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社会教育実習の受講生が「男女の『フツウ』」について考える講座を企画実施

2022.12.23
講座の様子

社会教育実習の履修生が、男女の「フツウ」について考えるワークショップ型の講座を企画実施しました。このような講座を企画する場合、専門家を招聘することが多いですが、今回の講座では講師を立てず、「玉川大学生で考える男女の『フツウ』」というタイトルで、学生がファシリテーションをしました。私たちが日常的に「普通」だと思っていることは、本当に普通のことなのだろうか、正しいことなのだろうか、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が無いだろうかということを、男女に関する事柄から捉え直し、学生同士で学び合いたいという想いから「玉川大学生で考える男女の『フツウ』」というタイトルを付けました。

企画に先立ち、ラーニング・コモンズの入口では、男女共同参画をテーマにしたパネル展示を実施。講座前の知識のインプット機会として、また、男女共同参画を学生の皆さんに考え直してもらうきっかけにもなりました。

今回は、この講座とパネル展示についてご紹介します。

講座「玉川大学生で考える男女の『フツウ』」の実施

企画の案内
  • 日 時:
    11月29日(火)17:00~18:40
  • 場 所:
    大学教育棟 2014 ラーニング・コモンズ 302教室
  • 参加者:
    教育学部・リベラルアーツ学部・文学部などの学生約20名

学生は、「社会教育実習」の前に履修した「社会教育課題研究」の演習で、ジェンダーを始め、人種差別、障害者差別などの様々な人権問題や、格差社会、社会的排除、SDGsなどの現代社会の課題について学ぶ中で、自分たちがいかに社会的課題に疎かったのかに気付き、「社会の課題は自分自身の人生に大きくかかわってくるという自覚をもつこと、自分事として捉えられるようになることが重要」だと実感しました。また、「大学生に訴えかけるには、私たち学生が自分たちの力で実行することに意味がある」と考えたことから、専門家を講師として招聘する講演会形式を取らず、ワークショップ形式で自分たちがファシリテーションをする形を模索したそうです。

新聞記事に基づき企画を練っている様子

しかし、企画をまとめるのは容易ではありません。大学生にも関心のある男女に関する日常的な事柄から、差別や偏見に対する意識を培いたいとは思うものの、「1つ案を出して、一歩進んだかと思えば、この言い方は差別表現なのではないか」などと浮かんだアイデアに対して様々な視点から考え、迷いながらも進めていきました。

講座では、写真を用いてアンコンシャス・バイアスについて解説し、日常的に目にするCMなどに潜むジェンダーについて検討した上で、「デート時の支払い」のシミュレーションから自らの中にいつの間にか刷り込まれた「フツウ」をワークショップ形式で捉え直しました。話題はさらに発展していき子どもの頃から「フツウ」だと思っていることと社会的課題が結びついていることを、省察的・協働的に学び合いました。

日常生活に見られる「フツウ」を捉え直してみる
デートの時、「自分だったら…」と考えてみる
「フツウ」だと思っていることと社会的課題との関係性を考える

講座に参加した学生からは、次のような振り返りがありました。

  • 偏見とは自覚なしにあるものと改めて恐ろしく感じました。何年かかるかわからないけれど、社会におけるアンコンシャス・バイアスによる生きづらさが無くなればと思います。
  • 「好意的性差別」は考えさせられた。「優しさ」で気をつかっているつもりが、差別につながっているとは…。今日学んだことを一過性の関心ではなく「アンコンシャス・バイアス」を自分事として考え続けたい。
  • 「家計は男性が支えないといけないものなのか」ということについて考えてみて、男性側の意見が「支えなくてはいけない」というものばかりで驚きました。わたしは「支えてもらいたい」「おごられたい」とも思わないので、男性の意見を知って勉強になりました。
  • 合理的な区別は必要だと思いますが、偏見によって可能性が消えないような世界になれば良いな。
  • 自分自身「らしさ」というものに囚われている部分があるため、「らしさ」に縛られないことを考える良い機会だった。

パネル展「発見!ジェンダー」の開催

展示の様子
  • 期 間:
    11月17 日(木)~11月28日(月)
  • 場 所:
    大学教育棟 2014 ラーニング・コモンズ 入口

講座に先立ち、多くの学生が利用するラーニング・コモンズの入口で、パネル展「発見!ジェンダー」を開催しました。

展示物は、公益財団法人日本女性学習財団からお借りした「発見!ジェンダー」の一式であり、暮らしや社会に潜むジェンダーや男女共同参画の大切さについて、イラストから考えられるものです。解り易いイラストなので、ジェンダーや男女共同参画について多くの学生に関心を持ってもらい、さらに興味・関心を持った学生が講座に申し込んでくれることを願い、この展示を行いました。

