実在企業のリブランディングをコンペ形式で提案する 芸術学部アート・デザイン学科のプロジェクト型授業
2023年度前期、芸術学部アート・デザイン学科の大島ゼミでは、学生がグループ単位で共立食品株式会社(以下、共立食品)の“リブランディング”(ブランド戦略を策定し、新たなブランドイメージを構築する取組み)案をコンペ形式で競うプロジェクト型授業を実施しました。
共立食品は、スーパーなどで多くの商品が扱われる業界のリーディングカンパニーであり、「お菓子コンテスト」など消費者に食の楽しさを知ってもらう活動も積極的に展開しています。本プロジェクトでは、同社創業100周年に向けてブランドマークとイメージを一新する依頼を受けた想定で、ゼミ内の4グループがそれぞれのブランド戦略の根幹となる目指す姿を提案し競い合いました。そして、7月19日に行われた前期最終授業において、玉川学園出身者で共立食品常務取締役の津村勇三様をはじめマーケティング部、営業部の方々を前にプレゼンテーションを行いました。
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以下に、大島ゼミの4チームによるリブランディング案プレゼンテーションの概要をご紹介します(発表順)。
株式会社.Alpha
企業のステップアップを支援する「+α」を理念とする株式会社.Alpha。「絆を大切にし、あたたかく、確かな企業であり続けることを目指す」という共立食品の企業理念を尊重し、お菓子作りを身近に感じてもらい、顧客の年齢層を拡大するための以下の3つの提案を行いました。
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1.Happy Creator
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お菓子作り未経験者にも楽しさを伝え、幅広い層に愛されるブランドづくりを提案。お菓子作りコンテストやレシピの情報発信に加え、自分でお菓子を作る喜びを伝える広告展開により、主婦層だけでなく新たな顧客層を開拓します。
2.Dream Pâtisserie
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お菓子職人という職業への憧れに応え、共立食品のブランドを「憧れを叶え、心を満たす存在」へとリブランディングします。「Dream Pâtisserie」というコンセプトのもと、シックで高級感のあるデザインをホームページや商品に導入。メインビジュアルにはホールケーキを使用し、またエレガントなレシピ帳を同封することで若い世代の心を掴みます。
3.Cheer Leader
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お菓子づくり挑戦したい人を応援するブランドを目指します。動画レシピの配信や子どもが主役の広告など、お菓子作りへの一歩を踏み出すきっかけを提案。オレンジを基調とした明るいビジュアルや、マスコットキャラクターなどで親しみやすい企業イメージを築きます。
HOPE HILL
「玉川の丘」ならぬ「希望の丘」という社名を持つこのグループは、徹底した企業分析と競合企業調査に基づき、「“食を楽しむ時代を支え、“食”の原点を見つめ直す時代のリーディングカンパニー」へと成長させるための3つの戦略を提案しました。
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1.熱血教師
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お菓子作りや料理を楽しく熱心に教えてくれる「熱血教師」をモチーフにしたエプロンキャラクターを使った企画。ホームページや広告では、書籍をモチーフにしたデザインで「学べる」イメージを強調。また、レッドカップキャンペーン(学校給食支援)など、食を通じた社会貢献活動も多角的に提案。再生紙パッケージのリサイクルマーク表示もその一例です。
2.栄養管理士
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運動や子育て、仕事など、忙しい毎日を送る人々の健康をサポートする「食と健康のパートナー」として、共立食品ブランドを強化します。消費者の声に耳を傾け、パーソナルな栄養管理を提供。新たな取り組みとして、パーソナルジムの設立やスポーツ業界への支援、食生活改善イベントの開催などを提案します。
3.ハリウッドスター
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華やかな商品デザインと「食はコミュニケーション」という概念を軸に、Z世代を中心に企業ブランドを浸透させます。星をモチーフにしたカラフルなデザインで、ホームページ・広告・パッケージを作成。また、アフリカのカカオ豆や中国の小麦の生産過程を紹介する動画を制作し、収益をUNHCRに寄付することで社会貢献とブランドイメージ向上を両立します。
株式会社me2ta
