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1月20日「Human Brain Science Hall」竣功記念講演会・内覧会を開催

2022.02.25

玉川大学の脳科学研究拠点の一つである「Human Brain Science Hall(以下、HBSH)」が竣功し、2022年1月から運用が始まりました。これを記念して、1月20日に講演会とHBSH内覧会が開催されました。

講演会の第1部は小原芳明理事長・学長のあいさつからスタート。次にスポーツ庁長官 室伏広治氏(オンライン)、文部科学省研究振興局大学研究基盤整備課長の黒沼一郎氏(同課 学術研究調整官の小久保智史が代理)、東京大学医学部長・日本医療研究開発機構 疾患領域コーディネーターの岡部繁男氏(オンライン)、日本脳科学関連学会連合代表・京都大学大学院医学研究科教授の伊佐 正氏(オンライン)から来賓のご挨拶をいただきました。

続いて、坂上雅道脳科学研究所長が脳科学研究所を紹介。1996年に工学部の塚田稔先生、斉藤秀昭先生、福井一光先生、樋田栄輝先生、相原威先生を中心として学術研究所内に脳科学研究施設が開設され、「全人的人間科学プログラム(脳の学習・記憶・推論・思考のメカニズムの究明とその教育技術への応用)」が文科省「21世紀COEプログラム」に採択されて以来、「意思決定」研究が玉川大学の脳科学研究の一つの特徴になったことを説明しました。その後2003年にMRIを導入。翌年には発達研究とそれに密接な関係があるロボット研究が始まり、2007年4月に脳科学研究所開設に発展した、これまでの歴史を振り返りました。また今年4月から、「同研究所が脳システム研究センター」、「脳・心・社会融合研究センター」、「先端知能・ロボット研究センター」という3つのセンターで構成される予定であることも紹介されました。

松田哲也脳科学研究所教授からは、HBSHと社会神経科学研究拠点についての説明がありました。HBSHは学内に分散されていた研究リソースを集約、そこに①「研究」と「教育」、②「学内」と「学外」、③「学問」と「学問」をつなげるというコンセプトで設計され、その後、withコロナを想定してより安心・安全な研究環境を追求した設計に変更されたという経緯が紹介されました。また①「研究」と「教育」をつなげることで、研究リソースを活用し個性を活かして社会で活躍できる人材の育成を目指すこと、②「学内」と「学外」では玉川大学脳科学研究所が文科省共同利用・共同研究拠点の「社会神経科学研究拠点」であり、ほかの「ヒューマンサイエンス研究領域」拠点と連携していることを通じて、国内外の研究者との共同研究の推進などをはかっていくこと、③「学問」と「学問」では学際的な研究を通じて人間の本質の理解につなげていきたいという今後の展望が述べられました。

第2部は「ヒューマンサイエンス研究の新展開」をテーマに、松元健二脳科学研究所教授を座長として生理学研究所・同志社大学・昭和大学・玉川大学の共同利用・共同研究拠点4拠点連携によるミニシンポジウムが行われました。

自然科学研究機構生理学研究所教授の定藤規弘氏は「『私たち』の神経科学に向けて:複数個体の社会的相互作用から創発する間主観性の神経基盤」として、対面コミュニケーションにおける個体間神経同期は予測の共有を表象することや、2者同時計測MRI研究で得た最新の成果からわかってきたヒトの社会性について講演されました。

同志社大学赤ちゃん研究センター長の板倉昭二氏は「母子を繋ぐロボット」をテーマに、Still Face時の母子に対するロボットの影響、幼児によるロボットへの同調、ロボットらしい声、ヒトらしい声に対する選好といった現在進行中の研究について講演されました。

昭和大学発達障害医療研究所所長の加藤進昌氏は「発達障害研究から脳の多様性の研究へ」として、発達障害ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)、そこにLD(学習障害)の三者を共通して考えることが重要であること、また発達障害には多様性があることなどについて講演されました。

そして酒井裕脳科学研究所教授からは「社会・個性・精神疾患と脳神経をつなぐハブとしての計算論的行動科学」を発表。なぜ行動科学に計算論が必要なのか、その具体研究例として、強迫性障害の数理モデルなどについて講演されました。

最後に特別講演として、東北大学副学長大隅典子氏から特別講演「〈個性〉はどのように生まれるのか? エピジェネティックなアプローチ」というタイトルでご講演いただきました。父親の年齢と自閉スペクトラム症発症リスクについて、発症リスクに関連する可能性のあるタンパク質などについて解説いただきました。

続いてHBSHの内覧会が行われました。

地上3階建て(一部5階建て)、L字型形状の内部は「研究ゾーン」、「研究室ゾーン」、「教育・交流ゾーン」の3エリアで構成されています。共用部には自然換気システムを導入、個室ブースには光触媒除菌機を設置するなど、随所に新型コロナウイルス感染症対策が施されています。SDGsに関する取り組みでは、17の国際目標のうち「質の高い教育をみんなに」など6つのゴールを重点目標としました。

ここでは、実験、研究設備が整った研究ゾーンについて紹介します。

3F

生理指標を使った調査に使われる生理実験計測室にはシールドルームが設置されており、脳波、心電図、皮膚電位、筋電図、モーションキャプチャーなど様々な身体反応を計測することが可能です。身体の細かな動き、音楽鑑賞時のリラックスした時や睡眠中の脳波などを個人の反応だけでなく、対人場面での2者間の反応を同時に測定することも可能です。

社会心理実験室では、他者とインタラクションするような行動実験を実施することができます。独立した10室のブース内には、ネットワークに接続されたPCが常時設置されており、経済ゲーム実験用プログラムがインストールされています。研究参加者同士が顔を合わせることなく共通の課題に取り組めます。ここでは、社会環境が個人の心理や行動に与える影響などを調べることが可能です。

心理実験室は、赤や青など照明の色を変えることで色を見分けることをできなくすることもでき、マジックミラーが設置された部屋では相手に自分がだれかということを確認されることがない状況で、他人の振る舞いを評価することも可能となっています。

2F

生化学解析室では、唾液からオキシトシンやバソプレッシンなど、主にヒトの社会性に関係するホルモン濃度などを測定することができます。今後は遺伝子解析の解析なども予定されています。

生化学解析室の隣の視線計測室は視線や瞳孔を調べる部屋で、最近では絵画鑑賞の際の視線の動きや瞳孔の大きさ、2者間でお互いが相手の顔のどこを見ているかなどの測定が可能です。

1F

そしてHBSHを代表する設備でもあるMRI撮像室には、3テスラーMRIの最高グレード(シーメンス社 Magnetom Prisma Fit)を導入、詳細な脳の形態や活動の計測を行います。 このMRIは、3階の社会心理実験室とネットワークで繋ぐことができ、多数の方と社会心理のゲーム実験を行っている時の脳の活動を測定することも可能です。

HBSHエントランスすぐ横にはMRIシミュレータ室があり、MRIの実機に入る前にここで疑似体験ができたり、行う課題の練習を行うことができます。特に、子供の研究参加者のMRIを撮像する時には、まずここでMRIに十分慣れていただき、その後実験を行うようにしています。

学内に分散していた脳関連研究施設が集約されたHBSH。これから「教育・研究・社会」と連携する、開かれた脳科学の研究拠点となることが期待されます。

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