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学術研究所、脳科学研究所、量子情報科学研究所
―研究所所員会を開催―

2024.07.04

玉川大学では、「学術研究所」「脳科学研究所」「量子情報科学研究所」の3つの研究所を拠点に、専門的・学際的・総合的な研究活動を展開しています。2024年6月3日、年に1度の所員会が開催され、各所長による研究所紹介のほか、学術研究所K-16 一貫教育研究センターおよび脳科学研究所 脳・心・社会融合研究センターの先生方による講演が行われました。

前身の玉川学園教育研究所開設から95年。現在の研究所の体制と活動を紹介

2024年度の研究所所員会が、玉川大学Human Brain Science Hallにて開催されました。会場での聴講に加え、オンラインでも多くの研究者が参加しました。
会は小野口直喜研究推進事業部長が司会進行し、各研究所の紹介から始まりました。

<司会:小野口直喜研究推進事業部長>

学術研究所長の小野正人教授は、「全人教育は、“すべての人との関わりから生まれる教育”という言い方もできます」と述べ、研究を通じた教育や人材養成、広報活動を通して、玉川大学への進学を希望する高校生を増やすことへの意欲を示しました。

学術研究所は「K-16 一貫教育研究センター」や「ミツバチ科学研究センター」など6つのセンターで構成されています。各センターの活動内容や成果、主任を務める先生方の人柄なども紹介。さらに学術研究所の学内連携での教育活動展開や特別研究員が他部署や他学部と連携しながら活躍していることを述べました。
「研究は人ありきで、人を育てるのが教育です。研究も教育と等しく世界を変えることができるもっとも強力な武器の1つと言え、研究所が教育機関のなかにあることに意義がある」と小野教授は教育と研究の重要性を訴えました。
最後に玉川学園創立者 小原國芳の(“夕”の部分が一画多い)「夢」に触れ、「夢は人生の羅針盤のように機能する。夢を追う人間の力とそれを支える人間の力との協働によって、玉川大学の研究所は機能しています」と締めくくりました。

脳科学研究所は、坂上雅道教授が所長を務める3つの研究センターから構成されています。「脳システム研究センター」では、脳の仕組みを解明し、人間の意思決定メカニズムを明らかにすることを目的とした、様々な基礎的な研究が行われています。中でも注目されるのが、ブレインマシーンインターフェースの研究です。坂上教授は、この技術を用いた研究の進展について報告しました。

「脳システム研究センター」の基礎研究成果を基盤に、脳を社会的な側面から捉える応用研究に取り組むのが「脳・心・社会融合研究センター」です。人間の不公平感と遺伝子の関係を明らかにする研究や、身体活動と意思決定の関係を解明する研究など、幅広い研究テーマに取り組んでいます。
3つ目は「先端知能・ロボット研究センター(AIBot 研究センター)」です。VRを用いたボッチャ競技の練習効果向上や、人とロボットの協働作業、ロボカップなど知能ロボット競技会への出場など、様々な研究に取り組んでいます。
最後に、松元健二教授の研究が内閣府の「ムーンショット型研究開発制度」の目標9に選出されたこと、脳科学研究所が文部科学省の共同利用・共同拠点に指定されていることに触れ、「これからも社会脳科学を推進していきます」と展望を述べました。

量子情報科学研究所は、2011年に学術研究所の1センターから独立し、「量子情報数理研究センター」と「超高速量子通信研究センター」の2つのセンターで構成されています。所長の二見史生教授は、「量子情報数理研究センターでは主に理論研究を、超高速量子通信研究センターでは主に実験研究を実施し、量子情報科学の理論と実験の両側面から研究を推進しています。」と研究方針を述べました。
続いて、「Tamagawa Vision 100(2029)」の推進に向け、先端研究推進と広報活動をテーマに掲げ、量子技術を活かしたデータを安全に送る技術(Y-00の量子暗号の社会実装)の研究などに取り組んでいることを報告しました。広報活動は、学園内にとどまらず国内外に向けて広く発信し、基礎領域にあたる工学部の学生数増加にも繋げたいと意欲を示しました。
昨年の「CEATEC 2023」では、独自開発の光通信量子暗号を実装したトランシーバーと、予測不能な乱数を生成する量子乱数発生器を出展し、多くの来場者に研究成果を披露することができ、とくに来場した高校生や大学生にも積極的に声をかけました。今年10月15日〜18日に幕張メッセで開催される「CEATEC 2024」にも出展予定にしており、積極的な広報活動を行いたいと展望を述べました。

