『全人』2019年3月号 No.836より
2019年3月号 No.836
人工知能(AI=Artificial Intelligence)に対する注目度が高まっています。くらしを変える新技術に寄せる期待以上に、人間を超える存在への脅威論や悲観的な未来予想も叫ばれています。ひとと機械の共生社会の到来は疑うべくもありません。変化に応じ柔軟に生きる術を身につけるために、何を学び、何を次世代に伝えていくべきなのか。「未来の知性」とはどんなものなのか――。本学の研究者による対談、ジャーナリストや作家へのインタビューなどを通して、知性の本質と私たちの未来像を探りました。「研究エッセイ」では農学部環境農学科の關義和助教が、玉川のキャンパスに生息するアカネズミの調査を報告。生き物たちとの共存の方法を紹介します。「玉川の先輩を訪ねて」には文楽太夫の豊竹藤太夫さん(竹本文字久太夫改め)が登場。学生時代の学びが太夫の語りに活きるまでをうかがいました。
表紙写真=岩崎美里
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- 岡田:
人間の知能と機械の知能、すなわちプログラムが同じかどうか、これを私は知りたい。いま取り組んでいる分野では、圧倒的に人間が機械に勝っているけれど、AIは人間にできないことも明らかにする。だから私は正反対に見える機械と人間の探究が「&」で結ばれるべきだと考えています。
- 岡本:
なるほど。私は昨年『人工知能に哲学を教えたら』という本を書きました。同業者の反応は「教えられるわけがない、ばかばかしい」と「面白い」で両極端でしたが(笑)。
- 岡田:
AIもロボットも人間が使うツールとして面白いし、人間ができることの領域が広がるイメージです。
- 岡本:
拡張するイメージとは肯定的で同感です。
「AIから問い直す人間の知性」
対談 文学部 岡本裕一朗×工学部 岡田浩之 p4 - 岡田:
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文楽とは本来、庶民の芸能です。そこで描かれるのは男女の情愛、夫婦や親子に通い合う情など、人間の魂にふれるものが根底にある。だからこそ、古今東西、時を経ても変わらず世界に通じるのでしょう。
よく師匠に言われたのは、「行間を語れ」という言葉です。作者が描きたかったものは、文章と文章の間にも秘められている。そのためには床本(ゆかほん)を読みこみ、行間を語ることが太夫の大切な仕事だと。そして読みの深さは、自分の人生経験に比例するもの。僕も歳を重ねるほどに家族への想いや親子の情もわかり、若い頃とは語りの厚みが違っています。
太夫はいわばマラソンランナー。体力勝負だから格好つけてはやっていられないし、自分をさらけ出さないと人を感動させられない。自分の気持ちをいかに込めて役を演じきるか。それは玉川で学んだことであり、やっと本当の意味で生きてくるように思います。玉川の先輩を訪ねて 79 豊竹藤太夫さん p24
目次
- [特集]AI時代の知性
AIから問い直す人間の知性
対談 文学部 岡本裕一朗×工学部 岡田浩之
雇用ジャーナリスト 海老原嗣生「脅威論の虚実と仕事の未来」
SF作家 小川 哲「人間にしかできない役割とは」
工学部 大森隆司×K‐12生徒「未来についてのQ&A」
故きを温ねて 65
「子供達一人一人が充分に生かされた有意義な学習」…白柳弘幸 - TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- 平成30年度 礼拝献金についてのご報告
- 行事報告
明治の教育と博物学…柿﨑博孝 - 研究エッセイ
森林とアカネズミの関係から考える「生き物たちとの共存」…關 義和 - 玉川の先輩を訪ねて 79
文楽太夫 豊竹藤太夫【文学部芸術学科1978年卒業】 - 玉川発見伝 19
AIBot研究センター…モリナガ・ヨウ - Teaching @ Tamagawa 5
Research Assignment…Ayumi Hoshino - キャリアナビゲーション ’18
エノテカ株式会社 井関華奈美さん+就活Q&A - 学園日誌…小原芳明
- Book Review 166 『シルクロードと世界の楽器』…清水宏美
- 教育博物館館蔵資料紹介 318 「中沢道二筆蹟「仁義禮智信」」…菅野和郎
- 玉川の仲間たち 「ヤツガシラ」…深澤元紀