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玉川大学大学院教育学研究科IB研究コース・カメダクインシー講師――玉川学園のIB教育の環境整備に尽力vol.1――

2018.03.14

玉川大学大学院教育学研究科では、2014年に日本で初めてIB教員養成のプログラムを開設しました。カメダクインシー講師は、これまで玉川学園IBクラスの教科担任、カリキュラム開発に携わり、さらには日本国際バカロレアの一員として日本でのIB普及に活躍しています。今回、カメダ講師が玉川学園に着任するまでの経緯や、IB教員養成に向ける情熱などをインタビュー。3回に分けて掲載します。第1回目は玉川学園IBクラスに着任し、IB教員として活躍するまでを紹介します。

カナダで生まれ育ち、日本で就職。両国の間で揺れるアイデンティティ

玉川学園が世界を舞台に活躍できる次世代のリーダーを育成する「国際バカロレア(IB)」をスタートさせたのは、2007年4月。日本で2番目のIBクラスを持つ一条校として、7年生でIBクラスを導入しました。2009年にMYP(Middle Years Programme)認定校に、2010年にはDP(Diploma Programme)認定校となり、今やIB教育は玉川学園にすっかり根づいています。

一方、日本政府が2013年6月に閣議決定した「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」に基づいて、2018年までにIB認定校(DP)を200校に大幅増加させることを目標にしていますが、IB教育を担うIB教員の養成は喫緊の課題です。玉川大学では、大学院教育学研究科修士課程に「IB研究コース」を開設し、国内における先がけとして2014年4月からIB教員養成を行っています。

2008年に玉川学園にIB教員として着任したカメダクインシー講師は、教科を担当しつつ、IBクラスのカリキュラム開発にも尽力。現在は大学院教育学研究科IB研究コースの講師として、大学院生の指導にあたっています。そこで、玉川学園に着任するまでの経緯を語っていただきました。

「カナダへ移住した日本人の両親のもとで生まれ育ち、トロント大学理学部天体物理学科を卒業しました。天文学にはもともと興味をもっていたのですが、進学するきっかけは、高校の時にオンタリオ科学センターで出会ったメンターに影響を受けたから。そのメンターは天文学者でテレビでも活躍している一方で、ブルーズバンド活動もしていて憧れの存在でした。

卒業後の進路は、大学院まで進んでも天文学での就職は厳しいので、一般企業への就職を目指しました。『カナダで就職したら、なかなか日本へ行けなくなる』と両親からのアドバイスもあり、日本での就職を決意。そもそも両親は日本人、家庭では日本語を話し、自分自身は『日本人だ』というアイデンティティをもっていたので、日本でチャレンジしたいとう気持ちがあったのです。

ある大手電機メーカーの研究開発職として契約社員で入社し、日々データを分析して、新しい商品の開発に役立てる情報を提供してきました。正社員登用の声もかかったのですが、日々データとにらめっこしている自分にやがて違和感を抱きはじめました。同時に日本の社会の中で『自分は日本人である』というアイデンティティが少しずつ揺らぎ、『僕はやっぱりカナダ人なのかな』と思うこともたびたびあって、カナダへ戻ることにしたのです」

縁あって玉川学園に着任し、IB教育と出会う


カナダで仕事を探している時、偶然にもオンタリオ科学センターで高校3年生を対象にした特殊学校の指導担当者の募集を知ります。教員志望ではなかったものの「おもしろいのかも」と思い応募。みごと合格して、天文学の知識を活かせるプラネタリウムで子供たちを指導することになりました。
「授業中にレーザーポインターでいたずらする生徒もたくさんいて、指導はなかなかたいへんでしたが、生徒たちとのふれあいは、とても楽しかったんです。それならば教員免許を取ろうと、トロントで勉強し始めました。ところが、オーストラリアのメルボルンにもプラネタリウムを併設する科学博物館があり、そこで仕事をしながら同国ヴィクトリア州の教員免許を取ってみたら、という誘いがあったので、カナダでも日本でもない国で仕事をするのもいいと思い、オーストラリア行きを決めました。そして教員免許を取得して、理科と数学の専任教員を務めました。その後、再び日本で仕事をしようと考えていた時に玉川学園のIB教員募集があり、これまでの経験が評価され、2008年1月に玉川学園の教員になりました。

IB教員資格は着任後に取得。その後、カメダ講師はIBクラスの理科と数学を担当することになりました。
「ちょうど7年生が修了する頃でしたが、当時のIBの外国人教員は3人。まだまだIBの認知度がなく、大変な時もありました」とカメダ講師は当時を思い出し、苦笑いしていました。

IBクラス理科の授業(2009年)

時を重ねて、カメダ講師は授業を担当しつつ、次第にカリキュラム開発担当も兼務することになり、全体をサポートする立場になっていきました。
「IB教育は、玉川学園の全人教育との共通点があり、一つの教育方法として優れています。自分自身がIBをしっかりと学び、玉川学園にふさわしいカリキュラムを整備し、賛同者を増やしていきたいと考えるようになりました」

また、団体組織である「国際バカロレア」からの依頼で、日本にIBを広めるため、教員研修を日本語で行えるワークショップリーダーとしての役割を求められ、トレーニングを受けることを決意。
「国際バカロレアの本部の担当者が玉川学園での学内研修会を開催するために来校していたので、その機会を利用してトレーニングを受けることにしました。玉川だけでなく、IBを導入した学校にも声をかけ、その時に来てくださったのが、現在、玉川大学大学院教育学研究科IB研究コースの星野あゆみ教授。その頃からのご縁が今に続いています」

カメダ講師の活動が広がるのと並行して、玉川学園のIB教員も次第に増え、IBプログラムの規模が大きくなっていきました。学園内のIB勉強会を数多く開き、カリキュラムの開発を積極的に進めました。
「玉川学園のIBを成功させるためには、IB生になった生徒たちに充実した教育を提供しなければならず、そのためには学園内のさまざまな先生や保護者の理解と協力が必要です。IB教育が示す批判的思考力、国際的な視野を備えた人材育成の考え方は、玉川学園の創立者小原國芳が考えた『全人教育』につながっています。この根本にあるものを理解してもらうために、研修を実際の指導の実践に繋げ、いろんな教科の先生方と協同で学び合い、カリキュラムを創っていくことが重要です。より多くの先生方が積極的、意欲的に参加してくれるようになるには、先生にとっても自主性と創造性のある学びの環境を学校が提供する必要性があります。失敗から学び、新たな行動・実践に繋げる、このプロセスがいずれは、新しいものを生み出す力になり、教員も生涯学習者であることを体感するきっかけになると信じています」

玉川学園でIBへの理解が進み、浸透しつつあることを実感したカメダ講師。困難を乗り越えながら、MYP・DP認定校へと歩みを進めていったのです。

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