また、小野口研究推進事業部長より、先述の「CEATEC 2024」には量子情報科学研究所と並んで玉川大学研究所ブースとして出展する予定であることを報告。研究推進事業部としても広報活動の支援体制を構築していることを紹介しました。

講演「玉川スマートキャンパス構想について」相原 威 特任教授(学術研究所 K-16一貫教育研究センター)

今年4月に学術研究所 K-16一貫教育研究センターに着任された相原 威 特任教授(元工学部教授)が、玉川スマートキャンパス構想について説明しました。

「地球は大丈夫でしょうか?このままでは、人間の住む所がなくなってしまう可能性があります。CO2排出ゼロを目指した国家プロジェクトが進められている中、学園としても環境エネルギー問題に果敢に取り組まなくてはなりません」と相原特任教授は警鐘を鳴らしました。幼稚園児から大学院生、教職員に至るまで、一人ひとりが環境倫理観をしっかり持つために、センター内に「スマートキャンパス推進部門」が設置されたことを述べました。

玉川スマートキャンパス構想は、まず「Smart Energy」の考えに基づき、エネルギー研究とK-16連携の環境教育による学術的で学際的な研究・教育拠点の形成を掲げました。これは、研究者のみならず学園全体で環境倫理観を共有・醸成することを目的とした取り組みです。さらに、GX(Green Transformation)の研究・教育に向けたキャンパスのスマート化を目指し、学部間融合とK-16一貫の学際的な教育・研究を推進する「Smart Education」が派生しました。さらに、環境問題の解決にはDX(Digital Transformation)の方策も必要となるため、教育DX基盤を形成する「Smart Digital」という考えが加わりました。

相原特任教授は「一般の大学で言われているスマートキャンパスは『Smart Digital』の部分のみですが、玉川学園では『Smart Education』を融合。玉川の丘に集う人々が真の倫理観を持ち、他人事ではなく一人ひとりの問題として意識を向けられるよう、全人教育に根ざした環境倫理の育成を推進します」と、玉川スマートキャンパス構想の目的を説明しました。
次に、「Smart Education Campus」、「Smart Energy Campus」、「Smart Digital Campus」それぞれの実現に向けた具体的な方策が説明されました。

「Smart Education Campus」は、GX教育の推進に向けてイベント(勉強会・講演会)やプロジェクト型授業、労作教育などを用意しています。具体的には、川崎重工の水素プロジェクト本部長による講演や工・農・芸融合価値創出プロジェクト、Tamagawa Mokurin Projectなどが挙げられます。
「Smart Energy Campus」は、再生可能エネルギーによる発電、クリーンで持続可能な社会の実現に貢献する研究、産学官連携による共同研究や地域との連携強化など、様々な取り組みを進めています。
「Smart Digital Campus」では、ICTやAIを活用した教育手法の導入、IoTやメタバースなどの先進的なデジタル技術の教育分野への応用、安全性の高い情報システム基盤の整備などが方策として掲げられました。

今後は、研究メンバーによる全体会の開催、サイネージ広告やホームページを通じた情報発信と意識促進、GX講演会の開催などの活動を通して、2027年3月までにTamagawa Vision 100(2029)に向けた研究・教育システムの構築を完成させる予定です。

講演「大学研究所広報の可能性」奥村 哲 教授(脳科学研究所 脳・心・社会融合研究センター)

