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教育学部で東日本大震災被災者の方による特別講演を開催。被災地食材を使い、学食メニューも開発しました。

2020.01.20

12月12日(木)、玉川大学教育学部臨床心理学ゼミでは、昨年に引き続き特別講演会「『東日本大震災を経験した方からのメッセージ』 ―経験者と支援者 2つの立場を通してー」を開催しました。臨床心理学ゼミを主宰する原田眞理教授は、阪神淡路大震災以来震災支援をしており、東日本大震災では在京避難者の方々、福島県内の避難者の方々の「こころのケア」を中心とした被災者支援を行っています。避難者のサロンでの心理相談などを担当するとともにゼミの活動として福島県双葉郡川内村を訪れ、小学校での学習支援などにも取り組んでいます。こうした活動の中で出会ったのが、在京避難者として町田市で暮らし、今回もご登壇いただく木幡四郎さんと武田恒男さんです。

2019年9月原田ゼミ 川内小学校にて

本年度は第一部として昨年同様にお二人による講演、第二部として元川内村総務課長で前環境省福島環境再生事務所課長補佐、そして現在は一般社団法人かわうちラボ専務理事の井出寿一さんによる「原発事故による避難対応と教訓、帰村後の村づくりの現状」と題した講演も行われました。この日の講演会には近藤洋子教授が主宰する「子どものwell-beingゼミ」と中村香教授が主宰する「生涯学習ゼミ」の学生も参加。第一部は各ゼミの3年生が、第二部は4年生が聴講しました。

第一部で最初に登壇したのは木幡さんです。福島県双葉郡浪江町にあった自宅は東京電力福島第一原子力発電所から約8キロの場所で、震災以降は避難生活を続けている木幡さん。現在は町田市在住で、同じ在京避難を余儀なくされている人たちのために何か行動しようとの思いから、町田市で避難生活を送る人たちと「ふるさとを想う会」を設立。会の代表として、さまざまな活動を行っています。「浪江町には避難が解除された地域も一部ありますが、通りを一つ隔てて帰れない場所があるような状況では、なかなか戻ることはできません」と、街の現状を語る木幡さん。「絆とは与えられるものではなく、お互いを想い、助け合うことで生まれるものです。今日集まってくださった学生の皆さんの多くは教育の道に進まれると思いますが、ぜひそうしたことを伝えていってほしいと思います」と学生にメッセージを送りました。

次に登壇した武田さんは岩手県陸前高田市出身。被災直後に町田市に避難して来られ、現在は木幡さんと一緒に活動するほか、陸前高田市を舞台にした映画の上映会を開催するなど、精力的に活動しています。また趣味が写真撮影ということもあり、震災当日の津波の動画や、その後1ヵ月にわたる被災地の状況を撮影。この日は撮りためた写真の一部を見せてくださいました。

講演後、木幡さん、武田さんと同じように町田市に避難された方々にも参加いただき、グループに分かれてディスカッションを行いました。各グループからは「震災を知らない子供たちに正しく伝えていくために何をすべきかを、これからの大学生活で考えたい」、「教育現場では学科横断的にさまざまな授業で震災について伝えることで、子供たちの理解を深めていきたい」、「震災が起きたときに正しい判断ができるよう、周辺環境の確認や情報の共有を徹底したい」、「震災の出来事は風化してしまい、風評被害ばかりが残る。被災者の方の体験談を伝えることが、風化させないためにも大切」などの意見が聞かれました。

第二部では井出さんが登壇し、行政の職員として震災当日や避難生活をどのように過ごしたのかを話してくださいました。井出さんの故郷である川内村があるのは福島県双葉郡。内陸部の山間地に位置しており、津波の被害はありませんでした。「ただ、同じ双葉郡に東京電力福島第一原子力発電所があったため放射性物質が飛散し、避難を余儀なくされたのです」と井出さん。震災直後は隣の富岡町の住民を受け入れたり、その後は川内村の村民を郡山に避難させたりと、自らも被災者でありながら行政の職員として住民の命を守る仕事に携わってきました。「災害時のマニュアルはありましたが隣町の住民が全員避難してくるなど、全く想定しない事態が数多く起こりました。そしてそうした事態に対して、常に即断即決をしていかなければなりませんでした」。

