「工・農・芸融合価値創出プロジェクト授業(PBL授業)」第11回授業はサイトスペシフィックアートを体験

2019.07.19

2019年度春学期の「工・農・芸融合価値創出プロジェクト授業(Project Based Learning以下、PBL授業)」も終盤に差し掛かっています。6月19日に行われた第11回の授業は、現代美術作家としても活躍する芸術学部メディア・デザイン学科の藤枝由美子教授が担当。場所を芸術学部がある3号館に移し、学生の鑑賞体験を交えた現代美術の本質に迫る講義を行いました。

既存の概念にとらわれない現代美術

「サイトスペシフィックアート〜私たちは何を体験しているのか」と題した講義は、藤枝教授の自己紹介と作品紹介を兼ねて、軽妙な語り口で「現代美術とは何か?」という話題から始まりました。第2次世界大戦後に盛んになった現代美術(Contemporary Art)は、既存の芸術の概念にとらわれない表現活動。絵画・彫刻・映像・写真などのジャンルを超えて「それがアートであると説明できれば、現代美術」という自由な芸術表現です。あまりにも自由なだけに「難解さ」を感じることも多い現代美術ですが、藤枝教授は自作を紹介しながら、各作品の表現意図と楽しみ方についてわかりやすく解説しました。

その中で藤枝教授が学生時代に制作した「三つの窓」という彫刻オブジェ作品を使った約30年前のアイドル歌手のプロモーションビデオも上映され、教室の学生からはどよめきの声が……この作品はテレビ番組の背景セットにも使われたということです。さらに藤枝教授は「mother」と題した樹脂製のイスの背もたれに鏡を埋め込んだ自作を紹介しながら、本日のメインテーマである「サイトスペシフィックアート」、すなわち「場所site」に「特有specific」の「芸術作品art」という考え方について解説しました。特定の場所に存在させるために制作される「サイトスペシフィックアート」は、展示される場の特性、あるいは屋外展示の場合は自然環境などを踏まえて制作します。その手法として空間全体を作品体験として構成するインスタレーション(展示・仮設)・アートの手法が使われることもあります。

見慣れたキャンパスの光景が……カメラオブスキュラ体験

一通りの説明が終わり、「では、今日はみなさんにサイトスペシフィックな鑑賞体験をしていただきます」と微笑む藤枝教授。約10人ずつが2グループに分かれ、交代で同じフロアの研究室に移動しました。研究室は窓に黒いシートが張られ、照明を消すと真っ暗になってしまいます。しかし目が暗闇に慣れてくると、窓と反対側の白壁にぼんやりと映る影が見えてきました。それも見覚えのあるシルエットが……なんと窓の外にある樹木と校舎(2号館)でした。黒いシートには小さな穴が空けられており、そこからピンホールカメラの原理で外の光景が逆さまになって白壁に映っていたのです。カメラオブスキュラとも呼ばれるこの投影手法はフェルメールなどの画家が素描のために用いていたとも言われています。ごくシンプルな仕掛けですが、その場でしか得られないまさにサイトスペシフィックなアート鑑賞体験となりました。

全員がカメラオブスキュラ体験を終えた後、市立小樽美術館に出展中の藤枝教授のインスタレーション作品や、屋外の自然環境などを利用したロバート・スミッソン(米国)、ジェームス・タレル(米国)、アンディ・ゴールズワジー(英国)、川俣正(日本)らのスケールが大きい作品を紹介。それぞれの作品に込められた作為や思いについて、作家のパーソナリティを交えて解説しました。

芸術学部以外の受講生にとっては、ほとんど初めて触れる現代美術の世界。紹介された作品は発想豊かで斬新なものから想像を超えるスケールの大きい作品まで。驚くような作品の数々を藤枝教授が魅力たっぷりに話し、それに刺激を受けてうなずく学生たち。「玉川大学の新しい価値発信に貢献する『STREAM Hall 2019 新食堂』を提案せよ!」というPBL授業のミッション実現に向けた大きなヒントを得たようでした。

【授業を終えて】

芸術学部メディア・デザイン学科
藤枝由美子 教授

芸術学部以外の農学部や工学部の学生たちに、なかなか説明しにくい現代美術のお話をするということで、「どんな切り口にしよう?」と悩みました。その結果、やはり芸術は体験することが大切だと思い、講義に鑑賞体験を取り入れることにしたのです。それもシンプルな手法でインパクトのある芸術体験をしてほしいと考え、カメラ・オブスキュラの手法を使ってみました。学生のみなさんが白壁に映った投影に素直に驚いてくれてほんとうに良かったです。講義も熱心に聞いてくれて、私としても非常に有意義な体験となりました。この授業の課題である新食堂の提案の手がかりになればと思います。また、これをきっかけに一人でも多くの学生が現代美術作品を身近に感じ接してくれるようになればうれしいです。

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