ESTEAMエリア完成を記念した奏學祭が開催。さまざまな融合から生まれたプロジェクトが披露されました。
10月5日(火)、ESTEAMエリアの完成を記念したコンサート「奏學祭」が、University Concert Hall 2016内のメインホールMarbleで開催されました。ESTEAMとは科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Arts)、数学(Mathematics)を統合的に教えるSTEAMに、ELF(English as a Lingua Franca:共通語としての英語)を融合した、玉川大学が提唱する新しい時代に求められる教育のこと。これまでSCIENCEHALL、ELF Study Hall 2015、University Concert Hall 2016、STREAM Hall 2019などの改修・建設が行われてきましたが、本年度Consilience Hall 2020が竣功したことで、ESTEAMエリアが完成。学部の枠を超え、学際的な学びを行う環境が整いました。
奏學祭は、「第1部 未来を描く」と「第2部 未来を奏でる」の二部構成。コンサートに加え、「科学と芸術の融合」というESTEAM教育のテーマを表現するため、さまざまな学部や学年を超えたコラボレーションに挑戦。その成果を発表しました。また、ESTEAM教育の象徴として、ローランド株式会社が最新の技術を集結し、世界中からデザイン案を募集して製作した世界に2台しかないデジタルピアノ「Facet Grand Piano」をお借りし、コラボレーションに使用。他に類を見ない造形は、まさにESTEAMを表現するにふさわしいピアノです。ここではこのFacet Grand Pianoを含め、当日行われたさまざまなプログラムをご紹介します。
第1部 未来を描く
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オープニング
黄色いコスモス、わくわく創造のテーマ
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テューバとFacet Grand Piano
テューバとピアノのための組曲第1番(エフィー組曲)より
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歌唱とピアノ
《小さな空》“Small Sky” 《丘のコスモス》
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SDGs Presentation Program
K-12 Primary Division5年生によるSDGsをテーマにしたプレゼンテーションと演奏
「未来を描く」と題して行われた第Ⅰ部では、オープニングで芸術学部が制作した映像作品を上映。そのモチーフとなった黄色いコスモス(イエローガーデン)は、玉川大学が世界で初めて開発に成功し、品種登録されたものです。この映像制作のため、通常であれば11月が最盛期のコスモスの開花促進を、農学部教員が中心となって行いました。
そしてこのプログラムでは、Facet Grand Pianoによる演奏に合わせてロボットが踊る様子にも注目が集まりました。このロボットは工学部情報通信工学科で研究を行っているもので、トヨタ自動車が開発したHSR(Human Support Robot)を使い、私たちの生活に役立つ支援のプログラミングに取り組んでいます。9月に行われたWorld Robot Summit 2021で部門賞を受賞するなど多くの成果を上げており、その動きに会場からも拍手が送られました。
- 詳しくはこちらから ロボカップ世界大会で玉川大学チームが部門優勝!