2012年には行政機能を川内村に戻し、2016年には全域避難解除となりました。「避難解除から3年目で、農業も再開しました。野菜工場を建設し、水耕栽培での野菜作りにも取り組んでいます。また新たな試みとしてブドウを栽培し、ワインの製造も行う予定です」と、川内村の現状について井出さんは語ります。農業以外にも再生可能エネルギーの導入や企業誘致も積極的に行っているそうです。また現在井出さんが所属する一般社団法人かわうちラボではマラソン大会なども企画し、定住および交流人口の増大をめざしています。「私は常に夢をもって、いろいろなことに取り組んできました」と井出さん。「皆さんも夢や希望をもつことが、一番大事だと思います。これから教師になられると思いますが、夢や希望をもっていれば、必ずいい結果が出ると思います」と、学生に向けてエールを送りました。

この講演に合わせて、12月10日から13日かけて大学教育棟 2014内のCafeteria Sakufuでは、川内村とコラボレーションした学食メニューを提供。木幡さん、武田さんをはじめ、ご協力いただいた方々に召し上がっていただきました。これは原田ゼミの学生が研修で川内村を訪れた際に、農政係の職員の人たちと意見交換を行い、準備を進めてきたものです。特産品である養殖イワナやそば粉、大根などを使用し、学食にメニュー開発を依頼。4日間数量限定の日替わりで提供され、毎日完売となりました。

第二部の井出さんの講演を聞き、学食メニューにも携わった原田ゼミの4年生に話を聞いてみました。

「お話をうかがって、村が直面してきた震災の状況などを知ることができ、大変勉強になりました。まだ課題はたくさんあると思いますが、村長や井出さんが将来について語られる時の表情が印象的でとても明るく、夢や希望をもたれていると感じました。学食メニューに関しては、自分たちの活動が形となり、多くの学生に味わってもらえたことが純粋に嬉しいです(井村早野花さん)」。

「東日本大震災が起きたときは中学生の時で、四国に住んでいました。あまり実感が湧かなかったのですが、原田ゼミで川内村を訪れたことにより、さまざまな体験談を聞くことができました。ここで得た知識や教訓を、教育の現場で活かしていかなければと思っています。学食メニューに関しては、多くの方の協力でできあがったものを学生に味わってもらい、少しでも被災地について考える機会を提供できたかなと思います。いい循環ができていると感じました(多田裕貴さん)」。

「高校時代に復興支援で宮城へ行ったことがあり、もともと復興支援活動に関心をもっていました。教育実習のため4年次にはゼミ研修に参加できなかったのですが、ゼミの活動を3年生につないでいくことが大事だと思い、今回の学食メニューにも取り組んできました。メニューを通して震災があったことを学生同士で考えてもらい、情報を共有する時間になってくれたらうれしく思います(平田今日子さん)」。

東日本大震災で被災した方のお話だけでなく、行政の職員として住民の命を守るために活動した方々のお話も伺うことができた、本年度の特別講演会。9年が過ぎた現在でも避難生活を送る方がおられるのと同時に、東北での復興活動も続いています。また近年は台風などの災害も数多く起こっています。教育学部の学生には、卒業後に教員として震災の記憶を伝え、また災害時に適切な対応を取ることが求められます。木幡さん、武田さん、井出さんのお話を伺って、学生たちもそうした想いを一層強くする時間となりました。

限定メニュー

・12月10日(火) イワナの蒲焼&焼肉丼
・12月11日(水) イワナ天ぷら定食
・12月12日(木) そば粉のすいとん
・12月13日(金) 彩り野菜のアラビアータ(イワナのアヒージョ使用)
・12月10日(火)〜13日(金) 大根カレー

  • 期間中、Cafeteria Sakufuで提供するすべての学食メニュー、お弁当やおにぎりで使用するお米は川内村産、また味噌汁のだしにはイワナのあらを使用。

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