玉川大学大学院教育学研究科IB研究コース・カメダクインシー講師――玉川学園のIB教育の環境整備に尽力vol.3――

2018.03.26

玉川大学大学院教育学研究科では、2014年に日本で初めてIB教員養成のプログラムを開設しました。カメダクインシー講師は、これまで玉川学園IBクラスの教科担当、カリキュラム開発に携わり、さらには日本国際バカロレアの一員として日本でのIB普及に活躍しています。カメダ講師が玉川学園に着任するまでの経緯や、IB教員養成に向ける情熱などを3回にわけて連載。最終回は今後のIB教員養成について、カメダ講師の果たすべき役割とともに紹介します。

教員の視点だけでなく、生徒や保護者の視点、学校管理者の視点を合わせ持つことを指導

「IBワークショップ」の指導風景

カメダクインシー講師は、玉川学園のIBクラスで理科や数学を担当しつつ、日本でIBを普及させるための役割も担っていました。その活動範囲はますます広がり、IBの採用を検討している世界各国の学校へワークショップリーダーとして出向いて指導する機会も増えました。

「2015年から『日本国際バカロレア教育専門官』として、IBを採用したものの認定を受けるのに難航している学校からの依頼を受け、学校に出向いてサポートする仕事をするようになりました。数多くの学校現場をサポートして学んだことは、IB導入に意欲を燃やす先生一人だけでは、学校を変えることはできない、ということです。生徒を育てるように、IBのリーダーとなれる教員を育てる『人材育成』が重要なのです。教員の協働性を必要とする『プロフェッショナル・ラーニング・コミュニティ(専門職の学習共同体)』のような環境を学内につくり、教員同士で授業をつくり、批評し合い改善していく。そうして作り上げた熱意ある授業は、生徒の学びの意欲を刺激します。結果、最終的には生徒の学習成果につながっているという研究もたくさんあります。玉川学園とIBが理想とする教育を提供するには、IB教員養成が必須のことだと、世界各国そして日本の学校現場を見て分かったことでした」

2014年、玉川大学では、日本で初めて大学院の修士課程でIB教員養成コースを開設しました。日本政府が2020年までにIB認定校を200校に増設することを目標に掲げ、受験生や保護者の間でもIBへの関心が非常に高まっているものの、IBを教える教員の不足は喫緊の問題となっています。 

「IBのカリキュラム・モデルについて学ぶのであれば、資料を読めば最低限のことは分かります。大学院ではIB教員の立場に立ってのカリキュラムの設計、教科の単元プランや評価物の作成します。肝心なのは、授業として3,4回実践して院生同士で教え合うこと。そして、教え合って終わりではなく、フィードバックも重要です。評価目標が細かく設定されているので、それを元につねに振り返りとフィードバックを提供する環境をつくっています。他教科の教員同士でもフィードバックし合えることが重要で、IBのフレームワークを教えながら、IB教員に必要なスキルアップを目指したプログラムをデザインしています」

「また、ただ教える知識やスキルを指導するだけでなく、管理者の視点、保護者の視点、IB認定校としての学校コミュニティの視点から学校を見ることができるIB教員を養成したいと考えています。自分が構築した単元について実際にアクティビティを考えて実践することで、生徒の立場として活動を実感できるようにしています。さらに、自分の指導についての評価、他の先生の評価、IB認定校としての方向性や評価など、全体を俯瞰できる視点も育てたいのです」

教育学研究科「IB研究コース」の授業風景

「IB研究コース」がスタートして4年目を迎え、学内外からの認知度が高まっています。
「現在、大学院生として学んでいるのは、IB教員を目指す学部生や現職の教員だけでなく、教員免許を保持しているけれど現場から離れている人やIBに関心を寄せる人などで、さまざまです。IBが、社会が求めている人材育成の一つの教育法として関心を集めていることの現れです。ただ、認定校を目指す候補校や導入を検討している学校が教員を進んで派遣するケースは少ない。各学校が時間的な余裕も、金銭的な余裕もないことが考えられます。何らかの助成のようなサポート体制があれば、かなり状況は変わると思います」と話しました。

他国が真似のできない日本らしさを活かしたIBを広げていきたい

「真の国際人」を育てるIB。そこで指導するIB教員は、必ずしも英語が得意である必要はないといいます。

「IBには国際的な視野を育てるプログラムがあり、この国際的な視野とは、異文化理解のことです。現在学んでいる大学院生は、海外へ出たことがない人がほとんどです。異文化理解という点で、たとえば生まれ育った母国ともう一つの国で生活するようなことがなくても、それはIB教員のマイナスになりません。たとえば、日本の中でも出身が関東と関西では物事の見方や捉え方が異なる場合もありますし、東京の西部と東部でも同じことが言えます。人間は生まれ育った環境の文化的背景がアイデンティティとつながっていきます。私は『ラベル』を貼る習慣を止めて、自分はどういう考え方を持っているのかを考えさせる授業のなかで問いかけて、考えてもらうようにしています」

「生まれ育った環境の中で身に付いた価値観、見方は、自分のアイデンティティを構築しているので大事にすべきことです。しかし、さまざまな価値観、見方があり、どれが真実かではなく、いろいろな真実があるのかもしれないことを理解してほしいと思います。常に自分自身に問いかけてほしい。他の国から見たら、善や悪に分けられないこともあるということを。一方で、自分の今の見方は、日本人であることに根付いているんだと、自分自身が理解することも必要です」

カメダ講師はIBと出会い、IBの教員として教え、今ではIB教員養成を担うまでになりました。学内にとどまらず、日本でのIB普及に奔走していると、さまざまな困難があったことでしょう。最後に、それらを乗り越えるパワーの源はなんだったのかを聞きました。

「IBが玉川学園で、日本の学校で根付いてほしいと、『使命感』のように考えているところがあります。そんな中での困難を突破する力を与えてくれるのが、生徒からのエネルギーです。生徒たちが授業を待っている。そのみんなのために、よい授業をつくりたいのです。また、日本の「モノを大切する心」「周りを気遣う心」あるいは「職人魂」などは、他国では簡単に真似ができないところです。その良さを維持できる国際人を育成する環境を作っていきたい。日本らしさを活かしたIBですね。英語はツールとして大事ですが、まずは母国を大切に、日本人としてのアイデンティティを維持しながら、新たな発展につながるような学校を展開していきたいと考えています。今は、自分の持っているすべてのノウハウを提供することが、私の役割だと考えています」

強い情熱でIBの普及、教員の養成に尽力しているカメダ講師。玉川大学が先鞭をつけたIB教員養成が、大きく広がっていくことを期待しています。

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