また、歌唱とピアノでは、卒業生が在学中に作詞作曲した、玉川で生まれ歌い継がれている多くの歌の中から2曲を披露しました。
第1部最後となる、SDGs Presentation Programでは、9月21日に行われたTamagawa Academy SDGs Festival -Song for SDGs 世界を変える歌とアイデア-にて最優秀賞に選ばれたPrimary Divisionの5年生根木絢未さんが、プレゼンテーションを行いました。そしてその際に自身で作曲した曲を、マリンバを演奏しながら披露。そのプレゼンテーション内容と大人顔負けの行動力で、拍手喝采を浴びていました。
- 9月21日の詳しい内容はこちら 研究内容と歌でSDGsに提言。5年生がさまざまなアイデアをプレゼンテーションしました。
第2部 未来を奏でる
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ショートレクチャーⅠ
本学所蔵の原智恵子のスタインウェイ・ピアノについて
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原智恵子寄贈のピアノ
練習曲 作品25-11《木枯らし》、ショパンの主題による7つの変奏曲
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大学生のかがやき
ミュージカル《ウィキッド》より“For Good”
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ピアノ・フェイズ
“Piano Phase”
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ショートレクチャーⅡ
全人教育とESTEAM ―大学教育の未来―
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Facet Grand Pianoとバレエ《月光》
“Moonlight”
「未来を奏でる」と題された第Ⅱ部では、冒頭と終盤に芸術学部の野本由起夫教授が登壇し、ショートレクチャーを行いました。その中で野本教授は「新たな技術が新たな楽器を作り、それが新たな曲を生み出すきっかけにもなりました」と、ピアノを中心とした楽器の進化と、ショパンやモーツァルトといった作曲家の作品の関係について説明。その上で「新たな芸術の誕生に、技術の進化は不可欠」と語りました。
その象徴ともいえるFacet Grand Pianoと、ピアニスト原智恵子※が所有していたスタインウェイのグランドピアノの演奏では、デジタルとアコースティックのピアノ競演が実現し、それぞれの良さを感じる貴重な機会でした。
- 原智恵子は世界で活躍する日本の女性ピアニストの草分け的存在であり、彼女が愛用したピアノが玉川学園に寄贈されています。
ピアノ・フェイズでは、Facet Grand Pianoの音が「木琴」に切り替えられ、実物の木琴とのコラボレーションをするという試みも実施。この他にもベートーヴェンの『月光』に合わせて芸術学部の学生・卒業生がバレエを披露するなど、どのプログラムも観客の心に響く内容でした。
奏學祭に向けた取り組みの数々
この日の奏學祭に向けた取り組みは、舞台の上だけではありません。たとえば舞台の転換や照明、空間美術などを行うスタッフは、芸術学部の学生たちが担当。またMarbleの入口には玉川大学で育てられたコスモスが飾られましたが、その展示用のガラスオブジェは、芸術学部でガラス細工を指導する栗田絵莉子助教他が今回の行事に合わせて制作しました。また、玉川大学文化会フラワーデザイン部がこの日のために大規模なアレンジメントを創作。ホワイエに華を添えました。
そして、「奏學祭」という名称や、告知ポスターなどのアートワークも、芸術学部メディア・デザイン学科の小北麻記子教授の指導のもと、ゼミ生(3年生)たちが担当。今回は小北ゼミのゼミ長と、ポスターのグラフィックデザインを担当した学生に話を聞きました。
「当初は『わくわく創造コンサート』という名称だったのですが、もう少し大人っぽい雰囲気にしたいと思い、ゼミ生同士で意見を出し合いました。当初から『奏でる』というフレーズは出ていたのですが、それに加えて『學』という旧字の語感から、奏學祭というタイトルが決まりました。このプロジェクトには6月頃からゼミ生で参加していますが、夏休み中もLINEやZoomを使って意見を出し合い、進めていきました。昨年からのリモート授業での経験が役立ち、打ち合わせもスムーズに進みました(ゼミ生代表 岡崎武尊さん)」。