パネルと共に、ジェンダーに基づく現代社会の問題や生き方について考えられる新聞記事を4つのテーマで掲示し、身近な問題や自分事として捉えてもらえるように、学生から学生に問いかける吹き出しを付けるなどの工夫をしました。

また、参加者には、展示を見た気付きを、星形の付箋紙に書いて、クリスマスツリーに貼ってもらいました。クリスマスツリーの形にしたのは、クリスマスという楽しい機会にも、実は様々な課題が潜んでいることに気付いてほしいと考えたからだそうです。

展示の準備をしている様子
4つのテーマ
気付きのクリスマスツリー

「気付きのクリスマスツリー」にはさまざまな感想が貼られていました。 その一部をご紹介します。

学生が展示を見ている様子
  • この展示を見て、私たちの日常には気付かないうちにジェンダーの偏見などが当たり前のようにすり込まれていることを再認識しました。男らしさや女らしさは本当に必要ないなと改めて思ったし、それよりも自分らしくあることを強調して生きたいと思いました。
  • 男性に「男らしさ」を求めることも差別にあたることに気付きました。無意識的にそういった差別を自分もすることがないよう気を付けていきます。
  • 男性です。「子どもが欲しい!」と思っていましたが、出産する女性の意見や生まない選択をする内実を知り、はっとしました。何よりもまず、知ることが大切ですね。
  • 私たちは子どもの頃から「女らしく」とか「男らしく」とかのレッテルを貼られて育てられるのが「フツウ」だったように思います。「その人らしく」を認められる社会は、一人ひとりのまなざしを「性」ではなく一人ひとりの「内面」へと向ける教育観だと思いました。
  • 勉強ができないことは本人の努力が足りないからだと考えることが多かったが、努力だけでは難しいことが、貧困の連鎖の図からわかりました。

挑戦するからこそ得られる学びと達成感

企画を振り返っている様子

講座とパネル展示を企画実施した学生と、本企画に至るまで「社会教育課題研究」と「社会教育実習」を指導した教育学部の中村香教授から話を聞きました。

講座を終えた学生からは、「『自分たちで1つの大きなプロジェクトを成し遂げたぞ!』という経験は、絶対に自分たちの力になると信じています」、「終わってみて、個人的に想像していた以上の達成感がありました」などと語っており、約1年間の学びの成果を実感するとともに、達成感を得られたようです。

また、ワークショップが成功した背景には、「参加者の方々がレスポンスやディスカッションに積極的に取り組んでくれたことがあると思います」と、参加者への感謝も述べていました。指導した中村教授も、「アイスブレイクの段階から講座に積極的に参加しようと思える語りかけをしたのが素晴らしかった。ラーニング・コモンズという場にふさわしく、企画者と参加者の協働的な学習の場を創出できていた」と振り返ってくれました。

一方で、新たな課題も見つけていました。講座の中で、「男性のみなさん!」「女性のみなさん!」と分けて意見を求めた場面があり、そのことをアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)やマイクロアグレッション(小さな攻撃性)になると、参加者から意見をいただき気付かされました。進行をしやすくするためにそのような形式をとり、ワークショップの締めくくりには「性別だって本当は真っ二つに分けて考えること自体間違っています。LGBTQと言ってもその境界線はその人その人で違ってくるので、何かに分類しようとすると取りこぼされる人がいるということを忘れないでほしいです」と伝えていましたが、「嫌な気分にさせてしまったのならば申し訳ないし、私たちの意識がまだそこまで到達していない証拠でもあるのかと思います」と、コメントを真摯に受け止め、反省していました。

他の学生からは、「今回のような失敗出来たからこそ、反省でき、次に繋げられるのだと思う。これまでの私は失敗が悪いことだと思い、怖がっていたが、今年はチャレンジし続けたおかげで、失敗をたくさん経験することができた。また、経験をたくさんしたからこそ生まれる自信に、初めて出会うことが出来た。失敗を恐れずに、来年も挑戦し続ける自分でありたいと思う」と話をしてくれました。中村教授も「実践を協働的に振り返ることで得た気づきを次の実践に生かす省察的実践者として学び続けることができれば、失敗も成功へのプロセスになる」と学生の挑戦を後押ししていました。

社会教育実習を終えた学生が、社会教育士として社会の様々な課題に向き合い、それぞれの分野で活躍してくれることを期待します。

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