『全人』2019年9月号 No.841より
2019年9月号 No.841
19世紀イギリスの博物学者ジョン・グールドが出版した『鳥類図譜』は、歴史や芸術、科学などの見地において文化遺産にも比肩する学術的な価値を備えた美しい図鑑と言われています。日本最大のグールド ・コレクションを誇る玉川大学教育博物館は2019年10月から来年2月にかけて、玉川学園創立90周年記念特別展「ジョン・グールドの鳥類図譜」を開催します。特集ではさまざまな角度から『鳥類図譜』の魅力に迫ります。「研究エッセイ」では震災の被災者の支援などに取り組む原田眞理教授が、心理臨床家としての実践を紹介。「玉川の先輩を訪ねて」は現在フランスを拠点に活動する写真家の春木麻衣子さんが登場。学生時代の思い出や写真への思いをうかがいました。
表紙写真=岩崎美里
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最新の印刷技法だった石版画(リトグラフ)を使い、19世紀には博物学の図譜が数多くつくられました。なかでもグールドの鳥類図譜は傑出し、「史上最高の図譜」と絶賛されています。
グールド自身が学術論文を発表する博物学者だったため、美しい鳥類図譜はすぐれた科学性をも有する点が特徴です。この鳥類図譜に出合った故小原哲郎名誉総長は、教育にとどまらず人類共通の文化遺産として保存・活用したいとの思いから、1992年に収集事業を開始しました。全40巻(すべて初版)の収集完了は99年で、日本初のことでした。
玉川で大切にする「本物に触れる」教育の一翼を担う教育博物館では、この図譜を順次常設展示しています。さらにこの秋から開催の「ジョン・グールドの鳥類図譜」でも、ぜひ本物に触れる体験をしてほしいと願っています。玉川の丘で見られる「史上最高の図譜」
教育博物館教授 主幹学芸員 柿﨑博孝 p5 -
一般的にトラウマ、というと虐待や自然災害など大きな出来事があって生じるというイメージがあると思います。フロイトが「心的外傷」と言ったように、実際はそうではありません。人は生きていれば必ず心が傷つきます。肉親の死、ペットの死。死だけではなく、恋人との離別、就職が決まらないなど日常的にトラウマとなる出来事がたくさんあります。言い換えると、心の傷は「喪失」と深く関係しているのです。
同じ喪失場面に遭遇しても、一人ひとりの感じ方、受け止め方は異なり、同じ体験にはなりません。その一人ひとりの心にじっくりともに目を向けながら一緒にいることが心理臨床家として私のできることだと考えています。研究エッセイ「心と向き合う心理臨床家の実践」原田眞理 p20
目次
- [特集]ジョン・グールドの鳥類図譜
博物学と芸術の至宝 グールド鳥類図譜
鳥類図譜を生んだグールドとその時代
アオアズマヤドリ『オーストラリア鳥類図譜』より
教員・研究者が読み解くグールド鳥類図譜の魅力
石版画を再現する試み
玉川学園創立90周年記念特別展のご案内
「ジョン・グールドの鳥類図譜 19世紀 描かれた世界の鳥とその時代」
教育博物館館蔵資料紹介 特別編
故きを温ねて 70 「敎科書、掛圖、玩具、敎具等の蒐集」…白柳弘幸 - TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- 研究エッセイ
心と向き合う心理臨床家の実践…原田眞理 - 玉川の先輩を訪ねて 80
写真家 春木麻衣子 【文学部芸術学科1997年卒業】 - 玉川玉手箱 22
こんばんは、ご機嫌いかがですか…佐治量哉 - 教育探訪 8
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日本食研株式会社 頓所威隆さん+就活Q&A - 学園日誌…小原芳明
- Book Review 171 『風の谷のナウシカ』…阿部恭士
- 教育博物館館蔵資料紹介 323
「THE ILLUSTRATED LONDON NEWS」…宇野 慶 - 玉川の仲間たち 「ウェスタンレッドシーダー」…南 佳典