「STREAM Hall 2019」で推進される玉川独自の「ESTEAM教育」とは?

2020.05.15

令和2年度の春学期は新型コロナウィルス感染拡大のため、インターネットによる遠隔授業を実施しています。今後、緊急事態宣言が解除され、キャンパス内での教育活動の安全が確保できしだい、段階的に遠隔授業から対面授業に移行していきます。 同時に今年3月に竣功式を行った「STREAM Hall 2019」も利用開始となります。 "異分野融合のイノベーションを創出する人材育成の場"をコンセプトとする「ESTEAMエリア」の中核施設として、 数々の異分野コラボレーションの舞台となり、機能していくことが期待されています。また、かつてこの場にあった「りんどう食堂」が最上階の展望食堂「Cafeteria Rindo」として復活。さらに学部にかかわらずものづくりを体験できる「メーカーズフロア」やAIロボットの働きを体験できる「ロボットラボ」などもあり、玉川の丘の新しいシンボルとして多くの学生たちが利用する建物となりそうです。

では、今後「STREAM Hall 2019」ではどのような異分野融合が実践されていくのか? 工学部長の相原威教授に話を聞きました。

─玉川学園の「全人教育」の新たな展開である「ESTEAM教育」を推進する「STREAM Hall 2019」が完成しました。まず「ESTEAM教育」とはどのようなものか、またその目指すものについて教えてください。

相原 「ESTEAM教育」のベースとなったのはSTEM教育です。これはS:Science(科学)、T:Technology(技術)、E:Engineering(工学)、M:Mathematics(数学)の頭文字を取ってITとグローバル化に適応した国際競争力を持った人材を多く生み出すための教育モデルで、今世紀になって米国で導入され始めているものです。

玉川大学では小原学長の提唱でこれにArts(芸術・文化)の視点を加え、さらに本学の外国語教育の特色であるELF(「共通の母語を持たない人同士のコミュニケーションに使われる言語」として英語を学修するプログラム)を加えて「ESTEAM教育」としました。
「感性」と「コミュニケーション」という要素が入ったこの教育モデルは多様な価値観が融合することでまったく新しい価値観を生み出し、イノベーションによって社会に貢献できる人材の育成を目指すものです。その"共創"が行われる場が、「STREAM Hall 2019」なのです。

─「STREAM Hall 2019」で学生たちがどのように「ESTEAM教育」と異分野融合を体験できるのかを教えてください。

相原 「ESTEAM教育」はゆくゆくは大学の全学部、さらに玉川学園全体を巻き込んだ形で展開させていくものですが、まずは「ものづくり」という共通項を持つ農学部、工学部、芸術学部の3学部の融合を目指した数々の試みを展開していきます。専門分野が異なる学生が共に学ぶ教育プログラム作りは決して簡単ではありません。しかし、私たちは2019年度春学期に3学部の教員がオムニバス形式で講義に登場し、学部を超えた学生グループが力を合わせてプロジェクトに取り組む「工・農・芸融合価値創出プロジェクト授業(PBL授業)」を開講し、大きな手応えを感じました。2020年度も秋学期に昨年度の成果を踏まえてよりパワーアップした「PBL授業」を行う予定です。

「STREAM Hall 2019」には、学部にかかわらず人が集えるオープンスペースが多く設けられています。こうした空間を利用して学生たちが学部を超えた合同セミナー、共同プロジェクトやイベントを積極的に開催していくよう、私たち教員もさまざまな面で協力していきます。工学部の視点で言えば、芸術学部や農学部の学生とゲームやVRコンテンツ開発、さらにロボットコンテスト開催なども面白いかもしれません。
1階にはオープンなものづくりスペース「メーカーズフロア」があります。パソコンや3Dプリンターのほか、旋盤など各種工作機械もそろっており、工学部以外の学生も自分たちがやりたいものづくりのために利用できます。たとえば工学部の学生の技術と芸術学部の学生の感性が結びつくことで、さまざまな課題やプロジェクトに対して「デザインシンキング」に基づいた素晴らしい成果を生み出すことができるはずです。

このメーカーズフロアをはじめ館内はガラス張りになっており、豊富なオープンスペースと相まって異分野の学生たちがお互いどんな活動をしているのか、日常的に見えるようになっているところも「STREAM Hall 2019」の大きな特色です。誰かが面白そうなことをやっていると、自然と興味が湧きますよね? その好奇心を大切に学生たちの創造と融合をバックアップしていきたいです。
「STREAM Hall 2019」には、先ほども言いましたが学生たちがリラックスできるオープンスペースが各フロアにあります。学生たちが自主的にこうしたスペースを使って「協働」したり、アイデアを生み出したりしてくれるとうれしいですね。植物があり、音楽が流れる、そんな創造空間を楽しみながら活用してほしいです。

実は、私たち教員も学部を超えたディスカッションや共同研究の動きが加速しています。今後、学生を巻き込みながら、異分野融合の成果を生み出していきたいと考えています。

─今後、「STREAM Hall 2019」と「ESTEAM教育」からどのような人材を生み出したいとお考えですか?

相原 一言で言えば、真の意味で人と社会のために役立てる人材です。工学部の学生には、芸術学部の学生を通して人間の幸福や生きる喜びの意味をとことん見つめる視点を獲得してほしい。現代のテクノロジーは人間の幸福を考えることなしには成立しません。iPhoneを生んだAppleのスティーブ・ジョブスは感性を重視したイノベーションで多くの人々を幸福にしました。テクノロジーとはあくまでも人間が幸福になるためのツールに過ぎません。「STREAM Hall 2019」でのものづくりや異分野との出会いで、一人ひとりの感性を磨き、人間重視のイノベーションができる人材を育てたいと思っています。農学部、芸術学部の学生たちもお互いに刺激を与え合いながら、「人間の幸福」を追求できる人になってほしいですね。私自身、「STREAM Hall 2019」と「ESTEAM教育」からどのような才能が生まれてくるかとても楽しみですし、教員として最大限のサポートをしたいと考えています。

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