『全人』2010年9月号 No.742より
玉川大学の脳科学研究が採択されたグローバルCOEプログラム。小誌では関連分野の研究者を招聘しての講義を抄録掲載してきましたが、第8回を数える今月号は、劇作家・演出家で大阪大学教授の平田オリザ氏の登場です。自ら劇団「青年団」の支配人も務め、最近ではロボット演劇が注目されている平田氏の選んだテーマは「演じる私」。自分と心の所在について語る特別講義です。
また、各界で活躍する卒業生を紹介する「先輩を訪ねて」では、小説「まずいスープ」が芥川賞候補になった戌井昭人氏にインタビュー。学生時代のエピソードから、卒業後に文学座を経て劇団を主宰、やがて小説を書くまでの経緯をうかがいました。
ニュースにはロボカップ世界大会優勝はじめ、JUSTEC2010の開催、町田ゼルビアとの教育連携など詳しく掲載。写真ジャーナリストの大石芳野氏が、戦争について親子で考えることの意味を語った連載「家庭力」はぜひお勧めのページです。
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私には、世の中でよく言われる「本当の自分」なんてものは人間のなかには存在しなくて、演じることのなかにこそリアリティがあるという気持ちが強いんです。(略)
私たち大人は、さまざまな役割を演じながら生きています。夫や妻という役割、親という役割、サラリーマンという役割……時と場合に応じていろんな役割を演じながら、かろうじて人生の時間を前に進めています。それなのに大人は子どもに「本当の自分を見つけなさい」と今までは教育してきた。これは大人の欺瞞に過ぎません。タマネギには、どこまでが皮でどこまでが中身だという概念はありませんよね。人間もそれと同じで仮面の総体が人格と考えられるわけです。中核になるものなんてなくて、さまざまな仮面、つまり社会的な関係が自己を作っているはずなんです。〈脳と心の対話8〉「演じる私」 平田オリザ p4
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なぜ、写真を撮るのか。それは、知らないことを伝えたいと思うからです。同じ地球上に住み、同じ空気を吸って、ひとつの太陽のもとで暮らしているのに、こんな理不尽な状況に追い込まれている人たちがいることを伝えたいのです。(略)
人生は長いけれど、世界はとても広くて、同じ時代に生きながら決して出会うことのないものでいっぱいです。でも、自ら周囲に思いを巡らせると、異文化や歴史や人々の暮らしも知って考えることができます。この知識の蓄積が、はっと何かと結びつくことがあります。ネット社会の今は、地球の裏側の情報もどんどん入ってきて、世界は狭くなっていますが、同じ地球上でまだ戦争はなくなっていない。知って行動を起こすかどうかはそれぞれです。ただ、知らないこと、無関心なことは、戦争を容認していることと同じなのではないでしょうか。「家庭力37/大石芳野」 p24
目次
- グローバルCOE特別講義〈脳と心の対話〉8
演じる私…平田オリザ
- 学園ニュース
- [大学]JUSTEC 2010開催…大谷千恵
- [大学&K-12]FC町田ゼルビアとの教育連携・玉川マッチ開催
- [大学]芸術学部+青山円形劇場提携公演Parforming Arts Fair 2010開催
- [Others]出版部主催「科学あそびの時間」
- 学術研究所だより 4
体育と健康を科学する 体育・健康科学研究センター
- 行事報告
高学年音楽祭…田中秀典
- K-12 FOCUS 4
MMRCでの読書へのアニマシオン
- 子どもの本で世界をまわる 4
歴史を守りつつタフに生きる〈中東〉…黒木英充
- 見つめる&見つめ直す…家庭力 37
大石芳野 写真家
- 玉川の丘めぐり 4
師弟同行の精神が息づく「咸宜園」…白柳弘幸
- Book Review 73
『ルリボシカミキリの青』…神澤 隆
- 課外活動訪問 4
水泳部=自然と水と向き合う
- 玉川の先輩を訪ねて 54
戌井昭人 鉄割アルバトロスケット主宰・作家
- たまがわ健康教室2010
早起き早寝を見直そう
- Career Navigation '10
仕事インタビュー〈日本語教師〉&イベントスケジュール
- 学外施設定期便 4
本当の自然を体感する〈神奈川/箱根〉…杉本和永
- 同窓会インフォメーション
愛知支部より「いりゃせ なごや」
- 学園日誌…小原芳明
- Photos of the Day│ロボカップ世界大会で優勝!
- 学園スケジュール│玉川大学・K-12のイベントと入試に関するご案内
- 表紙の風景│flags 介川貴晶 【作】
- 教育博物館館蔵資料紹介 225│孔夫子之像…菅野和郎
- TAMAGAWA HEADLINES 学園近況
- 玉川の仲間たち│ヤマガラ…田淵俊人