玉川大学とセントラルルソン大学(フィリピン共和国)が国際共同研究の協定を締結

2021.07.15

~SATREPSバナナ・カカオの難防除病害管理技術の創出を目指した共同研究がスタート~

玉川大学(東京都町田市/学長:小原 芳明)とセントラルルソン大学(フィリピン共和国/学長:Edgar A. Orden)は、2021年7月13日(火)に「難防除病害管理技術の創出によるバナナ・カカオの持続的生産体制の確立」を目的とする国際共同研究の協定締結の調印式をオンライン上で行いました。

【協定締結の背景】

<調印式の様子>

今回の協定締結は、昨年、玉川大学が中心となり国内7つの研究機関と共同提案した研究テーマが科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)による「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の令和2年度新規採択研究課題として条件付採択されていたものが、外務省による相手国政府との国際約束の締結、JICAによる相手国関係機関との実施協議などの調整がすべて整い実現したものです。
締結式当日は、玉川大学・セントラルルソン大学双方の関係者のほか、科学技術振興機構(JST)の長峰司研究主幹をはじめ、在東京フィリピン共和国大使館のRobespierre L. Bolivar主席公使らも出席しました。締結式はオンライン実施となりましたが、和やかな雰囲気で進行し、今後の共同研究が円滑に進むことが期待される会となりました。この協定締結により、5年間のSATREPSとしての共同研究が正式にスタートします。

【研究の概要】

本研究では、開発途上国で深刻化し、世界的に解決が求められている課題であるバナナ・カカオの重要病害への持続的かつ効果的な防除を目的としています。微生物の分類・生理生態学、分子生物学等の基礎的研究と、それに積み上げられた植物病理学、土壌肥料学、栽培学ならびに工学などの応用を融合し、病害の予防と防除の視点から、フィリピン共和国において植物健康診断、病害診断薬に加え深層学習による診断および病害発生予察AIを開発し、さらに、安価に行える土壌還元消毒と栽培管理技術を併用して病害防除の対策を講じ、経済性を含めて総合的な判断による評価・改良を加え、病害防除管理技術体系を構築するものです。

【セントラルルソン大学の概要】

セントラルルソン大学は、首都マニラの北にあるヌエバエシハの科学都市ムニョスにある名門高等教育機関の1つで、ムニョス科学コミュニティの中心機関となっています。1907年に農業専門学校として始まった同大学は、1950年、当時の大統領令により、セントラルルソン農業大学に転換され、専門的な農業者を育成する4年間のカリキュラムを提供した国内初の高等教育機関に位置づけられ、1964年には、共和国法により国立セントラルルソン大学となりました。
現在は農学部、芸術社会科学部、理学部、経営学部、教育学部、工学部、水産学部、家政産業学部、獣医学部の9学部を擁しており、学生数約14,000人の総合大学です。

【研究体制】

日本国研究体制

  • 研究代表機関 玉川大学 【研究代表者:農学部教授 渡辺京子】
  • 共同研究機関 三重大学 東京農工大学
  • 協力機関   日本大学 森林研究・整備機構 東京農業大学 株式会社 ユニフルーティー ジャパン

フィリピン共和国研究体制

  • 研究代表機関 セントラルルソン大学 【研究代表者:副学長 Renato G.Reyes】
  • 協力機関   フィリピン共和国農業省

国際共同研究実施期間

2021年9月~2026年8月(計60か月)(予定)

【SATREPS総事業費】

JST委託研究経費:1.75億円程度
JICA:ODA技術協力予算経費:3億円程度

【研究の背景】

世界人口が増大の一途を辿る中、持続的農業生産は人類の食糧確保と開発途上国の健全な経済発展において最重要な基盤です。その中でもバナナとカカオは開発途上国において主要な換金作物です。日本では、バナナが流通果物の中で年間消費量のトップを占め、1世帯当たり年間消費量は18.43kgであり、バナナ自体が平時の食料安全保障において安定的輸入が確保されるべき重要作物として位置づけられています。その主な輸入元は共同研究を行うフィリピン共和国で、総輸入量の85%を占めています(1973年~現在)。フィリピン共和国内でもバナナ産業は20万人以上の一大雇用を生み出しており、持続的な生産とその拡大による農村住民の所得向上は、同国の国家開発計画に記された最重要課題と位置付けられています。

<病害が発生し甚大な被害を受けている圃場>

ところが、近年、バナナもカカオも防除法が開発されていない病害が多発し、同国ミンダナオ島では2019年に被害を受けた約3,000haのバナナの耕作地が放棄されたとの報告もあります。さらにカカオについても、同国の戦略的重要農産物であるにも関わらず、殆どの圃場で病気が発生し、甚大な被害を受けています。
玉川大学を研究代表とする日本国側研究チームは、SATREPSを通じてフィリピン共和国セントラルルソン大学と同国農業省と協働することで、「我が国の農学、工学、経済学の知識・技術」、「産官学の連携」、「フィリピン国の持つ研究ポテンシャル」のそれぞれを活用し既存技術と革新技術によりバナナ・カカオの難防除病害管理技術体系を確立し、破壊的インクルーシブ・イノベーションとして地球規模の課題である食料安全保障問題の解決への貢献を目指します。

【本研究によるSDGsへの貢献】

本研究は、持続可能な開発目標(SDGs)である「2.飢餓をゼロに」「12.つくる責任 つかう責任」「15.陸の豊かさを守ろう」などへの具体的な貢献が期待されます。

2.飢餓をゼロに

本研究で目指す病害防除管理技術は、社会面ではバナナとカカオの持続的生産、収益の増大に繋がり、これによる農家の所得向上、農村部住民の健康と生計向上に貢献できます。病害管理技術を世界中に普及することで世界の食料安全保障にも寄与するだけでなく、経済発展により資金の流入にも繋がることが期待されます。

12.つくる責任 つかう責任

本研究では、研究を通じて設置する微生物遺伝資源センターを基軸とし、植物保護研究への提供はもとより、遺伝資源の産業分野での利用を促進します。また、難防除病害管理技術体系の構築により、環境保全型農業としてフィリピン共和国内でバナナ、カカオの生産性向上に貢献し、適切な防除体系は、減農薬に繋がり、持続可能な農業生産を可能にします。

15.陸の豊かさを守ろう

本研究では、これまでほとんど手付かずであったフィリピン共和国の微生物多様性を明らかにし、微生物遺伝資源センターにて収集菌株の収集を行います。その保存菌株は、農業への活用だけでなく、創薬スクリーニング源などの遺伝資源として産業的な利用が期待できます。

【参考】国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)からのリリース