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福島県川内村との地域連携~包括連携協定締結3年を迎えさらに進化~

2026.10.16

人と地域のつながりを、次の世代へ

玉川大学と福島県川内村との交流は、2013年に教育学部の原田眞理教授が川内村を訪れたことをきっかけに始まりました。

川内村は、2011年に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の影響により、一時全村避難を強いられました。原田教授は、災害後の心のケアや放射線の健康への影響を専門としており、川内村を訪問しました。2014年からは、原田教授が指導する臨床心理学ゼミが川内村での合宿を継続して実施し、川内村の子どもたちや地域の方々との交流を重ねています。

こうした長年の交流を背景に、2023年には学校法人玉川学園と川内村が包括連携協定を締結。教育・文化、産業振興、まちづくり、環境保全、人材育成、学生のインターンシップやフィールドワークなど、幅広い分野で連携・協力しています。

現在では、学生が地域を訪れて学ぶだけでなく、地域の子どもたちとの教育活動、川内村産の食材を利用した学食コラボ企画、地域の魅力を発信する取り組み、卒業生を介した学校とのつながりなど、さまざまな形へと交流が広がっています。

2026年夏のゼミ研修 naturadistillにて。代表大島草太さんと

森と水に囲まれた川内村

(写真提供:福島県川内村)

川内村は、福島県浜通り地方の阿武隈山系中部に位置し、山々に囲まれた高原性盆地にあります。大滝根山をはじめとする山々を水源とする木戸川が村の中央部を流れ、その周辺に集落や耕作地が広がっています。

村の総面積は19,735ha。そのうち森林面積は17,570haで、村の面積の約88.9%を森林が占めています。森林には人工林だけでなく、広葉樹を中心とした天然の樹林などもあり、川内村の暮らしと自然を支える重要な環境となっています。

川内村の自然は、単に「豊かな自然」というだけではありません。山や森林、川、農地などが人々の暮らしとつながり、地域の文化や産業、日々の営みを育んできました。

学校法人玉川学園と川内村の連携においても、こうした自然や地域の暮らしを実際に訪れて感じ、地域の方々の話を聞きながら学ぶことを大切にしています。

モリアオガエルの生息地「平伏沼」
(写真提供:福島県川内村)
名勝地:不動の滝(写真提供:福島県川内村)

原田ゼミが大切にしている「こころの理解」

原田眞理教授の専門は、臨床心理学、精神分析、医療心理学、スクールカウンセリングです。

原田ゼミでは「目に見えないこころの理解」をテーマに、目に見える行動や言葉だけで判断するのではなく、その背景にある思いや経験に耳を傾けることを大切にしています。

川内村との交流においても、学生が地域の人や子どもたちと直接関わり、話を聞き、その人が大切にしているものや地域の背景を知ることを重視しています。

東日本大震災から時間が経つ中で、震災の経験を風化させず、当事者意識を持って防災について考えること、風評などの偏った考えに対して、正しい知識を伝えることができるようになること、そして川内村の魅力を広く伝えることも、原田ゼミが川内村で活動する目的の一つです。

Café Amazonにて「村民と大学生の語る会」

小学生と大学生が一緒につくる「二十歳のつどい記念ジン」

2026年、原田ゼミは、川内村、川内村教育委員会、川内小中学園、naturadistill川内村蒸溜所とともに、「二十歳のつどい記念ジン製作プロジェクト」に参加しました。

このプロジェクトは、川内村で二十歳を迎える人たちに、「二十歳のつどい」で記念のジンを贈るという、地域ならではの「成人を祝う文化」をつくる取り組みです。原田ゼミは、授業の設計や運営補助、広報活動など、教育的な側面からプロジェクトに関わっています。

2026年度は、川内小中学園の小学3・4年生を対象に授業を実施しました。

授業では、「二十歳のつどいとは何か」「二十歳とはどのような時期なのか」といったことを考えながら、川内村にある植物などを「ボタニカル」として取り上げ、地域ならではの香りを探しました。

川内村で採れたカヤの実、ウメの花、タラノメ、シイタケなど、地域にあるさまざまな素材を実際に手に取り、一つひとつの香りを確かめながら、自分たちのジンに使いたい素材を選びました。

普段の暮らしの中で何気なく目にしている植物や地域の食材も、「香り」という視点から見つめ直すことで、新たな魅力に気づくことができます。子どもたちは素材の香りを感じながら、自分たちが暮らす川内村にはどのようなものがあるのか、そして、その香りからどのような思い出や風景を思い浮かべるのかを考えました。

さらに、子どもたちは村内で実際に素材を採取し、ジンづくりの仕込みにも参加しました。地域の自然に直接触れ、自分たちで素材を選び、ジンづくりの工程を体験することで、普段暮らしている川内村をあらためて見つめ直し、その魅力を考える機会となりました。