奥村 哲 教授は、近年のサイエンスコミュニケーションをめぐる動向を整理した上で、過去3年間におけるHuman Brain Science HallやSTREAM Hall 2019などでの脳研展示や情報発信拡充の狙いを説明しました。
「サイエンスコミュニケーション」という言葉は、2000年頃から広く使われ始めました。内閣府の科学技術基本計画(5期)でも、社会の多様な立場の人々が対話し、アイディアを出し合い、考えを共有したり、解決策を見出したりする「対話・協働」の取り組みの重要性が謳われています。奥村教授は、科学者・技術者と市民との対話が世の中を少しずつ変えていることの例として、ヨーロッパの気候変動市民会議が140を超える提言を行い、その結果、フランスでは列車で2時間半以内に到達できる範囲内では飛行機の定期便運航を原則禁止するルールの制定に繫がったことなどを紹介しました。

「日本では8割以上の人が『研究者、国民、メディア、産業界、政策形成者といった多様な人同士が対話・協働することが必要だと思う』と考えており、この割合は決して低くありません。しかし、同時に研究者との対話・協働の機会に実際に参加した日本人はわずか3%代にとどまります。また日本人は科学的リテラシーにおいては世界トップレベルにありながらも、科学的な話題の学習への興味関心が低い傾向があります」。奥村教授はこのように説明し「これはとてももったいないことです」と嘆きます。
一方で、研究者が立てる学問の問いの継続・継承がアカデミア内で完結しているジャーナル共同体の現状についても触れ、「日本人の約6割は、研究が始まる前、もしくははじまってまもなくのアイデアレベルや、基礎的な学術的な研究開発段階から、社会の多様な立場の人々の対話・協働が必要だと考えていますが、これをどう実現していくかは難しい課題です」と指摘しました。
奥村教授は「科学者・技術者と社会とのコミュニケーションが必要であることは疑いようがありません」と力強く続けます。その重要性を踏まえ、今年度秋学期から脳科学研究科心の科学専攻(修士課程)にサイエンスコミュニケーション科目を開講することを報告しました。「初年度は脳科学に関連したコミュニケーションが中心ですが、徐々に内容を広げて、やがては脳科学研究科以外の修士課程にも広げていきたい」と展望を語ります。映像コンテンツのプロデューサー、笑いの力を使って科学の面白さにアプローチする芸人さん、デザイナー、俳優など多様な講師陣の招へいを計画しており「脳科学研究科の院生だけでなく、学内の多くのみなさまにもぜひ講演を聴きに来ていただければと思います」と呼びかけました。

最後はヒューマンリソース活用事業の活動報告です。
広報誌「全人」で掲載している「脳科学相談室」について、「このコーナーの意図は大きく二つあります。一つは、質問する生徒らに対して、“疑問を持って質問をすることは良いこと、そして楽しいことなんだ”という気持ちを持ってもらうことです。もう一つは、回答する研究者の先生方に、世の中の人の関心が実際にどういうところにあるのかを知ってもらうことです。実は、これらの問いに答えること自体が研究者にとって大きな学びや研究のきっかけになっているのです」と述べました。
そのほか、高大連携の「旅する本棚」、STREAM Hall 2019での展示、K-12特別講演会、中高生脳科学研究室などのイベントを紹介し、「高校生の脳科学に関するリテラシーを向上させていきたいと考えています。高校の生物学教科書に脳科学についての記載がまだまだ少ないなかで、高大連携の脳科学教育の玉川モデルを広く提案できれば、という思いで様々な活動に取り組んでいます。今後も脳科学研究所として、あるいは日本の神経科学の窓口として、今後も教育の流れに対応した生物学教育の変革に貢献していきたい」と締めくくりました。

<STREAM Hall 2019で行った展示>

所員会終了後、会場を移して懇親会が行われ、研究所を超えた研究談義に花が咲きました。今後も玉川大学は、学術研究所、脳科学研究所、量子情報科学研究所の研究成果を社会に貢献できるよう、積極的に取り組んでまいります。

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