文化財を身近に感じる取り組みを学生たちがアシスト!玉川大学工学部デザインサイエンス学科の学生たちが、座間市指定重要文化財「表裏型顔面把手」の3Dモデル化に挑戦
玉川大学(東京都町田市/学長:小原一仁)の工学部デザインサイエンス学科インタラクションデザイン研究室の青山恭章さん(4年生)と木村光希さん(3年生)が、座間市指定重要文化財「表裏型顔面把手」の3Dモデル化に挑戦。学内メーカーズフロアにあるデジタルファブリケーション機器を駆使し、約15回の試行錯誤を重ねて完成させた作品が市の式典で活用されました。
2022年10月、水道管付設替工事中に発見された「表裏型顔面把手」は、考古学資料として市初の指定です。縄文時代中期(約5500年~4500年前)の深鉢型縄文土器の一部であり、口縁部には表裏両面に顔面が模された特徴的な把手があります。このタイプの遺物は全国的にも非常に珍しく、全国で類型が2例報告されているのみと大変希少性が高いものです。
同市教育委員会では、一般公募で文化財の愛称を募集し、多くの応募の中から選考を行いました。選考の結果、決定した愛称を発表するとともに、学生たちが制作した造形作品を副賞として進呈しました。今後、座間市教育委員会は、本文化財の複製を制作し教育現場での活用を検討しており、引き続きインタラクションデザイン研究室と連携して、具体的な計画を進めていきます。
- 本画像はポリ乳酸(PLA)樹脂100%のモデルですが、座間市にお渡しした実物は、木材20%・ポリ乳酸80%の複合素材で作られています。
依頼経緯
座間市教育委員会は、市指定重要文化財「表裏型顔面把手」の複製体を制作し、それを教育に活かしたいという思いから、工学部デザインサイエンス学科に相談に来ました。同学科の平社講師は、相模原市での同様の取り組み経験をもとにメーカーズフロアを活用し、学生たちと一緒にこの文化財を題材とした実践的な学びの場を提供できるのではないかと考え、市と相談し今回の連携が実現しました。
制作過程
木村さんが3Dスキャンと画像処理を担当しました。座間市役所へ赴き、同市教育委員会立ち合いのもと文化財の表面の凹凸や欠け、内部の空洞など細部まで丁寧にスキャンし、高精度の3Dデータを生成。その後、メーカーズフロアに戻り、平社講師の指導のもとデータ上の不要な部分を切り離すなど、後工程に必要な処理を行い青山さんに引き継ぎました。
青山さんは、研究室所属前から3D編集ソフトの独学に励み、数多くの造形作品を作り上げてきました。
金属加工にも強い関心を持ち、メーカーズフロアの設備を積極的に活用しています。木村さんが作成した3Dデータを基に3DCADを用いてデータの統合や編集を行い、3Dプリント用のデータに仕上げました。特に、データの結合部分の修正など細心の注意を払い、高精度のデータに仕上げました。また、造形物の形状から、3Dプリント時にはサポートする部材も合わせて出力する必要があり、これまでの制作経験に基づいて適切なサポート材を設計しました。3Dプリンター用の素材は、土器の質感を再現するため木材を20%含んだ特殊な素材を採用。出力には約13時間を要し、2台の3Dプリンターを並行して稼働させながら何度も試作を重ねることで、最終的に満足のいく作品に仕上げることができました。
学生のコメント
木村さん
「授業で3Dスキャナーの操作方法を学んだことはありましたが、実際にスキャンするのは初めてで貴重な経験となりました。撮影前に平社先生の指導のもと、何度も練習を重ね本番に臨みました。
細部まで正確にデータ化するため何度もスキャンを重ねてデータを蓄積していく間、市役所の方にも見守っていただき、興味を持って見てくださり、とても嬉しかったです。」
青山さん
「私たちが制作した3D造形が、座間市の方々や受賞者の方にも喜んでいただけたと聞き、大変嬉しく思います。これまで、自分のアイデアを形にすることに主眼を置いて作品作りをしてきましたが、今回は、依頼主の期待に応えるという新たな視点を持つことができました。データの欠損部分を手作業で修正したことで、より精度の高い作品に仕上げることができたと感じています。細部までこだわって制作したことが評価され、大変光栄です。」