演劇が地域と大学をつなぐ 玉川大学芸術学部「シバイノタカラバコ」が相模大野で特別公演
2026年10月18日(日)、ユニコムプラザさがみはらで開催された「まちづくりフェスタ」において、玉川大学芸術学部演劇・舞踊学科の地域創生プロジェクト「シバイノタカラバコ」が特別公演を行いました。上演作品は、宮沢賢治の戯曲『饑餓陣営』を原作とする『バナナン大将とおかしの勲章』です。
公演後のポストトークでは、プロジェクトを監修する多和田真太良准教授が、活動の始まりや各地での実践、演劇を通じて地域とつながることの意義を紹介しました。
大学で学んだ舞台芸術を地域に届けるとともに、訪れた土地の文化や人々との出会いを学生の学びにつなげる「シバイノタカラバコ」。今回の公演は、演劇を介して大学と地域が交流する取り組みの一つとなりました。

地域に出向き、演劇を通じて交流する
「シバイノタカラバコ」は、玉川大学芸術学部演劇・舞踊学科が2021年に始めた地域創生プロジェクトです。演劇や舞踊などの舞台芸術を学外へと広げ、身近な場所で地域の人々が本格的な舞台芸術に触れられる機会をつくっています。
プロジェクトの出発点となったのは、新型コロナウイルス感染症の流行によって、人々が同じ空間に集まり、舞台を共有することが難しくなった時期でした。演者と観客が同じ場所で物語を共有するという演劇本来のあり方を模索する中で、地域に出向いて公演を行う取り組みが始まりました。
初期の活動の舞台となったのは、東京都大島町の伊豆大島です。その後、学校でのワークショップなどにも活動を広げ、2025年からは静岡県下田市でも公演を展開しています。
地域ごとに自然環境や文化、人々の暮らしは異なります。実際にその土地を訪れ、地域の人々と出会い、その場所にある物語や魅力を知ることは、舞台作品をつくるうえでも大切な経験となります。
伊豆大島での公演(2024年)
伊豆大島での公演(2024年)
下田市での公演(2026年)学生が現場で考え、工夫する実践的な学び
「シバイノタカラバコ」では、上演だけでなく、地域の学校などでのワークショップにも取り組んできました。
講演で多和田准教授が紹介した事例の一つが、伊豆大島の高校で実施したワークショップです。高校1年生から3年生まで約110人の生徒と、玉川大学の学生約40人が参加する大規模な取り組みでした。
多くの参加者が一緒に取り組むには、どのような進め方が適切なのか。学生たちは現場の条件や参加者の状況を踏まえ、実施方法を考えながら活動を組み立てました。
こうした経験は、舞台上で表現する力だけでなく、相手に応じて伝え方を工夫する力や、周囲と協力して課題に取り組む力を実践の中で学ぶ機会にもなります。
大学で身に付けた知識や技術を地域の現場で生かし、そこで得た気づきを次の表現や活動に反映する。その積み重ねが、プロジェクトの特徴です。
都立大島高校での全校生徒と大学生の集合写真(2024年)
都立大島高校でのワークショップの様子(2024年)
地域に伝わる物語から、新たな魅力を見つける
プロジェクトでは、地域の人々にその土地の魅力を改めて知ってもらうことも大切にしています。
多和田准教授は、地域に伝わる伝説や物語、地域にゆかりのある作品を演劇として表現する取り組みについて紹介しました。地域に関係する物語を舞台にすることで、普段は意識していなかった土地の特色や文化に目を向けるきっかけが生まれます。
下田市での活動では、同市にゆかりのある絵本作家・鈴木まもるさん、児童文学作家・竹下文子さん夫妻の作品「黒ねこサンゴロウ」シリーズにも取り組んでいます。
演劇は、既存の作品を舞台上で再現するだけではありません。作品を通じて地域の人々と対話し、その土地の魅力を共有する方法にもなります。
地域の文化や物語を知り、表現を通して新たな視点を得ることは、大学と地域の双方にとって、互いを理解する機会となります。
演劇の「魔法」で、観客と一緒に劇の空間をつくる
今回上演した『バナナン大将とおかしの勲章』は、宮沢賢治の戯曲『饑餓陣営』を原作とする作品です。子どもから大人まで楽しめるよう、物語の伝え方などに工夫を加えています。
講演では、作品にナレーターを取り入れた経緯も紹介されました。都立小学校での公演依頼を受けた際に、全学年の児童に楽しんでもらうため、物語の状況を分かりやすく伝える役割を設けたことが、現在の上演形式につながっています。
中野区立谷戸小学校での公演の様子(2023年2月)

多和田准教授が掲げる「シバイノタカラバコ」の約束の一つは、身近な場所で本物の舞台芸術を届けることです。もう一つは、演劇を通じて観客の想像力を引き出すことです。
舞台装置が整った劇場でなくても、人が集まる場所があれば、そこに劇の空間を生み出すことができます。目の前にないものを観客と演者が想像し、物語の世界を共有する。その過程にこそ、演劇ならではの魅力があります。
今回の相模原市での公演も、大学で培われた舞台芸術を地域に開き、人々が同じ作品を楽しむ機会となりました。




大学と地域が共に学び、新たなつながりを育む
「シバイノタカラバコ」の活動は、大学の教育・研究や芸術活動を地域社会と結びつける実践です。



学生にとっては、地域の人々や異なる環境に触れ、自分たちの表現を届ける相手を知る機会となります。地域にとっては、大学の専門性に触れるとともに、地域に根付く文化や物語を新たな視点から見つめ直す機会となります。
大学が一方的に成果を届けるのではなく、地域に出向き、そこで出会った人々や文化から学び、その経験を次の活動へとつなげていく。こうした双方向の関係が、地域連携を継続的な学びと共創へと発展させます。
玉川大学は今後も、舞台芸術をはじめとする教育・研究活動を地域社会と結びつけ、大学と地域が共に学び、交流する機会を大切にしていきます。
