世界初!植物ミトコンドリアのゲノム編集に成功

2019.07.09

農学部生産農学科の肥塚信也教授、東北大学大学院農学研究科の風間智彦助教、東京大学大学院農学生命科学研究科の有村慎一准教授の研究グループは、東京工業大学生命理工学院、国立遺伝学研究所と共同で,ゲノム編集技術TALEN(注1)を用いて、世界で初めて植物(イネとナタネ)のミトコンドリアゲノムのゲノム編集に成功し、その成果を国際誌Nature Plants(日本時間2019年7月9日1:00付)に発表しました。

研究グループは、野菜や穀物のF1ハイブリット(注2)種子生産の場で広く利用されている細胞質雄性不稔性(注3)の形質を担う遺伝子をゲノム編集し壊すことで、花粉の機能が回復して種子が実ることを実証しました。さらに、ゲノム編集されたミトコンドリアゲノムは、その修復過程によってゲノム構造を大きく変化させながらも,他の遺伝子の機能が変わらず維持されていることも明らかになりました。

今回の研究成果によって、これまで解析が困難であった植物ミトコンドリアゲノムの直接的な改変による解析が可能となり、今後の基礎科学的な新知見への貢献と農業生産分野や新品種育成等での応用展開が期待されます。

図1.ミトコンドリアゲノム編集実験の概略図
図2.雄性不稔ナタネ(A)と
ミトコンドリアゲノム編集ナタネ(B)の花の形態
未発達な雄蕊(A)と発達した雄蕊(B)、花粉が観察される。スケールバーは1cmを示す。
図3.雄性不稔イネとミトコンドリアゲノム編集イネ
雄性不稔イネ(右)は、直立している。一方、ミトコンドリアゲノム編集イネ(左)は、種子が実り穂が垂れている(矢印)。
  • (注1)
    TALEN (Transcription Activator-Like Effector Nuclease):DNAの任意の塩基配列を認識して切断することができる人工制限酵素。
  • (注2)
    F1ハイブリッド:雑種強勢(遠縁の2系統を交雑した第一代は両親系統を凌ぐ生育をみせる現象)を利用した育種・農業生産方法のこと。
  • (注3)
    細胞質雄性不稔性:核ゲノムの遺伝子ではなく、細胞質ゲノム(ミトコンドリアゲノム)に原因をもつ雄性不稔のこと。機能ある花粉が生産されない。
掲載誌 Nature Plants
論文タイトル Curing cytoplasmic male sterility via TALEN-mediated mitochondrial genome editing.
DOI番号 10.1038/s41477-019-0459-z
著者 T. Kazama*, M. Okuno, Y. Watari, S. Yanase, C. Koizuka, Y. Tsuruta, H. Sugaya, A. Toyoda, T. Itoh, N. Tsutsumi, K. Toriyama, N. Koizuka*, S. Arimura* (* Corresponding authors)

本成果について、以下の東京大学 大学院農学生命科学研究科および東北大学 大学院農学研究科・農学部のHPもご参照ください。