「ポスターのデザインはゼミ生全員で案を出し合い、私の案が採用されました。ビジュアル的にはFacet Grand Piano自体に存在感がありますが、つながりといったことを表現したくてネットワークのようなデザインを加えたり、イエローガーデンを想起させるような黄色を配するといったことも取り入れました。また今回は文字要素も多く、カーニング(字詰め)なども経験できたことが良かったです。玉川大学の芸術学部は3年になっても幅広い分野の授業を履修することができ、さまざまな方向へ進める可能性がある点に魅力を感じています(ポスターデザイン担当 寺田怜さん)」。
学部や学年など、さまざまな「垣根を越えた融合」というESTEAM教育のコンセプトに沿って行われた今回の奏學祭。「芸術×農学」、「芸術×工学」、「卒業生×在学生」、「教員×学生」、「K-12×大学」といった幅広い融合を見ることができました。今後もさまざまな融合が生まれてくることでしょう。ESTEAMエリアはそうした活動の中心となることが期待されています。
Program
第1部未来を描く Imagining the Future
オープニング Opnening
- 黄色いコスモス
映像:八木澤桂介(芸術学部助教)
音楽:坂田晶(芸術学部技術指導員) - わくわく創造のテーマ
- Facet Grand Pianoの連弾とHSRロボットの共演
- “EMPATHY TELEPATHY”
作曲:田中愛(卒業生)
Pf.田中愛・菊地智子(芸術学部非常勤講師)
HSR プログラミング・操演:
坂巻 新(工学研究科修士課程1年生)
中野零仁(工学部情報通信工学科3年生)
川上 響(工学部情報通信工学科3年生)
磯田ショーン佳宏(工学部情報通信工学科2年生)
テューバとFacet Grand Piano
テューバとピアノのための組曲第1番《エフィー組曲》より Suite No.1 for Tuba and piano”Effie Suite”
作曲:アレック・ワイルダーAlec Wilder(1907-1980)
V. エフィー、フォークダンスに行く Effie Goes Folk Dancing
Ⅱ. エフィー、恋に落ちる Effie Falls In Love
Ⅳ. エフィー、謝肉祭に行く Effie Joins The Carnival
Tub.中田知宏(芸術学部助教)
Pf.津島圭佑(芸術学部助教)
歌唱とピアノ
- 《小さな空》”Small Sky”
作詞/作曲:武満 徹 TAKEMITSU, Toru(1930-1996)
Ms.中村裕美(芸術学部非常勤講師)
Pf.津島圭佑 - 《丘のコスモス》
作詞/作曲:山村俊介 (卒業生)
Ms.中村裕美
Pf.津島圭佑
SDGs Presentation Program
K-12 Primary 5年生によるSDGsをテーマにしたプレゼンテーションと演奏
根木絢未(K-12 Primary 5年生)
- “A Better World”
作詞/作曲:ソーニャ・プアマンSonja Poorman
Vo. 根木絢未(K-12 Primary 5年生)
Pf.安倍尚樹(Primary Division教諭)
- 休憩
第2部 未来を奏でる Harmony of the Future
ショートレクチャーⅠ
本学所蔵の原智恵子のスタインウェイ・ピアノについて
野本由紀夫(芸術学部教授)
原智恵子寄贈のピアノ Sette variazioni sopra un tema di Chopin
練習曲作品25-11《木枯らし》Etude Op.25-11”Winter Wind”
作曲:フレデリック・ショパン Frederic Chopin(1810-1849)
Pf.津島圭佑
ショパンの主題による7つの変奏曲 Sette variazioni sopra un tema di Chopin
作曲:ガスパール・カサド(1897-1966)Gaspar CassadóI Moreu
Vc.香月圭佑(芸術学部非常勤講師)
Pr.松川儒(芸術学部准教授)
大学生のかがやき
ミュージカル《ウィキッド》より“For good” “For good” from the Broadway Musical Wicked
作詞/作曲:スティーヴン・シュワルツ Stephen Schwartz (1948-)
