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科学するTAMAGAWA 世界初!植物ミトコンドリアのゲノム編集に成功した農学部・肥塚信也教授に聞く(前編)

2019.10.11

最先端をめざす研究者に求められること

2019年7月、玉川大学農学部生産農学科 肥塚信也教授らの研究グループが植物ミトコンドリアのゲノム編集に成功して大きなニュースとなりました。
ゲノムとは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)の合成語で、DNAに含まれる全遺伝情報のこと。またゲノム編集とは、特定の形質を決める遺伝子の配列に切断や挿入を導入し改変する最新の遺伝子工学技術のことです。今世紀になってゲノム編集技術は目覚ましく進展しています。動物ミトコンドリアでのゲノム編集はこれまでにも例がありましたが、植物ミトコンドリアでは今回が世界初の快挙です。

この研究は肥塚教授と東京大学大学院農学生命科学研究科の有村慎一准教授、九州大学大学院農学研究院の風間智彦准教授※1らによる研究グループが取り組んでいたもので、イネやナタネの植物細胞の中にあるミトコンドリア内の花粉を作らない性質(細胞質雄性不稔)の原因遺伝子を特定、ミトコンドリアをゲノム編集することにより花粉を作る機能を回復させることに成功しました。肥塚教授によると「今回の研究で動物と植物でミトコンドリアゲノムの修復のしくみが異なることもわかってきた」そうです。

「今回の研究で協力した2人(有村准教授、風間准教授)とは約20年の付き合い。お互いの研究に興味とシンパシーを抱いていたことが共同研究につながりました」。
約5年前、有村准教授の研究にナタネに詳しい肥塚教授とイネに詳しい風間准教授が合流することで共同研究プロジェクトがスタートしました。
「大きな研究は決して一人ではできません。今回の研究も私たち3人を中心に多くの研究者が力を合わせて取り組んだからこそ、成果を出すことができたと思っています。もちろん研究者個人の研究力を向上させることも重要ですが、現代の研究者にとっては研究上の問題を共有し、話し合える仲間をつくることもとても大切です」。

遺伝子組換え植物育成室※2にて

研究者としての喜びは「誰もがやっていなかったアプローチで研究を成功させ、成果を出すことにある」と話す肥塚教授。しかし、その喜びに達するためには「毎日コツコツと地道な作業を積み重ねていくこと」が必要不可欠。肥塚教授はこれを「スポーツのトレーニングと同じ」だと話します。
「スポーツ選手が少しずつタイムを縮めていくように、日々の小さな成果を大切にしながら研究に取り組むことが研究者に求められます」。そして自分の知的好奇心を満たすことだけでなく、社会に貢献するというモチベーションを持つことが重要だそうです。
「特に遺伝子に関する研究は生命倫理などに関わります。社会のコンセンサスを得るために、自分の研究が広く理解されるようわかりやすく説明できる能力も必要なのです。4年生や大学院生では、実験データを正確に記録しながら、自分の研究成果を正しく客観的に表現するスキルを身につけることが必須です」。

次に肥塚教授がめざしているのは、植物ミトコンドリアの形質転換(外部からDNAを導入し、遺伝的性質を変える技術)。農作物などの新しい品種をつくりだす技術を確立し、未来の農業と社会に貢献したいと語ってくれました。

  • 1論文発表時の所属は、東北大学大学院農学研究科
  • 2日照時間や気温、湿度などコントロールすることができる。遺伝子組換え植物を栽培するため花粉などが外部へ漏出しない構造になっている。

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