6年連続優秀賞受賞の快挙!工学部エンジニアリングデザイン学科「デザインパテントコンテスト」特許庁長官賞ならびに優秀賞受賞作品の紹介【4/4追記:3/13表彰式・3/31学長報告】
「デザインパテントコンテスト」は、次世代を担う学生(高校生、高等専門学校生、大学生、専修学校生及び大学校生)が自ら考え出した創作・デザイン(意匠)を応募し、優秀作品を表彰するコンテストです。ものづくりを志す若者の知的財産マインドを育て、知的財産制度への理解を深めてもらうことを目的に、特許庁・文部科学省・日本弁理士会・(独)工業所有権情報・研修館が共同で開催。優秀賞に選ばれた応募作品は、日本弁理士会所属の弁理士が特許権・意匠権取得のための出願書類の書き方から特許庁への出願までのサポートを行っています。
本学ではエンジニアリングデザイン学科の黒田潔教授指導のもと、平成29年から毎年このコンテストに応募しています。令和2年度から同学科の平社和也助手も加わり、毎年数名の学生が「STREAM Hall 2019」のメーカーズフロアを利用しながらチャレンジしています。
令和4年度は合計639件の応募があり、玉川大学工学部4年の安部日菜子さんの「パスタメジャー」と三尾雅人さんの「傘の柄ホルダー」を含む31作品が優秀賞を受賞。阿部さんは昨年度に続き2年連続の優秀賞となり、今回初めて選ばれた三尾さんは特別賞である「特許庁長官賞」も受賞しました。また玉川大学は6年連続の優秀賞受賞の快挙となります。
令和4年度「デザインパテントコンテスト」受賞者に聞く
今回受賞の2名に喜びの声と応募作品の制作意図、ものづくりへの思い、将来の目標などを聞きました。
エンジニアリングデザイン学科4年
三尾雅人さん
作品名:「傘の柄ホルダー」
雨の日に持ち歩く傘。教室やカフェなどに入った時、置き場所に困った経験はありませんか? 柄の部分を机に引っかけようとしてもなかなか安定せずに持て余してしまう……私自身たびたびそんなはがゆい思いを味わってきました。今回私が考え出した「傘の柄ホルダー」は手持ちの傘に簡単に取り付けられ、机やテーブルにしっかりとかけておける便利グッズです。アイデアのポイントは、カメラの絞りのようなメカニズムを使って様々な太さの傘の柄に、容易にジャストフィットする機構を創りあげたことです。
実は昨年度のデザインパテントコンテストにも「傘の柄ホルダー」で応募しました。その時は傘の柄の太さに合わせるラチェット機構を工夫したのですが、残念ながら受賞を逃しました。コンセプトはおもしろいと評価していただきましたが、審査員の方からは「そのコンセプトを活かし、一般の使用者に向けてもう少し親しみやすいデザインを考えてみては」とのアドバイスを受けました。そこで今回は昨年のリベンジをすべく、同じ「傘の柄ホルダー」ながら、機構も、デザインも一新した作品で応募。結果として優秀賞だけでなく「特許庁長官賞」までいただくことができ、喜びもひとしおでした。 エンジニアだった父の影響もあり子供の頃からものづくりが好きでしたが、玉川大学入学後に「STREAM Hall 2019」メーカーズフロアで3Dプリンターなどデジタル機器を駆使したものづくりの面白さに目覚めました。卒業後は大学院に進学し、将来はメーカーで製品開発の仕事をしたいと思っています。今回の受賞は未来に向けての大きな自信にもなりました。
黒田教授のコメント:
新しい作品で応募することもできたかと思いますが、昨年入選できなかった悔しさをバネに同じテーマで取り組みました。何が足りなかったのかを自分なりに理解し、形状や機構を一新して、粘り強く改良を重ねてきました。その成果が「特許庁長官賞」に繋がったのだと思います。
エンジニアリングデザイン学科4年
安部日菜子さん
作品名:「パスタメジャー」
2年連続の優秀賞で感激です。私がものづくりに目覚めたのは大学入学後のこと。子供の頃から絵を描くことが好きで、アート・美術系の大学・学部への進学も考えていました。一方で高校時代は数学も得意だったのでどちらも生かせる分野としてエンジニアリングデザイン学科に入学しました。4年次から黒田潔教授の研究室でルビーの単結晶育成の研究に取り組みました。昨年、黒田教授からの勧めで「デザインパテントコンテスト」に初チャレンジ。資料やテキストをたくさん使う勉強机の上でノート広げる十分なスペースを確保できる「書見台」で応募し、優秀賞をいただくことができました。これはオンライン授業の経験から思いついたアイデアでした。
今回の「パスタメジャー」は自宅で料理をする機会が増えたことで思いついたアイデアです。スパゲティの人数分の分量を量るパスタメジャーは、自宅でもよく使用しますが、不便さを感じていました。調べてみると市販品のパスタメジャーにはさまざまなデザインがあることもわかりました。それらを調査し考案したのが、分量を簡単に図ることができ、そのままパスタも保存できる独自の仕組みです。CADを使って立体構造物の2次元図面を作成する際には、絵を描いていた経験で培われた空間認識力が大いに役立ちました。アートとものづくりには共通する部分が多いのではないかと思っています。
4月からは、「STREAM Hall 2019」メーカーズフロアで後輩たちをサポートする助手として大学に残ります。将来的には「デザインパテントコンテスト」をきっかけに知った意匠審査官をめざし、そのための勉強にも取り組んでいきます。
平社助手のコメント:
ありふれた日用品の中で対象の選び方、そしてセンスがすばらしいです。感性とともにこの一年で論理的に考える力が備わり、バランスのとれた作品になりました。「形にすることが楽しい」という安部さんならではの作品です。
2人の作品は弁理士のサポートを受け、特許庁に意匠登録の出願書類を提出。審査を経て、夏ごろに意匠権の取得が期待されます。
黒田教授と平社助手は2人の受賞に対し、「1年次から努力して着実に積み重ねてきたことが評価された」といいます。「手法や方法論など授業で身に付けた知識や技術がどう応用できるか、二人はこのコンテストを通して、課題の解決策を機能として実現する力が養われたと思います」と平社助手。黒田教授は「工業デザインでは、不便からの発展、課題発見・課題解決能力がとても大事です。4年間でこの力を身に付けられるよう指導することが私たち工学部の使命と考えています。卒業後にはなりますが2人の作品が権利化されることを期待しています」と話してくれました。これまで培ってきた経験を糧に、それぞれの場で活躍してくれることを願っています。
4月からスタートするデザインサイエンス学科においても、さまざまなコンテストや大会への参加を通して実践力を磨き、モノづくりを通して多様化する課題に対応できる人材を育成していきます。
3月13日:東京都千代田区「KANDA SQUARE(神田スクエア)」開催「令和4年度パテントコンテスト/デザインパテントコンテスト表彰式」の様子
本学から特許庁長官賞を受賞した三尾雅人さんが出席し、特許庁 濱野幸一長官より賞状を授与されました。当日は作品のプレゼンテーションも行いました。
オープニングに上映された動画「受賞者の声」では、全国の優秀賞受賞者の喜び声として、安部さんもコメントを寄せました。
3月31日:小原芳明学長に受賞報告
三尾さんと安部さんが、小原芳明学長もとに受賞の報告と作品の説明をしました。説明を受けた小原学長は「おめでとう。この機会に製品化を目指してみては?」とアドバイス。「工学部として机上だけではなく、"本当の物"になることが重要ですね。今後の活躍に期待します」と励ましの言葉がありました。