自分たちの暮らす地域にあるものを知り、その香りを感じ、自分たちの手で一つのジンをつくる。そして、そのジンが10年後、二十歳になった自分自身のもとに届けられる。こうした時間を超えた体験を通して、子どもたちが地域とのつながりを感じることも、このプロジェクトの大切な意味の一つです。

「今」の経験を、10年後の自分へ

このプロジェクトの大きな特徴は、小学4年生が自分たちのためのジンをつくり、それを10年間保存して、二十歳になったときに受け取るという時間の長さにあります。

小学4年生の今の自分が感じている川内村。
友達と一緒に見つけた地域の植物。
地域の人から聞いた話。
自分たちで考えてつくったもの。
それらを10年間大切に保管し、
二十歳になった自分がもう一度手にする。

この仕組みを通じて、子どもたちが「10年後の自分」を思い描きながら、今暮らしている地域について考える機会をつくっています。

「川内村には、誇れるものがある」

原田ゼミがこの活動に関わる意味は、ジンという商品をつくることだけではありません。

川内村の自然や文化、人とのつながりを題材に、子どもたち自身が「自分たちの地域には、こんな魅力がある」と気づき、誇りをもつこと。
そして、その気づきを10年後の自分自身につなげていくこと。
原田ゼミでは、今回の授業を通して、子どもたちが川内村への郷土愛を育むことを目指しました。これは、地域の魅力を大人が教えるだけの活動ではありません。

子どもたち自身が地域を知り、自分たちの言葉や感覚で地域の価値を見つけていく。

その過程に大学生が寄り添い、一緒に学ぶことに、この活動の大きな意味があります。

卒業生がつなぐ、大学と地域

今回の活動では、川内小中学園の小学4年生の担任を務める柳沼勇太先生が、原田ゼミの卒業生であることも大きな意味を持っています。

大学で学んだ卒業生が川内村の学校で子どもたちを育て、そこへ原田ゼミの現役学生が訪れ、一緒に学びをつくる。

大学での学びが卒業後の地域で生かされ、その地域に後輩の学生が再び学びに訪れる。

そこには、学生、卒業生、学校、自治体、地域の方々が人を介してつながっていく循環があります。

川内村との交流は、大学と自治体との一方通行の関係ではなく、人と人とのつながりを通して次の世代へと受け継がれています。

後列左端:柳沼先生(2025年教育学部教育学科卒業)

学生自身も、地域から学ぶ

川内村での活動は、子どもたちへの教育活動であると同時に、大学生にとっての学びの場でもあります。

学生は地域の方々の話を聞き、子どもたちと関わり、地域の自然や文化に触れながら、教室だけでは得られない経験を重ねています。

川内村との交流を通じて、学生自身が「地域とは何か」「人と人とのつながりとは何か」「地域の記憶を次の世代にどう伝えるのか」を考えるきっかけにもなっています。

こうした実践を積み重ねることは、臨床心理学を学ぶ学生にとって、人の話に耳を傾け、その背景を理解しようとする姿勢を身につける機会にもなっています。

2026年ゼミ研修 福島大学の学生も一緒に活動した川内小中学園にて

地域の記憶を、未来へ

川内村では、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故から15年が経過する中で、人口減少や災害経験の風化、記憶の継承などが課題となっています。

一方で、川内村には、長い年月の中で地域の人々が育んできた自然、文化、暮らし、そしてそこに暮らす人々の物語があります。

2026年度には、大学生が川内村に滞在し、地域の方々へのインタビューを通じて、里山の暮らしの中で大切にされてきた「もの」や「こと」を見つけ、それをカプセルトイとして表現する取り組みも行われており、原田ゼミの学生も参加しています。地域の記憶や物語を新しい形で発信し、川内村との新たなつながりを生み出すことを目指しています。

こうした活動にも共通しているのは、地域を外から評価するのではなく、地域に入り、地域の人の声を聴き、その土地で大切にされてきたものを知り、それを次の世代へつないでいくことです。

人がつながり、学びがつながる

川内小中学園9年生が本学を訪問
キャンパスツアーにて

川内村との地域連携は、学生が地域を訪れて終わるものではありません。

2026年9月には、川内小中学園の9年生が本学のキャンパスを訪れました。川内村に高校や大学がないことから実現したこの取り組みでは、子どもたちが大学の施設を見学し、そこで学ぶ学生の姿にふれることで、大学をより身近に感じ、将来の自分の姿を思い描くきっかけとなることが期待されます。これもまた、人と人とのつながりから生まれる大切な学びの一つです。

地域の子どもたちが大学生と出会い、大学生が地域の方々から学び、卒業生が地域で活躍し、その経験がまた次の学生へとつながっていく。

自然、地域の暮らし、人の記憶、子どもたちの学び、大学生の成長、そして卒業生の活躍。

それぞれがつながることで、学校法人玉川学園と川内村との関係が、人を介して少しずつ育まれています。

川内村の豊かな自然と、そこに暮らす人々との出会いを学びの場として、学校法人玉川学園はこれからも川内村との交流を続けていきます。

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