Vo.市野色華(芸術学部パフォーミング・アーツ学科4年生)
Vo.中丸咲希(芸術学部パフォーミング・アーツ学科4年生)
Pf.川畑奈保(芸術学部非常勤実技指導員)
ピアノ・フェイズ
- ”Piano phase”
作曲:スティーヴ・ライヒ Steve Reich (1936-)
Mar.静野真也(芸術学部メディア・デザイン学科4年生)
Pf.林 京平(芸術学部助教)
ショートレクチャーⅡ
- 全人教育とESTEAM —大学教育の未来—
野本由紀夫
Facet Grand Pianoとバレエ《月光》
- “Moonlight”
作曲:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン Ludwig van Beethoven (1770-1827)
Pf.小佐野圭(芸術学部教授)
振付:堀内 充(芸術学部非常勤講師)
ダンサー:秋満彩子 佐藤侑里 塩田みなみ 須貝紗弓 田島由佳 名木田弓音 並木まりか 西 櫻子 入道 愛 平石沙織 深山圭子 細井佑季 行友裕子 渡辺麻友 和田優奈 大谷晏未 浅井永希 内藤悠太 堀内 充
使用ピアノ
GPX-F Facet Grand Piano(ローランド株式会社提供)
Steinway & Sons 1960年製No.368400
玉川大学教育博物館提供:「原智恵子寄贈のピアノ」玉川大学教育博物館所蔵『ガスパール・カサド原智恵子コレクション』所収
Productions
- 司会:
石川愛友(芸術学部パフォーミング・アーツ学科4年生)
- プロデューサー:
小佐野圭(芸術学部教授)
- 構成・演出:
青山典靖(芸術学部教授)多和田真太良(芸術学部准教授)
- 演出監修:
太宰久夫(名誉教授)
- 空間デザイン:
二村周作(芸術学部教授)
- 照明デザイン:
菊地芳子(芸術学部教授)
- 広報デザイン:
小北麻記子(芸術学部教授)
- 音響:
二見英幸(芸術学部非常勤講師)
- 映像技術:
吉住知洋(芸術学部非常勤実技指導員)
- ロボット監修:
岡田浩之(工学部教授)水地良明(工学部教授)
- 黄色いコスモスプロジェクト:
小原廣幸(農学部教授)山﨑旬(農学部教授)井上広大(農学部技術指導員) 島田 温史(農学部技術指導員)
- ガラスオブジェ制作:
栗田絵莉子(芸術学部助教)藤原彩葉(芸術学部技術指導員)鈴木純郎(芸術学部技術職員)
- フラワーデザイン部:
吉川朋子(部長・農学部教授)福田美弥(課外活動指導顧問)
- ステージマネージャー:
多和田真太良 西上純平
- アシスタント・ステージマネージャー:
市川憂也(芸術学部助手)露崎義矢(芸術学部助手)
- 空間美術製作:
山田洸士(芸術学部技術指導員)
- 照明テクニカルチーフ:
赤羽佳奈(芸術学部非常勤講師)
- 照明クルー:
大島早保子(芸術学部助手)伊藤豪俊(芸術学部非常勤実技指導員)
Students Staff & Crew
- ステージスタッフ:
一場楓華 石川愛友 木原実咲 平野志織 福本優美 丸田えひめ 稲田菜々香 高田紗愛
- 空間美術スタッフ:
今泉里仁 紙屋智菜美 橋本彩良 佐川双麻 井上加奈子 本名眞子 小澤さくら 加治屋寧音 井口 碧 関本 葵 諸橋晴香 山本みこ 加藤怜杜 清水陽菜乃 馬渕衣音 松下未来 秋山真凛
- 照明クルー:
田口純子 長谷川聖恵 青木七海 真島由芽 松野哲平 八木脩嘉 大内星見 外浦理都子 綿引亜美 尾山未結 村田みなみ 川村萌花 秋岡唯 酒井寧々 加藤陽大 伊藤華 中丸珠那 根岸 花 芳賀知尋 中野澄霞 竹澤由人 竹本七海
- 学生映像スタッフ:
篠崎駿介 平田夏望 佐藤未悠 西島茉莉華
- 黄色いコスモスプロジェクト:
山口拓斗 木下怜央人 山本芽生 酒井彩華 内藤朋也 奥川海偉 坂上 圭 大塚実和 藍原 彬 椙田さくら 小澤 遥 森悠斗 塩澤慶明 近藤晃洋
- フラワーデザイン部員:
稲葉美憂 草浦みさき 中島望美 内埜未鈴 長尾奈実 福田ひなた 渡邊真悠
- ポスターデザイン:
寺田 怜
- タイトル「奏學祭」考案:
池野百香 石田 愛 宇山美由紀 岡崎武尊 栗原未悠 酒井野愛 寺田 怜 村越成美
Topic
ローランド(株)RJMカンパニーを訪問し、唐澤裕典社長に感謝状を贈呈いたしました
10月21日(木)学校法人玉川学園理事長の代理で大野理事がローランド(株)RJMカンパニーを訪問しました。世界に2台しかないデジタルピアノ「Facet」の教育活動利用についてのご尽力に対し、唐澤裕典社長に感謝状を贈呈いたしました。