社名は、変化を意味する「meta」と「新しい自分に出会う(meet a new self)」を組み合わせた造語です。ニーズに合わせて変化する企業をサポートします。メンバーは、企業分析や競合調査に加え、共立食品の製品を使って自らお菓子作りを体験。ターゲットを従来の30代女性だけでなく、20代男性にも訴求できるよう、3つの新たな方向性を提案しました。
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1.Ambitious Learner(意欲的な努力家)
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「絆」「家族」を大切にし、顧客視点で常に進化を続ける企業として信頼を獲得し、さらなる成長を目指すブランディングを推進。イメージだけでなく、企業理念を明確に伝える広告やホームページを展開し、共立食品のメッセージを確実に発信します。さらに、商品開発の順序を店頭に表示することで、企業の歩みを可視化する取り組みも提案しました。
2.Motivation Provider(モチベーションを提供するもの)
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共立食品が培ってきた歴史と実績を活かし、お菓子作り初心者から上級者まで、誰もが楽しめるようなブランド戦略を展開します。製品パッケージを雑誌のようなユニークなデザインにするなど革新的なアイデアを取り入れ、お菓子作りに対する興味関心を高めることを目指します。
3.Chance Maker(きっかけを 創り出す人)
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お菓子作りを男性や若者など新たな層に広げるブランド戦略を提案。広告やホームページで初心者向けのレシピや情報を発信し、製菓材料のパッケージに作り方を記載します。さらに、スーパーと連携し必要な材料をワンストップで揃えられるコーナーを設置することで、より手軽にお菓子作りを楽しんでもらえる環境を提供します。
株式会社Creare
「創造」を意味するラテン語「Creare」を社名に掲げ、ブランドイメージの刷新と新たな価値創造を目指すリブランディング会社です。メンバーは、スーパーでの現地調査やSNS上の口コミ分析、競合との差別化などを基に、以下の3つの方向性を提案しました。
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1.食職人
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「食と人を繋ぐ職人」というブランドイメージを確立するため、「継(継続力)」「匠(技術力)」「誇(自負心)」の3つのキーワードを軸としたブランド戦略を展開します。広告・ホームページ・パッケージデザインにおいて、シンプルかつ洗練されたデザインを採用し、視覚的に訴求。さらに、製品の製造過程を公開する冊子や動画を制作することで、安心感と技術力をアピールします。
2.縁の下の力持ち
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「食」を裏側から支える企業として、共立食品の存在感を高めます。「誠(誠実さ)」「共(共感力)」「柔(柔軟性)」のワードをコンセプトに、広告・ホームページ・パッケージに「支える」イメージの弧をモチーフとしたデザインを提案。また、ホームページでは製品のアレルギー情報を消費者が簡単に検索できるようにすることで、消費者の安心につながる取り組みも行います。
3.開拓者
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「食」のトレンドを牽引する企業として、共立食品の革新性をアピール。「視(観察力)」「志(向上心)」「挑(チャレンジ精神)」をキーワードに、「まだ見ぬ未来へ」というキャッチコピーと三角形のモチーフで未来志向なイメージを表現します。新たな取り組みとして、オリジナルカラーのチョコペンオーダーサービスを開始し、お客様の創造性を刺激します。
共立食品の皆様からは、「4社の提案がどれもユニークで楽しめた」「学生の企業分析の深さに驚いた」「プレゼンのクオリティが高い」など、高い評価をいただきました。後日受け取った評価表には、実際のビジネスシーンでどのように提案を活かすかについての具体的なアドバイスが数多く記載されていました。学生たちは、今回の貴重なフィードバックを活かし、今年度末の最終プレゼンに向けて、より完成度の高いリブランディング提案に取り組んでいきます。
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大島ゼミ
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玉川大学芸術学科アート・デザイン学科 非常勤講師 大島由久
世界最大のブランディング会社「Landor」現ゼネラルマネジャー兼エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター。
世界の最新事例を交えながら実践形式でブラディングに取り組み、戦略の組み立て方、デザイン表現、プレゼンテーションスキルの向上を図るゼミを担当。