さまざまな表現方法が開花した20世紀の美術シーンを知る、「藤澤武夫氏寄贈 20世紀美術コレクション」開催中。
全人教育に共鳴した藤澤氏が寄贈した、現代美術のコレクション
玉川大学教育博物館では、10月13日(月)から12月21日(日)まで、「藤澤武夫氏寄贈 20世紀美術コレクション」を開催しています。
この企画展は、1984年に藤澤武夫氏(1910―1988)からご寄贈いただいた美術コレクションを総合的に紹介する、はじめての展覧会です。藤澤氏は本田宗一郎と共に本田技研工業株式会社を世界有数の企業に育て上げた企業家であると同時に、芸術への造詣も深く、美術品の収集も行ってきました。また小原國芳が提唱した全人教育に共鳴し、学園の発展に協力を惜しまなかったことでも知られています。屋内プール(1972年完成)建設の際のご支援や、112点に及ぶ美術品のコレクションをご寄贈くださいました。こうした作品のいくつかはキャンパス内に展示されており、学生にとって馴染みのあるものも少なくありません。今回は、そのコレクションの中から前期と後期に分けて64点を展示します。


多様な表現方法を、テーマごとに分けて展示
「藤澤氏によるコレクションの特徴の一つが、20世紀の作品が中心であることです」と語るのは、教育博物館の柿﨑博孝客員教授です。美術における20世紀は、多様な技法が生まれ、またアルミニウムやステンレス、アクリル板といった今までになかった素材が使われるようになるなど、さまざまな表現が一気に開花した時代でもあります。たとえば『植物』(1963)を描いたジャン・フォートリエ(1898―1964)は、アンフォルメルと呼ばれる抽象絵画の第一人者として知られた画家です。今回の企画展ではこうした表現の様相をもとに、前・後期に分けて9つのテーマで展示しており、当時の美術の潮流をより深く理解することができます。
前期展示
第1章 風景・自然
第2章 静物の表現
第3章 人物の表現
第4章 物質性の表現
第5章 色面・線による表現





後期展示
第1章 空間・光
第2章 不定形の表現
第3章 幾何学的・構成的表現
第4章 未知なる世界






20世紀の美術シーンを、より深く理解できる企画展
藤澤氏とご子息の知之氏は実際に1970年代にイタリアやフランスといったヨーロッパへ赴き、自分自身でこれらの作品を収集しました。中には作家の自宅に無造作に置かれていた作品を購入したこともあったそうです。フォートリエなどは既に名前が世に知られていましたが、中にはまだ評価の定まっていなかった画家も多く、藤澤氏の鑑識眼の高さに驚かされます。
「美術愛好家の方が『ぜひ見たい』とおっしゃるような作品もありますが、さまざまな作品をカテゴライズして展示していますので、気になった作品を周辺の作品と見比べてほしいですね。そうすると、難解といわれることの多い20世紀美術を、理解していただけるのではないかと思います」と語る柿﨑客員教授。
入場は無料、事前申し込みも不要ですので、ぜひこの機会に足をお運び下さい。
企画展のご案内
2025年度企画展
藤澤武夫氏寄贈
20世紀美術コレクション
2025年10月13日(月)~12月21日(日)
<前期> 10月13日(月)~11月9日(日)
<後期> 11月15日(土)~12月21日(日)
ギャラリートーク
2025年12月11日(木)14:00~15:00
講師:村山にな氏(玉川大学芸術学部教授)
※参加無料・申込不要
