え子から手紙をもらいました。サハラマラソンの完走のニュースを知り、「昔と変わらずに頑張っている先生の姿に、自分も頑張ろうと思った」とありました。
  小さな子どもに無理を言う先生だったかもしれません。でも、続けることが大きな力になる、と証明できていた気がしてうれしかったですね。来年のサハラマラソンももちろん出場するつもりです。

  「玉川の先輩を訪ねて56 飯田徳子」 p28

ページトップへ戻る

目次

• ゴリラの国で学んだこと
  山極寿一
• 学園ニュース
  ［大学］玉川教育フォーラム2011
  ［大学］芸術学部・PAF2011＆まちだ光の水族館展開催
  ［K-12］高学年吹奏楽団・第15回世界吹奏楽大会…長谷部 啓
• なるほど！ 日本語 2
  金田一秀穂「チョーやばくナイ？」若者言葉は本当に日本語の乱れ？
• 学びの時間 4
  文学部比較文化学科 藤田裕二 研究室
• 玉川の丘めぐり 15
  ブック来園80年「デンマーク体操」…白柳弘幸
• Book Review 84
  『トランス・サイエンスの時代』…黒田 潔
• 子どもの本で世界をまわる 15
  〈アフガニスタン〉長倉洋海
• 生涯学べ 4
  地域に根ざす公共図書館司書
  --新庄市立図書館主任司書／郷野目香織
• 課外活動訪問 15
  ギターアンサンブル部＝ソロでは味わえない音色を追究
• 玉川の先輩を訪ねて 56
  飯田徳子 市民ランナー
• 小児科ドクターの診療カルテから 4
  子どものアレルギーとペット
• Career Navigation '11
  仕事インタビュー〈証券・総務〉＆イベントスケジュール
• 学外施設定期便 15
  海が賑わう季節〈鹿児島県／久志〉…清川一真
• 同窓会インフォメーション
  Welcome!! ホームカミングデー
• 小原哲郎名誉総長を追悼して
  玉川学園の経済的基盤を確実にされた功労者…石橋哲成
  小原哲郎先生の思い出…座間真一郎
• 学園日誌…小原芳明
• Photos of the Day│小原哲郎名誉総長「お別れの会」
• 平成23年度 玉川大学 第九演奏会のご案内
• TUCS 玉川大学卒業生のための就職支援活動
• 学園スケジュール│玉川大学・K-12のイベントと入試に関するご案内
• 表紙の風景│Universe 塩原晴菜 【作】
• 教育博物館館蔵資料紹介 236│伊藤東涯筆蹟…菅野和郎
• TAMAGAWA HEADLINES 学園近況
• 玉川の仲間たち│ヤイトバナ…畑中喜秋